「私が考える建築家の仕事とは」@大川宗治

先日ある方から、自分が小さい頃育った家を住みやすく改修したいという依頼がありました。そのお宅は、昭和40年頃建てられたごく普通の木造2階建て住宅。約50坪土地に田の字型のプランの2階建てで、縁側と小さな庭があるといった、ちょうどマンガの「サザエさん」に出てくるような家でした。実際に建物を見せていただくと、当時建て売住宅として建てられたものとは伺いましたが、結構構造的にはしっかりとしているので、外部は手を入れずに、耐震補強と内部の改修をするということで設計をスタートしました。
私がこのお宅を見ての印象は、専門家の目からは決して目を引くような類の建物というわけではないのだけれど、必要十分なスペースと、風や光などの自然と融合することによって心地よさを生んでいるということ。そして、全ての素材が本物の木で丁寧に作られているということです。ですから、この基本コンセプトと素材を生かして、現代の生活や家族構成にフィットさせてあげれば、十分豊かで暮らしやすい空間ができるだろうということをお伝えしました。デザインというとよく、見た目のきれいさや奇抜さがイメージされやすいですが、こういった基本的なコンセプトがしっかりしていることが大切なことだとわたしは考えています。
色や形はそのコンセプトを生かすための一要素。そして、そこにお客様の要望や、その時代の生活スタイル、将来計画などが盛り込まれていって、そのコンセプトを無意識のうちに感じ取れるように形を構成していくのが私の考える建築のデザイン方法です。
建て主にとって家とはどんな役割をもつのでしょうか?
以前別のコラムにも書いた私の持論ですが、人にとって家は音楽家にとっての楽器と似ています。どんなに演奏家が優れていても、音程の狂った楽器では良い演奏はできません。
また、音程がしっかりしていても音に一本筋の通った魅力がなければ、人に感動を呼ぶことはできません。人にとっての家も、一本筋の通ったコンセプトで、無意識のうちにそれを感じながら生活し、その結果得られる心の豊かさがさらに人を成長させるものであると思います。私は、そうであってほしいと願いながら設計をしています。
今回ご依頼をいただいた建て主さんを拝察して、一本筋の通ったこの家の持つ本質を理解されて、そこに愛着を感じておられるのが見て取れたので、先ほど述べたこの家が持つ元々の基本的なコンセプトは大事にしたまま、より今の生活に必要なスペースを確保し、実際のスペースより大きく見せるような方向でデザインしています。きっと気に入っていただけるだろうと思います。
これから家を建てようあるいは改修しようと思われている方は、どうぞ難しく考えずにざっくばらんに気持ちやイメージを伝えていただけたら良いと思います。その中から最適な物をくみ取って形にしていくのが私たち建築家の仕事ですので、ご安心してお任せいただきたいと思います。