家事のためのスペースづくり @滝川淳+標由理

人によって、家事スペースの使い方はそれぞれです。レシピ本やCOOKPADを印刷したファイルを開いて料理について考えたり、ミシンを置いて裁縫作業をしたり、ノートパソコンを開いてデスクワークをする人もいます。利用方法としてはほぼキッチンの延長線上の使い方から、書斎に近い使い方までありますが、調理や掃除洗濯を担当する人が専用に使うことができるデスクスペース、と考えればよいでしょう。

 

ここでは一人、もしくは二人ぐらいの椅子を置くことができる家事スペースの作り方について、お話しします。

一つ目はダイニングテーブルの後ろに設けるタイプ。写真の右側のテーブルです。幅2300、奥行670~360。手前側に掃き出し窓があり、開放感を与えるために、テーブルの奥行を写真の奥から手前に行くにつれ浅くしてあります。対面式キッチンの収納棚と同じ、シナ合板で作りました。

まだ一家に一台FAXを置く時代だったため、コンセントプレートには電話・LAN・電気の3口を用意してあります。A4複合機であれば置けるようにしてあり、書斎としても機能できます。

主な用途は、レシピ検索、ミシン、ときどきノートパソコン作業。ダイニングテーブルと同じ高さとすることで、食事時のサブテーブルとしても利用できます。

竣工後に伺った時には手前側に金魚が入った水槽が置かれていました。

ダイニングテーブルとこのくらい近い関係であれば、専用の椅子を置かなくても、ダイニングチェアを移動させて座ることができます。

多用途に使うことができ、かつコンパクトに家事スペースを実現できた事例です。

二つ目は対面キッチンのカウンターと一体でL型に作ったタイプ。白い椅子がある場所です。PH5が下がっている場所がダイニングテーブルなので、ダイニングのすぐ近くですが、天板を支える縦板が天井まで伸びているので、小さいながらも籠り感のあるスペースになっています。

主な用途は、レシピ検索、ときどきノートパソコン作業。キッチン側のカウンターが、朝食用というよりは、こどもにここで勉強させるための場所としています。家事コーナーでも子供の勉強っぷりをチェックされるのだとか。

このように両側面を壁で囲んであげるだけで、籠り感、独立性が生まれます。

三つめは写真の奥側のスペース。キッチンが壁付であることからわかるように、ダイニングは写真手前左側にあり、ダイニングとは距離を取って、独立した家事スペースを作っています。写真では小さく見えますが、幅1700、奥行660ある、しっかりしたデスクワークができるような広さがあります。設計当時は予想していませんでしたが、リモートワークの場所としてはとても快適だと最近になって聞きました。

 

最後に、これまで設計させていただいた方で、洗濯のための家事スペースを希望された方はたった一人。しかも男性でした。ノンアイロンのシャツが一般的になって、アイロン作業自体を日常的に行う方が少なくなったからですよね。私もめったに使わなくなりました。

この家では洗面脱衣にハイカウンターを設けました。カウンター下には既製品の収納が収まる幅1600の横長カウンターとしています。

洗濯を畳み、アイロンをかけるためのユーティリティーエリアです。カウンターの一部には引き出し式のテーブルが仕込まれており、丈の長い服などもちゃんと畳めるように配慮してあります。

 

このように家事スペースといっても、用途や目的によってつくり方はずいぶんと異なります。ほんのちょっとしたスペースを生み出すことで、日々の仕事が楽しくなると、生活も豊かになります。まずはご自分やご家族のライフスタイルに合う家事スペースとはどんなものか、この記事を参考に考えてみてください。

滝川淳+標由理
コネクト 一級建築士事務所

著者情報

滝川 淳 + 標 由理滝川 淳 + 標 由理

滝川 淳 + 標 由理 たきかわ あつし

コネクト 一級建築士事務所

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