【浴室・洗面】~設計打合記録より~ 伊藤明良一級建築士事務所

住宅設計ではお施主様との対話から新たな発想が生まれたり、改めて気づかされることが多々あります。それが住宅設計のおもしろさでもあります。今回は住宅の洗面、浴室について、設計打合せでのお施主様との対話録と併せて施工例をご紹介したいと思います。

建物は、都内の住宅街の新規分譲地(約26坪)で木造・地上3階建て一戸建て住宅を計画。洗面室と浴室は1階にレイアウトし、浴室は既製品ユニットバスではなく在来工法(造作)による浴室(オーダーメイド)とした実例です。

限られた床面積の中で、お施主様のイメージする間取りとの擦り合わせ作業から始まり、話題は浴室・洗面に。お施主様家族は海外生活経験があり、海外の水廻りと比較するとどうしてもそのサイズ感や既製品ユニットバスのしつらえでは満足できない想いをお持ちでしたが、周囲に話してみても日本ではそれが当たりまえとの答えが返ってくるばかりで諦めていたようでした。また、お施主様は新居をマンションではなく戸建てという選択をされたことから、せっかくならばマンションでは難しいとされる窓のある明るい水廻りのイメージをお持ちでした。一方設計側としては、既製品ユニットバス規格サイズが他の間取りを圧縮する懸念と、どうしても居室を優先した場合に北側に寄ってしまう水廻りも気にかけていました。そこで、大きな窓のある在来工法での浴室(非ユニットバス)として、なおかつ洗面・トイレ・リネンも一室にまとめることで省スペースと使い勝手を向上させる提案をしました。後々、ペットの猫のサニタリースペースもここにきれいに納まることとなりました。ちなみに、在来工法浴室の採用には以下の点に注意してお施主様との相互理解がとても重要です。

・防水工事の内容(躯体が木造、設置箇所は低層階。防水工法と施工者との相互理解)

・断熱性能(対ユニットバス比較の場合、保温効果低減の可能性)

・メンテナンス性(防カビ、湿気対策、お手入れ)

・コスト(対ユニットバス比較の場合)

《設計打合せ時のスケッチより》※スケッチ右端の斜め部分は1-2階カイダン下スペースを活用。

在来工法浴室の採用を検討しながらお施主様と話していくと、海外生活の経験からなのか、洗面・トイレ・リネンの一室の使い勝手への理解は高く、むしろ機能が一室にまとまることで人の滞在時間も増えて、生活の中で日頃から換気や室温そして湿気を気に掛けるようになり温熱環境的にも有効であることに改めて気づくことができました。一方、洗面・トイレ・リネンが一室にまとまることでの懸念は、

・生活様式との適合性

・浴室からの湿気対策(トイレットペーパーが湿りがちになるなど)

・トイレの臭い

湿気と換気は窓の設置と浴室内に設けた換気乾燥暖房機の使い方で、臭いについては仕上げ材の選択に注意を払い防汚防臭対策を図りました。洗面室の床については浴室との一体感を優先してタイル貼としてます。夏は風呂あがりの素足でも快適に、冬は浴室換気乾燥暖房機で部屋を暖める際に、この床タイルに蓄熱されることを期待しました。ただ、後日談では冬は時々足下の冷えが気になることから床置きコンパクトヒーターで補完しているとのことでした。洗面・浴室に設けた窓は、1階北側に位置する水廻りスペースの明るさ、風通しを確保して湿気や臭いを機械設備に頼ることなくかつコストを抑える効果にもつながりました。何よりも窓からの差し込む光によって浴室タイルが鮮やかな表情を見せます。

今回の事例のように、在来工法浴室の採用や洗面・トイレ・リネン一室化が戸建て住宅では特殊解と認識されているお施主様は少なくありません。コストやメンテナンス性などなど、見えてくる課題も多々ありますが、住まいへの想いやその背景を知り、対話を重ねることでその人なりの使い勝手を活かしながら、戸建て住宅ならではの洗面、浴室が実現できました。

対話を通しての家づくりが、特殊解をひとつの「選択肢」に変えることができた事例のひとつでもあります。

 

 

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