『間取りの模範回答』奥さま側両親との二世帯なら、玄関は共用でも大丈夫@小林眞人-その3

建築家31会の新刊『間取りの模範解答』P96〜P97 に、

小林眞人の設計した二世帯住宅の間取りが掲載されています。

誌面では伝えきれなかった解説や完成写真などを加えて、解説致します。

 

 

二世帯住宅のあり方と設計の工夫

二世帯住宅と一口に言っても、その形態はさまざまです。

対局にあるのは「完全同居型」と「完全分離型」ですが、その中間にも家族の状況や希望に応じた多様なスタイルが存在します。

 

二世帯住宅を設計する際に重要なのは、二世帯がどちらの親御さんと同居するかによって配慮すべき点が異なるということです。

一般的には、生活面や精神面での負担が奥さまにかかりやすい傾向があります。

そのため、奥さまとその親御さんとの同居であれば、生活を共有する部分が多くても比較的うまくいくケースが多いです。

 

一方で、ご主人とその親御さんとの同居の場合は、生活を共有する部分を極力減らし、

分離型に近い設計をする方が良い結果を生むことが多いと考えられます。

このように、どちらの親御さんと同居するかによって、設計や配慮の方向性が変わることを理解しておくことが大切です。

 

今回の事例は、奥さまとそのご両親との二世帯住宅です。

この住宅では、1階と2階で住み分けを行っています。ただし、玄関は一箇所で共用となっており、

シューズインクローゼットやホール周りの収納も共有スペースとして設けられています。

玄関ホールは広めに設計されており、そこには2つのドアがあります。

1つは1階のご両親の住居スペースへ続くドア、もう1つは2階の子世帯へ上がる階段入口に設けられています。

これらのドアには鍵をかけることができるだけでなく、開けっぱなしにして固定できるようにもなっています。

このような設計により、それぞれのプライバシーを保ちながらも必要に応じて交流できる環境が整えられます。

 

階による住み分けを行う二世帯住宅では、音への配慮が重要です。

特に、水回りの配置については、防音効果を高めるためにも上下階で同じ位置に重ねて設置することがおすすめです。

このような配置は、防音だけでなく設備的な合理性も向上させるため、効率的な設計となります。

また、日常生活で発生する音を軽減するために、床や壁の防音性能を高めたり、

家具やカーペットなどで音を吸収する工夫を取り入れることも効果的です。

こうした細やかな配慮が、快適な二世帯住宅づくりには欠かせません。

 

まとめ

二世帯住宅の設計には、ご家族の状況や生活スタイルに応じた柔軟な対応が求められます。

特に、どちらの親御さんと同居するかによって必要な配慮が異なるため、それを前提にしたプランニングが重要です。

また、音対策や設備配置の工夫など、小さなポイントにも気を配ることで、お互いに快適な生活環境を実現することができます。

 

二世帯住宅は家族間の絆を深める一方で、お互いのプライバシーや独立性も尊重できる住まいです。

ぜひ、ご自身やご家族に合ったスタイルを見つけてみてください!

 

著者情報

小林 眞人小林 眞人

小林 眞人 こばやし まひと

株式会社 小林真人建築アトリエ

『バランス感』と『素材感』を大切にした建築を心がけています。 全体とディテール、都市との関係、実用と芸術・・・ シチュエーションに応じて取るべきバランス点を見極めたいという思いです。

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