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別荘を考える  @たなべけいいち

最近お手伝いすることが多いのが、別荘です。

別荘を建てる敷地は、環境や眺望が良い山の住まいや海が望める環境で、建てる目的も都心で暮らされている方が、週末こどもと遊ぶためであったり、都会とは違う環境に身おおきリフレッシュする目的であったり、好きなゴルフ場に近森に第2の拠点を構えたりと 目的はいろいろです。

別荘をお手伝いするときいつも考えるのは、普段の生活環境とは異なり、非日常的な体験ができる空間であったり、利便性は求めなかったり、敷地を取り巻く環境をプランに熟慮します。

現在工事中の横須賀の別荘では、クライアントがこの敷地を選んだポイントを生かし、一望できる相模湾から箱根/富士の景色を、ガレージを含む全室からいつでも体感できるようにしました。

そのため、この住まいでは大きなテーブルに組み込まれた小さなキッチンしかなく、浴室も眺望にひらけたシャワーとバスタブ、眺望に対して雛壇状に構成した家族寝室などで構成し、リビングスペースには同じ広さのテラスを同じ床材で計画して、眺望と人をつなぐ装置としました。

別荘の計画は、「住まい」つくりとは違う視点で考えられるためいつも新たな気分で望めます。もし、皆さんが「別荘」を検討されているならば、そこでの過ごし方に何を求めるか、よくイメージして建築家にリクエストされてください。きっと特別な別荘「セカンドハウス」が得られるでしょう。

横須賀の別荘は年末には竣工ですので、またご報告します。


浴室から直接外に出ることができる住まい @滝川淳

日常的に湯船に浸かる日本人にとって、ホッと一息つく入浴の時間を豊かなものにすると、生活のベーシックな部分がグレードアップします。「豊かさ」は人それぞれなので、方法もいろいろあるでしょう。木の香りを大事にして壁や浴槽を木製とする。ジャグジー付きの浴槽にする。石やタイルなど内装の仕上げにこだわる。洗面やトイレと一体となった広い浴室とし、リビングの延長で使えるようにするなど。

 

今日は私が多く手掛けている、浴室から直接外にできることができる住まいについてお話しします。浴室に窓を付けることは一般的ですが、脱衣場からの出入り口の他に外に出ることができる開口部を設けることはあまり一般的ではないでしょう。どんなメリットがあるのでしょうか。

 

1 窓が大きくなり、解放的な浴室になる

2 浴室の洗い場を住まいの動線として考えられる

3 外遊び後の洗い場として浴室が使える

4 換気がしやすい

 

小さなお子さんがいるご家庭の場合は、泥んこで帰ってきたらお風呂から家にあげましょう、とか、夏のビニルプールがやりやすいですよね、といったこともお話ししています。とはいえ何と言っても窓ガラスの面積が大きくなり、解放的な浴室になること。これが最大のメリットですです。事例写真をお見せすると、カラスの行水だったご主人が突然浴室の重要性を語り出して、こちらの提案が受け入れられることも多いですね。

 

ただし直接外に出れるようにするにはプラン上の工夫が大事です。外が見える=中が覗かれることにつながるので、敷地内の配置から考えなければいけません。中庭に面する、庭先に塀を設けるなどして、プライバシーの確保が重要です。

 

ユニットバスでも同じような大きさの開口部を設けることは可能ですが、浴槽が接していない側の壁に限定されています。写真にあるような、浴槽とサッシが重なる位置には取り付けることはできません。脱衣室からみて、正面側に大きな開口部を開けることができるので開放性が高いと言えるでしょう。脱衣室側からの抜け感を出すには在来工法の浴室の方が適しています。

またこの住まいでは、外部にデッキを設け物干し場としています。日常的に浴室から外に出ることが前提となっています。

 

この住まいも外部の出入り口から先を物干し場としています。浴室だけでなく、脱衣からの抜け感を出すために、強化ガラスの間仕切りと開き戸で仕切っています。脱衣室のタイルも同じものを使うことでより大きな空間に見せています。

楕円形の浴槽をつかった事例です。浴室の外に坪庭を設け、屋外の植栽を見ながら入浴ができます。坪庭は外からの視線を完全にシャットアウトされているので、ブラインドを閉めることなく過ごすことができます。

 

両開きのドアを使った事例です。浴槽は床置きタイプを希望され、内外共に床を墨モルタルで一体的に仕上げています。

1階に設けることも大前提なので、計画の初期段階で決めないと、上手く納まりません。

よく考えて実行してみてくださいね。

 


お父さんのあこがれ「書斎」を客間の片隅にこっそり仕込んだ家 @滝川淳

シンクタンクにお勤めのご主人は自宅に帰ってから本を読んだり、文章を書いたりする仕事を持ち帰ることが多く、書斎スペースを希望されました。しかし、住まい全体の希望をまとめると、書斎を部屋として確保できるスペース的な余裕がなく、専用の部屋は難しいことがわかりました。しかもリフォームが前提であったため、予算のあるなしにかかわらず、住まいを大きくすることもかないませんでした。

