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スロープの家「土地探しからのサポート」@前田敦

スロープの家」はその特徴的な空間構成から、一般的な住宅よりも広めの土地が必要になります。

建築基準法では「階段に変わる斜路」の勾配を1/8以下にするように規定されています。つまり、1mの登るために8mの距離を必要とすることになり、一般的な住宅で考えますと約22〜24m程度の水平距離が必要となります。

土地探しの目安としては180m2は欲しいところです。

土地探しの手順としては、犬種や飼育方法をヒアリングして大まかな空間構成を考えます。このプロセスは今まで培ってきたノウハウが活かされるところです。

空間構成とそれをつなぐスロープを主動線とした動線のデザインをコンセプトモデルとして提案し、施主様が納得いただいた上で、それが成立する土地を探すという特異な方法をとります。


施主様が永住する予定の土地を探すので、概ねの希望エリア、交通条件、予算等を打ち合わせをして、提携している大手不動産会社に情報提供を依頼します。

数件の候補地がリストアップされると法規制を満足するラフプランを計画してみて、施主様に土地購入候補として提案します。

都市近郊では土地はとても高価な買い物なので、特に注意の必要なプロセスでもあります。行政との事前相談等を行った上で、その土地のメリット・デメリットを整理し、施主様の土地購入意志を確認します。
その候補地でのデメリット等を勘案しながら、不動産会社に値引交渉を含めて土地購入に向けて諸手続きを進めてもらいます。
建築家ならではの視点で不動産を観るので、家づくりに必要なポテンシャルを持った土地だあるかどうかを客観的に判断できるのです。

不動産会社は土地の売買が仕事ですが、建築家はそこで家を設計し、施主様の生活をサポートするのが仕事ですから、建築家と一緒の土地探しこそが施主様にとって有用なことであるかがご理解いただけたと思います。

スロープの家は土地探しからサポートする手法で3軒ほど実現しましたが、不動産会社と密な連携をとっているので、いずれも1ヶ月半いないで土地探しを完了しています。

土地探しから家づくりをサポートした模型写真の実例がご覧いただけます。
実録!スロープの家・卍(愛犬・愛猫家の家)

WEB紹介記事
・スロープの家・卍/Houzzツアー
・スロープの家・卍/fomifyドイツ
・スロープの家・SPAIRAL COURT/RENONAVI
・スロープの家・SPAIRAL COURT/fomify日本
・愛犬・愛猫と暮らす家/建築家紹介センター

BLOG:愛犬・愛猫と快適に暮らす/建築家:前田敦

 

 

 

 


スロープの家(愛犬家住宅)誕生秘話@前田敦

■建築家として生きるために特化した能力を持ちたい!

建築家という職能が少しずつですが、世の中に認知されつつあります。

大きなビルや地域開発を手がける建築家もいれば、住宅を手がける建築家もいます。そして我が国では後者である住宅を中心に設計活動を行っている建築家が最も多いようです。
そんな状況下でちっぽけな存在ではあるけれど、何かに特化した建築家として情報発信していきたいと考え始めました。つまり、施主様に対しても選択してもらいやすい存在になることを意識し始めたわけです。

そこで着目したのがペット共生(共棲)住宅です。
子供の頃の愛読書が動物図鑑、今でも息抜きに出かけるのが上野動物園というほどの動物好きの私には向いているのではないかと考えたわけです。
しかし、15年前には「ペットと暮らす家」の設計のための資料も参考書もありませんでしたから、階段の模型を作り、そこをワンちゃんに登ってもらい寸法を導き出したり、獣医さんやブリーダーさんからお話を伺ったりしながら試行錯誤を繰り返しておりました。

■誌上コンペに応募

そんな時に建築家のことを記事にしているライターさんから、雑誌の企画で「ミニチュアダックスフントと暮らす家」という誌上コンペに応募してみないかとオファーをいただきました。
誌上コンペですから実現を前提としない設計提案になるので、自分なりの理想の案を発表しようと考えました。

ミニチュアダックスフントは一般的な住宅の階段では、ヘルニアを発症し、歩けなくなったりすることがあるので、スロープで家中を自由に回遊できる立体的なドッグランで家を構成するイメージを具現化した案が「スロープの家」です。

