風呂洗面洗濯水廻り室の間取りプランを工夫した設計図
風呂、洗面脱衣室、洗濯機の間取りプランを工夫すると家事が便利に楽しくなった住まいの実例の紹介です。
もっと便利で楽な家事ができる家にしたいお客様には是非ご覧いただきたい実例で、そちらを実現した設計者のお話を参考にしてください。
屋外へ出ることのできる動線機能をもった在来浴室「調布の杜の家」(滝川淳+標由理)
お客様のお風呂に関わるご希望は、設計の初期段階では清掃性、コストなどを優先してユニットバスを希望されていました。設計を進める中で、以下のようなことを話し合いながら進められました。
具体的なご希望と提案
・屋外にデッキを作って出れる動線をもうけられること
・夏はデッキで子供のプールを作りやすいこと
・デッキが隣りの既存母屋とつながっていて天候の良いときには行き来動線として活用できること
と、具体的なご希望がお客様からお伝えいただきました。状況的には、たまたま生垣が生い茂っていて、その向こうが集合住宅の駐車場なので、それほど視線を気にせず南側開放の浴室が作れそうなこと、コスト比較でいうと、出入り口の強化ガラスドアと強化ガラスのはめ殺し窓分くらいが値段が高くなるが、実は目が飛び出るほどコストアップになる訳ではないこと、等をお伝えしました。
そこで、複合的に考えてお風呂の在来工法によればより良くなりますがいかがでしょうか?という提案をしました。
お客様の選択方法は明快で、「建築家と家づくりをするのだから普通ではできないことをやる。ただしコストは重視」というものでした。
提案した浴室も気に入っていただいて、在来工法で進める事になりました。工事現場では在来工法の浴室は工期がかかり敬遠されがちです。先日お会いした工務店関係者ですら、どうやって作るのかわからない、と話していたぐらいなので、世の中一般的にはこういった浴室を作れる工務店さんを選ぶこと自体が大変なのかもしれません。
お風呂の在来工法の造り方
この浴室はどうやってできているのかの詳細は、以下の通りです。
まず出入り口
隣の洗面室とのつながりを強く持たせるために、透明な強化ガラスだけで仕切りました。扉やガラスの枠にあたるアルミや木製の部分がないためスッキリしますが、デメリットも当然あります。ドアの入口は、どうしても隙間ができてしまいます。わずか数ミリの隙間ですが、シャワーの水が扉にかかると洗面室が結構濡れてしまいます。
そこで洗面の床下にも防水層を伸ばして対応しています。プラスチック製のパッキンを後付けできることをお伝えして、当面はパッキン無しで生活してみようということになりました。床は浴室との間を平らにはしないで、数センチ段差を設けて、扉を内開きとすることで、水返しとしています。
床
サーモタイルという肌さわりがヒヤッとしにくいLixil社製のタイルをつかっています。床暖房はありません。
壁
浴槽側を明るいオレンジ系のタイルを貼って、洗面室まで一体で貼りつなげました。浴槽の立ち上がりまでオレンジ系です。それ以外の場所は白色のタイルを貼りました。タイルは25ミリ角のモザイクタイルです。微妙に色むらがある物を混ぜた商品なので、素材の小ささと共に、とても質感のある壁になっていると思います。
サッシ
外部テラス側は引き違いのアルミサッシ窓が付いています。Lixil社製のアルミ樹脂複合サッシ窓です。洗い場の床は排水溝に向けて水勾配がついて傾いているので、窓サッシの下側で5センチほど立ち上がりを付けて、水を跳ね返すのと同時に水平面を確保することを考えています。
浴槽の反対側にも窓サッシが入り込むので、外側から見ると、窓サッシの奥に浴槽の立ち上がりがあります。窓サッシの内側には、浴室用ブラインドをつけてあります。ブラインドは壁の白タイルと色をそろえているので、閉めた時には部屋の一部になるようにしています。
浴槽