そこで3畳ほどの小さな和室の客間のさらにその一角に造り付けのテーブルを設け、書斎としました。本棚を多く設け、書斎としての作り込みもしっかりしています。客間を書斎としてある程度作り込みができた背景には、客間の利用方法が明確で限定的だったからです。

客間というと、突然の来客を迎える場であったり、実家のご両親が宿泊する、リビングの延長として横になれる畳の部屋であったりと多目的に使える部屋にしたい、という場合が多いのですが、ここではたまに来るご子息一人が1泊だけ泊まれる部屋でよい、というもの。来客はリビングダイニングで接客するので、宿泊のためには簡素であっても問題ないという要望でした。

であれば書斎と客間の機能を一緒にすることで、空間を兼ねることができると考えたのです。

 

ただし一つ悩みがありました。

奥様が和装になるときの着替え。横になってゴロンとする。といったことからも、客間はこの家の中でただ一つ、畳の間にしたい、というもの。畳の間に書斎というのが難しかったのです。施主がご高齢だったこともあり、床座での書斎スペースは膝や腰に悪く難しい。

そこで、椅子を用意する代わりに、本棚と同じ高さにしつらえたテーブルの下の床を掘りごたつ式に床を下げ、座椅子を置いてもらうことで畳の間と書斎を一体に作ることにしたのです。

写真の左手にある白いボリュームはトイレです。トイレの奥行きを少しだけ縮めて、その奥に書斎スペースを作りました。

また、テーブルに座った正面が階段室に向いていたので、縦長の吊り障子を設け、風が抜けるようにしました。吊り障子は階段室の踊り場側からも開け閉めができるようになっています。

右手には本棚がありますので、テーブルとして実際に使える幅は70センチそこそこです。それでも視線が抜け、風が通るこのスペースは、落ち着いて文章を考えるのに最適だと施主からも喜ばれています。こうしたミニマルなスペースをしっかり快適に過ごせるように作り込むと、
大変居心地のいい場所が増えますね。

小さいながらも、工夫を重ねていくことで良い空間が生まれます。
あきらめず、作りましょう。書斎。


メリハリ空間@清水禎士+清水梨保子

日本人の伝統的な世界観で「ハレ」と「ケ」という表現があります。

大雑把に言うと、「ハレ」は主に祭礼、儀礼といった非日常のもの、「ケ」は普段の日常生活のもの。

古来の日本家屋の中にはこの「ハレとケ」という概念が組み込まれており、人を迎える座敷などは「ハレ」の空間、寝食や水廻りを「ケ」の空間として、家全体の空間構成に深く関わっていました。

なんだか難しい事を述べましたが、家の中に、この「ハレとケ」が無ければどうなのか。おそらく、変化のとぼしいつまらない空間になるのではないでしょうか。

 

ただ、近年の住居内の生活スタイルでは座敷や応接間など少なくなってきていますし、人目につかない寝室や個室なども華やかに飾る人も多く、「ハレとケ」は曖昧になってきています。ともすると住宅内は変化の無い空間となってしまいます。

 

私たちは住宅を計画するときに「ハレとケ」の概念を意識しつつも「ハレとケ」の二面性に着目し、「メリハリ」空間を考えることにしています。

「メリハリ」は変化に富んだ空間を演出するだけでなく、コスト面にも、設備スペースなどにもこの「メリハリ」が役立ちます。

リビングなどは出来るだけ天井の高い気持ちのよい空間を作りつつ、仕上げ材にもこだわります。このように住宅の顔となる空間にすることで家族も自然に集まり、また、来客時のおもてなしの場にもなり、ちょっとした「ハレ」の場にもなります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハレ」の空間

天井高さ4m超のリビング。床はチークの無垢材、天井はリシン吹付。
ちょっと贅沢に仕上げました。

 

一方で、倉庫や洗面室などは機能性を意識したローコストの仕上げ材を選び、天井も合理的な高さにとどめ、空きができた天井内に収納や設備スペースなどを設ける事も可能となります。この二面性が「メリハリ」となり豊かな空間が生まれます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ケ」の空間

天井高さは2.2m。床は長尺塩ビシートで安価に且つメンテナンス容易に。壁は量産品の丈夫なものを使用。
合理的な空間です。

 


