「東北のはなし」@松下慎太郎

以前から『故郷で仕事がしたい(※僕は福島県出身)。』と考えておりましたが、最近ちらほら、そのような機会を頂けるようになりました。

一昨年、福島県郡山市で友人の家を設計しました。彼らは東日本大震災で住む家を失い、県の借り上げ住宅でしばらく暮らしていました。震災から3年が経ち、借り上げ住宅の期限も迫るタイミングで相談があり、一緒に土地探しから始めました。ですが、なかなか見つかりません。津波の被害に遭った、あるいは原発の近くに住んでいた人たちが泣く泣く内陸へと移り住む、という流れが起こり、需要が一気に増えたからです。土地の価格も高騰しました。(避難の人たちが補助を受けるのは当然なのですが、それに乗じて土地が高くなるのは、普通の事と理解しつつも、なんともやるせない気分でした。)ここで難しいのは、前述の避難の人たちと違い、友人は被災者であるものの、津波で流されたわけでもなく、原発の影響を受けたわけでもないので、十分な補助を受けられず、震災前だったら買えたであろう土地が買えなくなってしまった事です。結果的には、当初の希望地からはだいぶ遠い分譲地を選ぶ事になりました。そこが自然環境的には抜群に良くて、かえって良い家、良い暮らしを得られたのはうれしい誤算でしたが…

東京で活動している僕もそうで、被災者としてひとくくりにしてしまいがちですが、実際には人それぞれ全く異なる境遇にあります。そんな事実をまざまざと感じさせられたプロジェクトでした。

せっかく良い家が出来たので、昨年末、東北住宅大賞なるものに応募し、はるばる青森までプレゼンに行ってきました。そこには当然、地元で頑張っている建築家の皆様がおり、応募作品のどれもが、”東北らしさ”をもった、非常に魅力的なものでした。その中には、仮設住宅の応募なんかもあり、「仮設住宅をそういう対象にするな!」と仰る方もいるかも知れませんが、仮設住宅でも、住み心地の良い家を提供するという考えはとても重要な事だと感じました。それ以外にも、震災の話から離れますが、素材の使い方なんかも上手で、彼らは素材をよく知っています。身近にあるからなのでしょうか。それをうまく組み合わせて繊細な空間を作る人がいたり、逆に革新的な発想で建築する人がいたり。プレゼン後の懇親会での異様な盛り上がりも、東京でのものとは全く異なり、異様な一体感がありました。これは東北人の特徴なのでしょうか?

東京に建つ家は、非常に上品です。洗練されています。ただ、建築家の設計による家も、ハウスメーカーやビルダーの家も、だんだん均質になってきており、建築家としては一種の危機感を抱いています。そんな中で、目立たなくともしっかりと地域に根ざし、しっかりとしたコンセプトを持ち、そのコンセプトを建て主ともしっかりと共有し、個性的で魅力的で住環境も良く作り込まれた家を作っている東北の皆様の姿勢に触れ、東京でも、そこにあるべくして建つ建築をやはり作らなければならないと、あらためて思ったのでした。