「都市住宅における屋上テラスの可能性と注意点」@石井正博+近藤民子

普段は見慣れた街並みの景色も、屋根の上に登って見るとガラリと変わります。
空が大きく広がり、家並みがどこまでも続いて、遠くの山並みや高層ビルが思いのほかよく見えるなど、地上では慣れ親しんだものでも、屋根の上から見る新鮮な表情には驚かされることもあります。

四季の変化に富む日本の住まいでは、長い間「家」と「庭」を一体の空間と考えて内と外の関係を強め、自然の豊かさを日々の生活に取り入れてきました。
「家」と「庭」の境界にあった「縁側」は、庭を眺めつつご近所の方との会話を楽しんだり、夏にはスイカを食べながら涼んだり、中秋の名月を眺めたりと、生活に潤いをあたえてくれる場所でもありました。

しかし、都市部の住宅ではますます敷地の広さが限られてきて、地上において「庭」や「縁側」のような自然と関われる場所を設けることが難しくなっているのが現実です。そこで地上では味わえない開放感があり、生活空間も拡張できて、さらに生活に潤いをあたえてくれる場所として屋上スペースの価値が高まっています。

屋上テラスの使い方としてよくあるのは、テーブルを出して外での食事を楽しんだり、お風呂上りにビールを飲みながら涼んだり、親しい人たちと一緒に花火を観たりなどですが、さらに、野菜や緑を育てたり、プールを出してお子さんに水浴びをさせたり、テントを張ってキャンプをしたり、暗闇で天体ショーを楽しんだり、一人になって読書に集中したり、ペットを遊ばせたりなど、まだまだ様々な使い方が考えられます。

一方で、屋上テラスは地上から離れた高い場所にあり、強い日差しや風雨に直接さらされる環境的には過酷な場所でもあります。
屋上テラスを作る場合の注意点としては次の3つが主に考えられます。

<プライバシー確保や日除けの工夫>

屋上といえども、近隣に高いビルがあれば見下ろされます。隣家の屋上テラスに出た人と目があってしまうようでは、価値も半減してしまいます。完成してから後悔しないよう、気になる視線を遮ぎる目隠し壁や庇を設けるなど、設計時から考えておくことが必要です。また、日除けになり雨や視線も防いでくれ、必要に応じて出したり閉じたりできできるオーニングをつけるという方法も有効です。

<安全確保のための手すりや腰壁の高さ>

2階建てや3階建ての上になる屋上テラスでは、落下事故を防ぐための工夫も欠かせません。手すりや腰壁の高さは、床からの高さだけでなく、足がかりからの高さも考慮して決めることが必要です。格子状の手すりにする場合は、格子の間隔や強度も十分に検討しなければいけません。

<防水と雨水排水計画>

屋上テラスを設けるには、屋根を平らな形「陸屋根(ろくやね)」にしなければいけないため、防水工事と雨水排水の計画は、二重三重の備えをもって慎重に行なわなければいけません。水が建物内に浸入しないよう防水工事をきちんと施工することは当然ですが、水が溜まることなくスムーズに流れ、排水口から縦樋へと確実に排水される道を作ります。排水口にはゴミがつまらない処置をし、万が一詰まっても屋内に浸入しないよう十分な余裕を見てサッシ下の防水の立ち上り高さを(瑕疵保険の基準はサッシ下端で12センチ以上)を決めます。また、デッキを敷く場合でも排水口まわりは点検できるようにして、オーバーフロー管も設置します。

映画やテレビドラマでは、主人公が屋上で一人になって思索したり、ラストの重要なシーンで屋上が使われたりしますが、屋上には、何か不思議な場所の力が宿っているのかもしれません。
庭やバルコニーとは違い、宇宙へと繋がるような屋上テラスは、住み手の生活のイメージを刺激し、都市住宅に限らず、日本の住宅に新しいライフスタイルを加え、住まいを豊かにしてくれる可能性を秘めているのではないでしょうか。