「二世帯住宅」 @清水 禎士

二世帯住宅と一言で言っても、いろんなパターンがあります。これまで私たちが設計した二世帯住宅は

  1. 玄関ひとつで二世帯協同で暮らす(1件)
  2. 玄関ふたつで隣り合わせに配置(3件)
  3. 玄関ふたつで裏側と表側に配置し、完全分離(1件)
  4. 敷地を分けて隣り合わせで親子1件ずつ建てる(1件)

と言った具合に分けられます。
これらは初めから施主がこうしようとはじめから決めていたのではなく、もちろん、私たちが勝手に決めた訳ではなく、私たちと施主の親世帯、子世帯それぞれと話し合う事でお互いの関係性が見えてきて、それを元に導きだした結果です。親世帯と子世帯の微妙な距離感が見えて来るのではないでしょうか。
親族とは言え二世帯となると、親世帯が主人の両親だと奥様にとって彼らは他人であり、その逆もしかり。さらにそれぞれの夫婦間の力関係が混じり合って、二世帯住宅の建物内のプラン構成、設備内容などに影響してきます。

非常に仲の良い両親、子供夫婦の場合は玄関ひとつの二世帯協同タイプに属します。大きめのキッチン、ゆとりのあるリビング、広めの浴室を中心として共同で使用しますが、ここまではあくまでパブリックスペース。それに対し両親、子供夫婦の寝室はプライベートスペースになりますので、各々のアイデンティティをより強く出すことが重要になります。ここのデザインは設計者が押し付けるのではなく、出来る限りそれぞれの趣味に合わせてデザインすることで、よりプライベート感を演出します。二世帯で仲が良いと言っても、お互いの息抜きスペースは必要です。それに加えて、孫のことも加味すると子供夫婦+孫の為の小さなセカンドリビングがあるとより良いです。さらに重要なポイントとして小さくても良いので子供夫婦の為の洗面浴室の存在ですが。浴室はシャワーだけでも構いません。無駄だと感じるかもしれないですが、他の予算を削ってでも採用する事をオススメします。ここが玄関ひとつタイプの二世帯住宅がうまく行くポイントになると思っています。

玄関ふたつの場合はそれら距離が両親世帯、子供世帯の距離感とも比例していると言えます。玄関が隣り合わせだとしても、本質的な距離感は内部のプラン構成に現れてきます。頻繁に親子でそれぞれの世帯を行き来するならリビングに近いところにお互いをつなぐ扉を配置し、いざという時のみで良いという関係ならば洗面室や寝室などに近いところからさりげなくつながるようにするとか。中には扉という物理的なつながりもさることながら、窓の配置などによって視線でお互いの様子が推し量れるようにすることもあります。それぞれの生活スペースをしっかりと確保しつつ、どこかでつながっているという感覚が非常に大切になります。ツカズハナレズの関係ですね。ただ、ここで注意しておきたいのは二世帯に甘えないという事です。どういう事かというと、部屋がつながっているから片方のキッチンは小さく、片方の浴室は狭くするなど、全体のコストを下げることを目的にこのような事をしてしまうと二世帯住宅のバランスが崩れてしまいます。二世帯はひとつの建築物の中ではありますが、アイデンティティは別である事を決して忘れてはいけません。

二世帯住宅は子供夫婦に子供がいると3世代に渡るので、生活スタイルの違いによりプラン構成が非常に複雑となります。その複雑なパズルが解けたとき、非常に面白みのある二世帯住宅が出来上がります。
玄関が裏と表で離れていたり、親子でそれぞれ個別の家を建てた場合でも何らかの関係性は生まれています。味気ない集合住宅とはやっぱり違います。

近しい親族同士がお互いを尊重し、関係し合い、助け合いながら暮らせる建築こそ二世帯住宅の醍醐味ではないでしょうか。