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■スロープの家は書院造を立体的に展開

中庭を挟んだスキップフロアの二つのブロックをスロープで連絡し、階段のない2階建ての空間構成を持っています。
こうすることで、ヘルニアや転落を気にすることなく愛犬たちが自由に昇降できる快適な空間が創出できます。

家の中心には中庭が配置されているので、外部への飛び出しを心配することのない屋外環境を提供することができ、さらには無駄吠えを防ぐ効果も期待できます。

審査委員からは「部屋の周囲に廊下を配置する日本の伝統的である書院造を立体的に展開した興味深い構成」とコメントをいただきました。

なるほど書院造りとは・・・自分では気づかなかった着眼点に感謝です。

この書籍が出版されたあと、実現しないだろうと思っていた「スロープの家」を建ててください!と言うオファーが舞い込みました。

つづく

WEB紹介記事
・スロープの家・卍/Houzzツアー
・スロープの家・卍/fomifyドイツ
・スロープの家・SPAIRAL COURT/RENONAVI
・スロープの家・SPAIRAL COURT/fomify日本
・愛犬・愛猫と暮らす家/建築家紹介センター

BLOG:愛犬・愛猫と快適に暮らす/建築家:前田敦

 


マンションの水廻りリフォームで採用したホーロー浴槽 @古川達也

静かな高台にあり、眺望に恵まれた横浜のマンションリフォームでした。

リビングの窓からは、程よい緑景と横浜らしい景色が存分に楽しめる住環境です。駅前の利便や昇り降りの少ない平地に移り住む選択肢もあったが、かけがえのない住まいとして、どうしても手放せない。しかし一方で施主ご主人は、風呂・洗面・トイレ水廻りに長年残念な感覚を抱えておられました。マンションゆえに、どの世帯も標準で用意されたユニットバス・洗面・トイレが、豊かなリビングから移動すると、常に暗く窮屈で味気なく感じてしまうという問題です。

水廻りが開放的でワクワクするような空間になったら嬉しい。水廻り空間の魅力を高めることで、もっと我が家が好きになれる。そういうとてもシンプルで明確なテーマをもってリフォーム計画がスタートしました。ホーロー浴槽は、その目指すところに最も相応しいアイテムとして選択。既存のユニットバスを撤去し、ホーロー浴槽を採用した際に考えたことや注意点、実現して良かったことなど、少しご紹介します。


リビングの窓からは、程よい緑景と横浜らしい景色が存分に楽しめる住環境。

 

ホーロー浴槽とは。
1500℃で溶かした金属(鉄)を鋳型に流し込み作られる鋳物の表面にガラス質の粉(釉薬)を高温で焼き付けたものが、「鋳物ホーロー」です。 鋳物の強靱さと、ホーローのなめらかさ、輝きがひとつになった浴槽が、ホーロー浴槽です。(大和重工ホームページ解説参照)

ホーロー浴槽は、なぜリゾートホテルで採用されるのか。
居室と連続する開放的な水廻りとして、各々仕切られていた壁を撤去し、風呂・洗面・トイレを一つの空間とした上で、さらに居室・廊下との境を大きな引戸で仕切り、開け放つことが出来るように考えました。このとき最も課題となったことの一つが、浴槽そのものの清潔感でした。いつまでも湿り気が残る、汚れが落ちにくい、あるいは汚れて見える佇まいであっては、折角の解放感も満喫できないものとなってしまうからです。ホーロー浴槽の艶やかな清潔感や、簡単に汚れを拭き取れるメンテナンス性の高さは、リゾートホテル等の浴室における採用が大変多いことにも関係していると分かりました。

ホーロー浴槽の清潔感。
まずホーロー素材そのものがとても固い。表面を10円玉でこすると10円玉が削れるほどであると言われています。とても固いので傷がつきにくい。傷つかないので汚れない。また、滑らかでつるつるしているから、水あかや細菌が付着しにくい。例えば油性ペンでいたずら描きしても水拭きで簡単に落とせるほどです。従って上品な光沢が失われず、いつまでも清潔なイメージを保つことが出来るはずです。居室と連続する開放的な水廻りを実現させる構想において、ホーロー浴槽のもつ清潔感が、とても頼りになりました。

