実験住宅としての自邸 旧作への思い @栗原 守 光設計

私は1987年に事務所を設立して以来、自然の素材や自然エネルギーをできるだけ有効に利用する住まいを設計してきました。2003年に自邸を設計することになり、それまでの16年間に建築主さんに提案し続けてきた自然素材を使いながら、雨と緑を有効に利用する実験的な試みを自邸で取り入れました。具体的には屋根に降った雨を2トンのタンクに溜めて3つの雨の道を計画しました。①トイレ2カ所の流し水、②夏の間の屋根への散水、③西側の緑のカーテン上部から散水……という3つです。「江戸Styleの家」とネーミングした自邸はエコロジーへの取り組みが評価されてグッドデザイン賞を受賞しました。

今年で完成して10年近くになります。杉の柱や天井、松の床などは経年美化で色が飴色に美しく変わってきています。家を訪れる人はいまでも「木の香りがしますね」と言ってくれます。内壁の珪藻土もひび割れなどなくてきれいなままです。外部のカナダ杉の塀は昨年に塗り直しをしました。トイレは年間で半分以上の日数を雨水で流すことができています。夏の屋根への散水によるクーリングは室内の気温の変化がほとんどなくて残念ながらあまり効果なしです。ただ、ガルバリウムの雨樋を流れる「チョロチョロ」という雨水の音が小川のせせらぎのように聞こえて、風鈴のように耳から感じる涼感もあるということを実感しています。緑のカーテンは毎年5月にゴーヤとヘチマの苗を植えると8月のお盆のころには高さ5mくらいになります。西日を防いでくれますので緑のカーテンの効果は大きいです。ゴーヤとヘチマは天候などにも左右されうまく育たない年もありますが、そんな失敗も楽しみながら暮らしています。

私個人としては、できるだけ原発に電気を依存しない社会を築くためにも、自然エネルギーを有効に利用する家を計画することがいままで以上に大切な時代になると思っています。そのためには太陽や雨、緑などの自然の恵みをもったいない精神で有効利用してエコを楽しみながら暮らすスタイルが大切になります。

自邸は10年近く経った今もときどきオープンハウスを開催して自然素材やエコロジーに関心ある人たちに見てもらっています。「楽しみながらのエコロジー……」そんな心意気を共有する人たちが増えてくれると家づくりはよりよい方向に向かうのではと思っています。
[初出:31会マガジン Vol.2 2014 AUTUMN THE KITCHENS くらしを楽しむつくり方]

栗原守+小泉拓也
一級建築士事務所 光設計
東京都世田谷区北沢4-9-18 ガーデンハイツ弘瀬101
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栗原守+小泉拓也一級建築士事務所 光設計のコラム】
TOKYO-FMの「AVANTI」で収録してきました@栗原 守
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栗原 守 + 小泉 拓也栗原 守 + 小泉 拓也

栗原 守 + 小泉 拓也 くりはらまもる こいずみたくや

一級建築士事務所 光設計

「呼吸する住まい」をテーマに自然素材と自然エネルギーを有効に利用するエコロジーな住まいを建築主さんと2人3脚で設計しています。

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