地下室の建築費用が地上建物より高額になる理由

地下建物には地上建物には不要でも必要なモノが増える

地面より下に建物を建てようとする場合、地上建物を造るのと比較して、様々な部分で必要になるものがあります。

  • ・掘削土留め仮設擁壁
  • ・掘削土とその搬出
  • ・分厚い鉄筋コンクリート造
  • ・外壁面の防水
  • ・地下外壁進入水の湿気を封じる二重壁
  • ・進入水排水汲み上げポンプ
  • ・湿気の除去用空調換気
  • ・採光窓用ドライエリア
  • ・法令規定による避難設備・消防設備

などが追加で必要になります。

土留め仮設擁壁

地面を下方に掘り下げる場合、掘り残した斜面を35度位までに抑え掘り下げれば、掘り残した土の斜面はその自重によって崩れ落ちないとされています。ただし掘り下げれば掘り下げるほど掘削する面積は広くなるので、敷地に限りがある場合は現実的に実現出来ません。

地下建物を造る場合、地面はほぼ垂直に掘り下げられます。掘り残された土面はその地肌を見せますが、そのままにしていると土の自重土圧などにより、掘り残された土面は内側に倒れます。

地下建物が完成すれば、土圧を地下建物で支えますが、完成するまでの期間は、土面が倒れないように支えておく必要があります。仮設の擁壁が必要になります。

仮設擁壁の種類と概要については下記リンク記事をご覧いただければと思います。

 →関連記事「建設工事の地下外壁地中土留め連続擁壁」

この土が倒れない様にする仮設擁壁は、掘り下げる土の深さ、地盤の固さ、によって選択される仮設工作物です。地上の建物のでは、周囲に足場を組み立てますが、この足場の代わりであり、地上の足場と比較すると地下擁壁を構築するまでには期間も費用も地上の足場以上に掛かります。

最近で地下に建物を計画したものでは、東京都世田谷区の女子大学キャンパス内に、地下に屋内プール、地上に体育館が併せ建つ「スポーツ棟」の計画(古橋建築事務所様が設計監理)の、意匠設計と工事監理を担当・協力させていただきました。

建築は、地下に25メートルプール、地上に体育館が載る構成です。

地下は地表から約16メートルの深さの鉄筋コンクリート構造で、地上で同じモノを建てることと比べれば、

  • ・地下防水防湿対策
  • ・進入水の排水対策
  • ・採光トップライト

が特別に設けられたものになりました。

設計協力させていただいた計画(地下2階、底盤深さ=約16メートル)の土留め擁壁は、SMW 工法(地中連続壁工法)が選ばれて土留め連続擁壁が設置されました。

SMW重機SMW地中連続壁を打設する重機

掘削深度が浅ければ「親杭横矢板工法」となりますが、いずれにしても土留め擁壁は必要になります。

土の掘削

地下建物の外周を切れ目無く土留め擁壁が設置された後に、地下建物部分の土が場外へ運び出される作業が始められました。

ショベル重機が土を掘ってダンプカーに移し、場外処分場に運び出します。この土の搬出は地上建物にはありません。

土を掘り進めると建物外周に設置した土留め擁壁が見え始めます。こちら現場どはSMWの鉄骨の杭列柱が並びます。掘削深度が深くなれば、SMW土留め擁壁は自立出来なくなるので、内部から擁壁を支える水平つっかえ棒「腹起こし材・切り梁」で支えます。

地下建物の底まで土が掘り進められると「床付け(とこづけ)」と呼ぶ鉄筋棒を入れないコンクリートが打設されて、地下掘削終了します。

この「床」の上に地下建物の鉄筋コンクリートの組み立てが始まります。


写真の奥に見える鉄骨の列柱面がSMW地中連続擁壁、空中に飛んでいるのが腹起こし材・切り梁、床が床付けコンクリート

鉄筋コンクリート造

地下に造る建物は地下水等による腐食にも耐えられるように、鉄筋コンクリートで造ることが必須になります。

また地下の周囲の土の圧力にも耐えられる構造にするために、外壁の厚みも厚くなります。土圧で潰れないための内部の部材も大きくなります。

外壁防水

地中には水を含んでいる地層があります。かたまりではなく、層になって水分を含んでいます。地下プールの敷地では、設計段階における地盤調査結果で地表面から約2メートルの深さにに地下水の層があることが分かっていました。