実例から よろいばりの家 ~なぜ高い吹抜~ @菰田真志+菰田晶

今週のバトログを担当させてもらっています菰田建築設計事務所の菰田真志(こもだまさし)です。今回で二回目になります。

われわれが設計した建物がなぜこうなっているのか?という話の二回目として取り上げるのは「よろいばりの家」です。

この家の特徴は2つ。
1つ目は スキップフロア ということ。
2つ目は 二階の大きな吹抜 です。

1つ目の特徴のスキップフロアというのは、ご存知の方も多いと思いますが、例えば2階建の家は普通は床の高さが2種類でそれを階段でつなぎますが、スキップフロアの場合には2種類以上の床の高さが家の中にあり、それを繋ぐ形になります。1階-1.5階-2階という感じでつながるイメージでしょうか。(もちろんもっと多くの床のレベルがあってもいいのですが。)
この家では1-1.5-2-2.5-小屋裏という構成になっています。

では一階はと言うと、駐車場スペースです。

前の道から見る
駐車場部分は法的には一階になります。敷地の段差を生かしてスキップフロアにしています。玄関が1.5階レベルにありますが、そのぶんアプローチをかなり緩やかな階段にしています。玄関を引き込むことでプライバシーも保てます。

この敷地はもともと前面道路から1.2m程度敷地が上がっていたので、敷地の平らな部分に家を建てると、玄関が道路から高い位置に来ます。低い位置に建てようとすると道路面にあわせて掘らないといけなくなるので、緩やかな階段で玄関までアプローチして、家に入るという構成にしました。駐車場部分だけ少し掘って平らな部分を確保し跳ね出した家の下に車を置くスペースを取っています。

アプローチを上がって入る玄関は、法的には1.5階レベルです。玄関を入って1.5階レベルには個室が、玄関横の階段をのぼると折返しの階段の踊り場が2階レベルです。ここは水回りです。

玄関を見る
玄関レベルは1.5階(もともとの敷地レベル)。このレベルには個室中心です。玄関土間の横に大きな階段一段目を設けていますが、そこが土間からの高さが靴脱のための椅子の高さになっています。折返し階段の踊り場部分が法的には2階レベルで、トイレ・洗面・浴室があります。

水回り
シンプルな水廻り。白と濃い茶色のコントラストで構成しています。窓を高いところにつけることで水回りのプライバシーと天井を照らす採光の役目を果たしています。

折り返して2.5階レベルが高い吹き抜けになっているLDKです。LDKの一部分に小屋裏収納があります。

階段からの見返し
2階レベルから見返すと玄関とリビングの中間に水回りがあることがわかります。玄関奥に見えるのは玄関収納です。

北側の窓
この窓だけが目線についています。現状で北側が隣地の大きな庭に面して引きがあり見られることがないので目線に窓をつけました。見えている階段はロフトへ上がる階段です。

ダイニングからキッチン方向を見る
一体になった吹抜の空間。左手の階段を登った先にはバルコニーがあります。正面と左手上方の窓は後術します。

 

この家がスキップフロアになっている理由は、もともとの地盤レベルがそうなっていたからそれを利用したということです。ちょっと掘り込んで駐車場にしていますが、ほぼ地形を利用したという形になっています。もっと彫り込むことも考えましたが、結局半地下にすることで掘削や防水などのお金がかかるという事もあり、スキップフロアで対応することにしました。(※スキップフロアもただ建てるのより構造が複雑になるので金額増の方向になります。どちらが安いかは判断が難しいところです。)

2つ目は二階の大きな吹抜に関しては、南側の隣地からの影響です。
南側の隣地には二世帯住宅が建っています。敷地の法規的には低層建物であれば北側に斜線制限がかからないので、近接した隣家の影響をうけます。しかも敷地が東西に長い敷地なので、北側に家を寄せて南側に空間を作ることが出来ませんでした。

正面から見る
東西に長い敷地で間口が狭いので、建物も長くなります。いっぱいに北に寄せても南に大きな空間はとりにくい敷地です。南側の隣家の高さより上から光を入れことを考えました。

そこで、LDKに大きな吹き抜けを作り隣家の上から光を取ろうと「背伸び」した結果がこの空間を生みました。

ロフトから見下ろす
この家で一番高いロフトから見下ろしても正面の窓から見えるのは道を挟んだ家の屋根です。LDKの床レベルでは大きな開口からは空しか見えません。周囲からの視線を気にしないで過ごせます。

細長いけれど高い天井高がきもちよくつながり、光を取り入れるための大きな窓が空いていますが、その窓は周囲からの視線は完全に切っています。
周囲からはカーテンなどが無くても全く中が見られないように気をつけた窓配置が家の中の大空間の開放感を増すことに一役かっています。

結局のところ2つの特徴ともに、敷地や周辺の環境から来ています。
第一回目の「太田窪の家」でも同じように敷地の状況が形を決める大きな理由になっています。
建主さんの希望を優先しているなかで、室内環境を大切にしたいという気持ちが、その家の特徴を敷地環境を見据えたものにしたのかもしれません。

(有)菰田建築設計事務所
HP : http://www.archi-komo.co.jp


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