併用住宅には住まいの新たなヒント満載。@古川達也

 
時々耳にしませんか、併用住宅。日ごろ併用住宅(兼用住宅)には、住まいの新たな魅力や可能性のヒントが沢山あると感じています。実際に、古川都市建築計画一級建築士事務所で設計しました実例も紹介しつつ、気になる一端をお話ししたいと思います。

 

併用住宅とは。

一住戸の中に、人が居住する部分とそうでない部分(住まい手が生計を営むために必要な業務を行う部分で、工房・倉庫・作業所、物販・飲食・理美容室などの店舗、医院・診療所など)を併せもつ住宅で、両者間が区画されず相互に行き来できる住まいを、併用住宅と言います。似ているものとしては、共同住宅で1階部分等に店舗やオフィスなどの業務施設が併設され、上部の住宅部分と完全に区画された建物(いわゆる下駄ばき住宅)がありますが、相互に区画されているか否かで違いがあり、併用住宅は居住者自身が行き来し業務を行っていることが特徴となります。併用住宅に対して居住専用である一般的な住宅を、専用住宅と呼ぶのは、この併用住宅(兼用住宅)と区別するためであるとも言えます。

 

併用住宅の特徴。

併用住宅は、空間として居住部分と業務部分とが一体であると同時に、居住者自身の居住と仕事が一体的に行われることになります。従って、家事と仕事との両立、家庭内の労働力支援、通勤就業時間にとらわれない業務時間の設定など可能なので、公私両面で近隣との結び付きが大変強くなる傾向があります。一方、従業員数や規模が大きくなり業務部分の事物が居住部分に影響し過ぎる場合は、日常生活上も業務活動上も、居住部分と業務部分を分離したい要求が高まるはずです。そのため併用住宅が成り立つには、前提としてある程度小規模であること、住まいに居住するご家族が地域との繋がりを大切にし、街との関係を深めるライフスタイル等が必須となります。

 

 


実例1:ウッドフェンスの家【併用住宅/3世帯住宅+理容室】。お客様の出入りが頻繁な店舗の「公開性」と、住まいの「プライバシー」を柔らかく両立させる佇まい。ウッドフェンスで「住宅と店舗の間合い」をとる工夫があります。ウッドフェンスは、店舗のイベントや新たなサービス案内など、店主自ら手づくりで手を加え「柔軟な演出」ができるため、全体として「街並み」に優しい表情となります。

 

 


実例2:小さな広場の家【併用住宅/住宅+歯科医院】。長年通う患者が最後まで信頼して訪ねられる「バリヤフリー対応」と「地域貢献」の工夫があります。ご家族が愛する草花がスロープまわりに植えられ「会話のきっかけ」となったり、近隣のお客様には医院利用でない時も「臨機応変」に広場(駐車スペース)を開放、急な来客の駐車に使って頂くなど、地域への貢献を当初からご家族は考えていました。医院の看板は小さな英字でささやか。予約制で「昔からのお客様とその繋がり」で来院される皆さまとの「丁寧な信頼関係」が、そのまま建築の特徴となります。

 

 


実例3:洗たく屋さんの家【併用住宅/2世帯住宅+クリーニング店】。屋内の「フレキシビリティ」と屋外の「コミュニケーション」を促す工夫があります。将来の「店舗業務の変化」や「従業員配置の変化」に対応するよう、店舗と隣り合う家族の寝室・個室との仕切り壁を増やしたり減らしたり出来るような構造。部屋が分けられるよう出入口を複数設け「フレキシブルな空間」としています。「道路との境」はあえてフェンスを設けず、店主ご家族の家庭菜園やDIY遊具など「地域の立寄り空間」にしています。お客様に菜園で採れた野菜を振舞うなど「地域コミュニケーションの場としての庭」が考えられています。

 

 


実例4:和定食屋さんの家【併用住宅/住宅+和定食店】。31会の展示相談会で出会いご相談頂き設計。実現しましたお客さまの併用住宅です。1階が店舗、2階が店主ご家族の住まう住宅ですが、2階も来客にかなり開放します。家庭のキッチン活用をテーマとしたお料理教室や常連客を招くプライベートな食事会が開けるよう、襖(可動間仕切り)で居場所を調節出来るなど、住宅と店舗の境を薄め来客を招くことが日常であるご家族のライフスタイルを反映しています。積雪のある地域として、店先の雪かき手間を軽減する雁木(軒下空間)を採用。「伝統的建築の魅力」を住まいの顔とすることで、地域の歴史にならい地域に愛される店舗の佇まいを目指しました。

 

 

なぜ併用住宅は注目されるのか。

地域の皆さまが集う拠点として、飲食店や工房アトリエ、外国語会話や音楽やダンス教室など、自宅の一部を利活用する独立開業、定年後の開業。ネット環境の進化など通勤を必要としない自宅勤務の新たな職種に応える住空間。様々な来訪者を受け入れる準備としてのバリヤフリー対応やユニバーサルデザイン(はじめから出来るだけ多くの方が利活用できるモノ・コトづくり)への配慮。建物として変わらない部分と事業として進化し変化する部分を見越した長寿命な建築づくり等々、併用住宅には建築への期待と可能性を広げる今日的な様々なヒントがあり、今後さらに注目されるように思います。

 

 

併用住宅へのまなざし。

併用住宅はとにかく面白い!そこに住まう家族と地域との繋がりが個性的で、かつ継続性があり、住まいとして永く楽しく建物を使いこなす工夫満載であると言えます。実は併用住宅でない一般的な専用住宅にも、併用住宅の手法は、多くの場面で応用可能であると考えています。衣食住だけでなく、住まいで何か自分たちだけの活動をやってみたい、こんなことが出来るだろうか?というお悩みがありましたら、様々な実例紹介や計画を進めるための法的整理などから、支援して参ります。是非ご相談下さい。 

古川都市建築計画一級建築士事務所 古川達也

 

 

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