とにかくホーロー浴槽に触れてみる。
実物に触れることで、その違いが分かるはず。施主ご主人と共に、採用することになったホーロー浴槽を製作・販売する大和重工オフィス・ショールームに伺い、特徴を詳しくご説明頂きながら実物に直接触れる機会をつくりました。これは大変おススメです。設計者である私と施主ご主人は、交代で浴槽内そのものにも入ってみました。この時の感触で、体験したことのない気持ち良い触り心地と、身体に合う浴槽のプロポーションとして確かなものを感じ、最終的に施主ご主人はホーロー浴槽の採用を決断されました。



大和重工オフィス・ショールームにて、担当:河部さんにご案内頂きました。

 

ホーロー浴槽採用のまとめ。

◆ホーロー浴槽のメリット
・硬い。(傷が付きにくい、10円玉でこすると10円玉が削れる)
・汚れにくい。(水あか・細菌等付着しにくい。油性ペンも水拭きで簡単に落ちる)
・滑らかなさわり心地。(FRP製の5倍、アクリル製の1.5倍)
・鋳鉄の熱伝導で、お湯が入る部分だけでなく本体全体が温まる。(例えば首が温かい)
・環境に優しい。基材はリサイクルに優れる「鉄」、ホーローは「珪石(ガラス)」で天然素材
ホーロー浴槽本体の約90%はリサイクル可能とのこと。

◆ホーロー浴槽のデメリット
・重い?
対応→ 現場施工時、早め入荷で施工途中のまわりを傷めないよう配慮して搬入して頂いた。
・金額が高い?
考慮→ 同形状・大きさの浴槽の中では高めとされるが、余りある品質を考慮し選定しました。
・鉄なので錆びる?
認識→ ホーロー表面には出ないが裏面は錆びる。鋳物の特徴として錆は進行しにくいとのこと。
・熱伸びがある?
認識→ 20℃から50℃にした時の変化はホーロー:0.65㎜に対し、人造大理石:1.34㎜、
FRP:1.44㎜。鋳物は変化が少ない方であると聞いています。
浴槽本体周りは、動きを考慮した目地材としています。

 


before 廊下に面する扉を開けると水廻り。


after 引戸を開けると居室・廊下と繋がる水廻りへ。

 


before 正面:ユニットバス、左:洗面器、右:トイレ


after リフォーム後の水廻り。居室に繋がる開放的な水廻りになりました。別々に仕切られた風呂・洗面・トイレの壁をなくし、ワンルームの開放的な構成とした。重要視された上品で清潔感のある浴槽の選択として、採用したホーロー浴槽(大和重工)が奥に美しく佇む風情です。

 


FRP防水が施された浴室部分(中山建設 撮影)
最後に大事な点について少しだけお話し。マンション・リフォームでは、その管理組合の管理する建物に関するマンション規約の確認が必須です。防音対策や設備更新などルールを確認してはじめて着手することが可能となります。一方、マンションにおいて、そもそもなぜユニットバスを設けるケースが多いのか。それは防水対策の問題が大きいと考えられます。ユニットバス本体そのものが桶のようにくるまれるつくりなので、水漏れのリスクが小さいのです。今回のリフォームではホーロー浴槽及び周りのタイル仕上げの下地として、浴室にあたる部分全ての床壁に切れ目なくFRP(強化プラスチック)防水を施しています。仕上げ表面から水が浸入したとしても、最も水下にあたる浴槽の下部一点に水が集まり、排出されるよう工夫しています。本件を実現するためのディテールやノウハウなど、気になること、知りたいことなどございましたら、是非気軽に古川都市建築計画一級建築士事務所までお問合せ下さい。

古川達也
古川都市建築計画一級建築士事務所

 

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リフォームのお手伝い@たなべけいいち

最近は新しく計画するお手伝いとは別に、古い木造建物のリフォーム(改修)のお手伝いもしています。

私たちのリフォーム(改修)は、プランまで変えてしまうケースが多く、本来の建物が持つ素性を生かしながら、新しい空間へと生まれ変わらせることが多くあります。

宇都宮で築45年ほど経った平家の書院作りの家屋を手がけた時は、クライアントの「明るい住まいにできないか?」というテーマに取り組み、「減築」という方法で平家の中央に「光庭」を設け、本来の木造空間を生かしながらLDKのスペースを生み出しました。