地下水があるときには、地下建物外壁の外側面に防水を施します。

その防水工法は、

  • ・後やり工法
  • ・先やり工法

がありますが、地下プールの計画では敷地に余裕が無いため、設計の段階では「先やり工法」が選ばれていました。

 →関連記事「地下コンクリート建築物外壁防水の種類と工法と効果」

工事が開始されて土留め擁壁 (SMW) 設置後、土が掘り進められたときに、仮設でも土留め擁壁の効果で地下水の流出が止められたために、地下外壁の防水は、建物内側に施す防水に変更されました。

進入水と湿気を遮る外周二重壁

建物が完成した時に地下の外壁防水を施しても、地下水が建物内に進入してしまうことがあります。(建物の伸縮や防水の劣化が原因と思われます)地下の外壁防水は、改修することが困難で、止水に苦慮します。

そこで万が一地下水が進入しても、室内には入らないようにして、排水処理出来るようにしました。

まず地下外壁周囲面を覆う様に二重壁を設置して、地下進入水はこの二重壁内で下に流れるようにしました。二重壁には地下の湿気を内側に入れない効果もあります。地下進入水は、さらに下の「ピット」と呼ばれる床下空間に流れるようにしました。

地下建物土留擁壁SMW防水二重壁排水ポンプ
地下建物の断面図

進入水汲み上げ排水ポンプ設備

地下床下の「ピット」に流れた地下進入水はピット床を斜めにして集められ、集水場所に排水ポンプを設置して地下進入水を汲み上げて排水するようしました。

湿気を排出する換気空調設備

地下は窓が無く、換気が出来ない場合が殆どです。そのため地下では湿気がこもり易くなります。そこで、湿気を排出する換気設備や乾いた空気に戻す空調エアコン設備を設置して、長い時間稼働するようにします。

採光窓・ドライエリア

地下室で確保が困難なものは日射です。出来れば採光窓を設置します。それは天窓トップライトや空堀りドライエリアを設けた採光窓です。

今回の地下プールでは天窓トップライトを設けました。そのために日中は照明が要らないほどプールの照度が確保されています。

法令避難設備・消火設備

地下建物では、その用途、階数、面積規模、により、

  • ・地上階への避難設備
  • ・消火用の消防設備

が、法令により設置が定められています。地上建物より厳しい規制が定められています。

費用コスト比較

快適な地下建物にするには以上のような要素を追加して設置することが必要になります。すると地上の建物より建設費用が割高になる傾向にあります。

同じ面積規模の地上の建物の建設費用を1と仮定すると、地下の建物費用は1.5~2.0 くらいになることがあります。「地上に建物を思い通りに建てられない規制条件があるので、地下に部屋を造る」という方針は、確かな予算を組み立てから開始されることをお勧めします。

地下の長所

以上までは地下の建物の短所と言うべき点を申しましたが、地下室にも長所はあります。

  • ・温度変化が安定している・・・美術品収蔵庫・ワインセラー等の温度安定を求める用途に適している
  • ・外部に(の)音や振動が伝わらない・・・音楽室・映画鑑賞室等の用途に適している
  • ・地震動が地上と比べて小さい

などと、用途や機能に優れている面もあります。用途や規模や費用に合理性が認められる場合は、地下に建物を計画すべきときもあります。

− 最新イベント情報 −

オープンハウス(完成見学会)2/29 東久留米の ‘yin-yang’ house @七島幸之+佐野友美

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