TOTO社製のFRP製の浴槽です。浴槽のサイズは男性と女性で意見が異なる場所です。いろいろショウルームなどを見学して、体験することをお勧めします。
天井
ケイ酸カルシウムボードにビニール樹脂塗装。浴室乾燥暖房機付き。見た目の天井はシンプルにしています。開口部が大きいので、真冬は冷えます。家の他の場所で床暖房を選択していれば、浴室も床暖房という選択肢もありましたが、梅雨の時期の乾燥機能が欲しかったので、天井に暖房器具を設けました。
毎日湯舟につかる。仕事を終えて自宅に帰って疲れをとる。浴室が満足のいく空間に仕上げておくと、1日1階心が満たされる。
こんな贅沢なことはなかなかないと思います。
洗濯ものの仕舞い方と収納を工夫した洗面脱衣室「シホウニワの家」(滝川淳+標由理)
共働きの夫婦にとって、いや全ての生活をする人にとって、洗濯ものの動線を簡単で短くすることは家づくりの大事な要素です。
・入浴前に服を脱ぐ
・家族全員の服をまとめる
・洗濯前に分類する
・洗濯機を動かす
・外もしくは部屋内に干す
・乾いた洗濯ものをたたむ
・家族それぞれの収納にしまう
と順に書き出してみると、洗濯物干しとはとても長い作業です。これをほぼ毎日皆さんやっているわけです。
そこで「シホウニワの家」では、一連の作業の後半部分を洗面脱衣室内で完結できるように工夫しました。
まず室内干し用の物干し竿を天井に用意して、立ったまま洗濯ものが畳めるように90センチのカウンターを設置しました。下部に家族それぞれの下着が入れられる個別収納を設けました。ちなみに収納の引き出しは無印良品の既製品を利用しています。シャツなどの大物が畳めるように、カウンターの一部には引き出し式のテーブルが仕込まれています。タオルは畳んだ状態でピッタリの奥行きとなるようなオープン吊り戸棚に仕舞います。
設計段階では下着だけを洗面脱衣に、と考えていましたが、下着だけだと無印の引き出し収納が半分も埋まらなかったので、現在はさらなる活用がされています。
ご家族が引っ越す前のオープンハウスでこの洗面脱衣室を見た女性は皆うらやましがってしました。
しかし、「シホウニワの家」では、この要望はご主人から伺いました。
夫婦共働きのため、家事分担のうち洗濯担当のご主人は、深夜帰宅後の作業をいかに簡略化するか、設計の前段階から日々シミュレーションしていたことと思われます。
見た目や、デザイン優先で、洗濯もの動線が長くなっている事例も多い一方、このように日々の暮らしをコンパクトにすることで、生活時間に余裕が出ることも事実でしょう。どちらを優先するか、しっかりと話し合って、ベストな解決を図ることが大事です。
両開き扉で屋外と一体になれる浴室「2つの箱の家」(滝川淳+標由理)
やんちゃな兄妹が庭遊びで汚れたら、ざっと砂を落としたらすぐにお風呂にドボン!とできるように浴室空間は大きな両開きの扉を開放すれば庭とつながるようにデザインされています。
こちらの床も墨モルタルで仕上げられ、屋外の墨モルタル土間空間とつながっています。お施主さんが選んだバスタブ、水栓機器、タイル、照明器具などすべてが家族の思い出となる空間を創り上げています。
− 最新イベント情報 −
「江戸Styleの家」オープンハウスのお知らせ 2024 年11月30日(土) @小泉拓也+栗原守
「江戸Styleの家」オープンハウスを11月30日(土)に開催します。2005年7月に竣工した自邸兼モデルハウスです。約19年が経過していますので、無垢の木などの自然素材が時間の経過とともに美しく変化(経年美化)している様子を確認することもできます。自然素材の小振りな住まい、あたたかく気持ちのよい和モダンな住まいの雰囲気をご自身の目と心で体感してください。 *「江戸Styleの家」はエコの取り組みでグッドデザイン賞を受賞しました。 *2021年12月「渡辺篤史の建物探訪」、「突撃!隣...