 

 

 

 

 

ただ、最近、鎌倉で手がけているリフォーム(改修)は、築約75年が過ぎた「庵」を、保存の目的の為に当時の風情を忠実に復元改修しています。

それは、保存に値する風情を持ち、当時の宮大工の感性に目をみはる物を持っていたからに他なりません。

この、山頂に建つ小さな「庵」は、配置からして素晴らし眺望を十分に活かせる計画で、小さな2階の和室からは、西の窓越しに富士を望み、南の縁側からは大島が見渡せ、東の窓からは、自然林を背景としてこれからは満開の桜が3本見渡せる、まさに完璧な「環境建築」である。

 

このような建物を目にすると、気持ちは時を遡り、当時これを手がけた棟梁の気持ちが伝わってくる。

この建物の改修を今手がけている棟梁も、山形から来てもらい携わっているが、私と同じ気持ちを持たれているそうだ。

この春には改修も終わり、きっと見事な桜を見ることができるでしょう。


輸入品がヤバい。@清水禎士+清水梨保子

現在、建設中の住宅ではベルギーのデザイナー、Axel Vervoordtがデザイン担当しており、彼が指定、制作した輸入品を数多く使用しています。

その中のひとつはフローリングです。

フローリングが兎に角大きい。幅はさることながら長さも。日本の規格では長さ1.8m程度で幅が120㎜が標準で長くても3mくらい、幅も30㎝となれば超幅広と大騒ぎです。ところが今回輸入されたのは幅が狭いもので45㎝、広いもので80㎝ぐらい。ぐらいというのは同じ幅のものはひとつも無く、しかも、まっすぐではありません。長さに至っては部屋の端から端まで1本ものなので、最長で6m程度になります。

本当にそんなものが存在するのかと疑心暗鬼でしたが、設計中にベルギーまで見学に行ったら確かに存在しました。指定されたホテルに宿泊したら、そこのロビーでは幅は45㎝程度ではあったが長さは普通じゃ考えられないくらいの長さでした。

設計当初は日本でもそのくらいの大きさ、長さのフローリングを探しておいて欲しいと言われ、方々のフローリングメーカーに問い合わせをしたら相手にもされず、結局は輸入する事となりました。

設計は良いとして実際の現場への搬入はどうしようか。今回担当した工務店も初めてのことなので、現場までの道路状況、図面上での搬入経路のシュミレーションをしたところ、道路はなんとかなるとしても建物内の指定の場所までにはどう考えても入りきらないということが解りました。そうなると、これらの材料を室内に搬入する為の計画も必要となります。この住宅は鉄筋コンクリート造なので、床や壁に搬入専用の穴(ダメ穴という)を計画し、躯体が立ち上がったら一番始めにそれら大物を建物の中へ入れ、その後にあけた穴を塞ぐという方法で対応しました。

現物が現場に届いたら、モノが大きいだけに現場の職人さん総出で1枚ずつ現場に運び込みます。最悪、切る事も覚悟していたがなんとか予定通りに搬入が出来たので一安心しましたが、コンクリートむき出しの状態での搬入のため、内装工事が始まるまで現場に保管しておかなくはならず、それにも気を使いました。

   

   

実際敷いてみたところ、室内にいるというよりも屋外にいる感じです。とは言え、それらのフローリングを敷いた部屋も比較的広いため違和感を感じる事はありませんが、1枚が大きいため床のラインがその分少なく、柔らかい雰囲気ながら静謐な空間となっています。

日本の狭い土地柄、ましてや建設地が渋谷区神宮前という密集したところでの建物であり、私たちが通常考えるスケール感を飛び超えたベルギーのデザイナーのスケール感覚が、結果的にこれまで経験した事のない空間を作り出しています。

他にも輸入品が数多くあるので、それらの紹介は次の機会にでも。

清水禎士+清水梨保子
トレス建築事務所

清水禎士+清水梨保子  ばとろぐ記事