「階段の話――天使の居る階段―――」@松永基

階段には上の空間と下の空間がある。考えてみれば当然である、階を繋げているのだから。僕が書きたいのは単なる機能としての上と下の繋がりではなく、そこに生まれる上と下の空間のことである。

「階段」「トイレ」を上手くレイアウトできれば住宅の設計は決まり!と言うくらい階段の機能的な役割は大きい。各階の平面計画にも、断面計画にも影響を与える。階段はある意味で床の穴である。単なる吹き抜けとは違い、移動できる穴であるから面白い。人の移動と共に、光や風も伝わる。空間に動きを与え、見る人の視線を広がらせる。トントントン階段を降りる。タッタタッタと階段を昇る。そのシーンの移り変わりに注意してデザインする。見えないモノが見えてくる。違った視線で部屋が見渡せる。階段は視線をコントロールする装置なのだ。

そして、大事なことは、階段を単なる箱に押し込めるのではなく、階段に空間を与え解放するのだ。それは階段が住宅を構成する建築の要素として「花道の看板役者」となり得るからだ。それ故階段のデザインは面白い。人が見る場としての階段ではなく、階段そのものが見られる意匠。リビングから見える階段。エントランスホールで人を迎える階段。スキップフロアの数段の階段。スカスカな階段、収納のある階段、階段箪笥、・・・階段下の空間も単に収納として使うのではなく、その回りの空間に影響を与えたい。PCコーナーや飾り棚、隠すだけではなく、見せるデザインも重要である・・・

イメージすればきりがない。様々な階段を設計し、造ってきた。

造ってきた階段はどれも思い入れがあり、看板役者を担っている。

その過程の中で僕は階段に天使が座っているのが見える時がある(あくまでもイメージの話ですが・・階段の下の薄暗い空間に座敷童子が座っていたら階段(・・)ではなく怪談(・・)になって怖いですが・・)。階段にちょこんと天使が座っているのである。天使が僕に微笑みかけてくれるのである。そしてその時の階段は良く出来ているのである。天使は僕の造りたかった解放された階段の証なのだ。