住まいの収納を新築やリフォームを機に見直してみる @石井正博+近藤民子

今週の “リレーブログ” を担当します、設計事務所アーキプレイスの石井正博+近藤民子です。

私たちは男女ペアの視点を活かして、暮らし易さと(光と風、家事動線、収納など)とデザインのバランスのとれた心地よい住まいをめざし、「敷地とライフスタイルを活かした家づくり」をテーマとして設計活動をしています。

今回“リレーブログ”では、「住まいの収納を新築やリフォームを機に見直してみる」と題し、住まいの中の収納について部屋別にポイントを整理し、設計事務所アーキプレイスでの収納を工夫した事例をご紹介いたします。

住まいの新築やリノベーションを考えるときは、今までの生活スタイルを見直し新しい暮らしにチャレンジできる貴重な機会でもあります。理想とする暮らしにぴったりな収納計画を考える参考にしていただければ幸いです。

■住まいの収納計画
住まいの収納を計画する場合、一人2畳程度とか、床面積の10〜15%とか目安があります。また、収納のアイデアはテレビや雑誌ばかりでなく、WEBサイトなどでも紹介されています。しかし、それぞれの家族にはそれぞれの生活スタイルがあり、持ち物の量やライフステージも違うので、理想とする収納のスタイルは千差万別です。

 

収納計画の基本となるのは次の3つです。

1.自分たちの持ち物を把握すること
個人で使うもの、家族みんなで使うもの、使用頻度、物の大きさと量を書き出してみましょう。

2.収納は適所適量
無駄のない収納にするには、どこで使う物か、分量はいくらか、頻度はどのくらいか、実際の生活をイメージしながら、使う場所の近くに取り出しやすく片付けやすいように計画します。

3.収納は動線と一緒に考える
使い易いく効率的な収納にするためには、動線(生活動線、家事動線、来客動線)に沿って具体的な生活の動きをイメージして検討します。

収納は広く取ろうとすると、リビングや寝室など他の部屋のスペースを圧迫することになります。少ないと収納できなくなった物が部屋にあふれて落ち着かなくなります。また、収納の広さが十分であったとしても、生活スタイルにあっていない収納や、人の動きや家事動線に沿っていないと使いにくいばかりか、物があふれ出てくる原因になってしまいます。

■部屋別・スペース毎の収納計画のポイント
収納計画では適所適量が必須ですので、まずは収納計画のポイントを部屋別・スペース毎に、その場所の特徴を抑えながら、一般的な収納計画の基本を整理してみます。同時に、収納計画の基本に添いつつプラスアルファの工夫を加えることで、より効率的で使いやい収納を実現した事例もご覧いただきます。

(1)玄関周りの収納
(2)リビング・ダイニングの収納
(3)キッチン周りの収納
(4)洗面室の収納
(5)トイレの収納
(6)子供室の収納
(7)寝室の収納
(8)ファミリークローゼット
(9)その他の収納

■(1)玄関周りの収納
玄関収納といえば、収納したいのは靴。しかしそれ以外にも、鍵などの小物類、傘やコートなど、外出時に必要な物をしまっておくスペースがあると便利です。

スペースがしっかり確保できる場合は、ウォークインスタイルの靴収納がおすすめ。たっぷり収納できるので家族の人数が多い方でも綺麗に収納することができるでしょう。

また、玄関は綺麗に保つことができるため、来客時に慌てる心配もありません。

ゴルフなどのスポーツ用具や、ベビーカー・自転車などを使う場合は、玄関に収納スペースを確保しておけば、汚れを室内に持ち込んでしまう心配もありません。

さらに、土間形式のウォークインスタイルの収納は、自転車やスポーツ用品などを玄関に収納したい方にもおすすめです。

<シューズインクローゼットを設けた2wayの玄関>
大きな土間のある住宅『カフェのある家』の玄関では、玄関をいつもスッキリさせておけるように、シューズインクローゼットを通って上履きゾーンに至る家族用の経路を設けています。シューズインクローゼットには靴入れ棚、コート掛け、傘掛けのほか、帰ってきて直ぐに手洗いができるように手洗い器を設置しています。

>>カフェのある家

■(2)リビング・ダイニングの収納
リビングやダイニングは生活の中心になる場所。家族みんなが集まる場所なので、いろいろなものが置かれて、気をつけていないと散らかってしまうことが多いところです。

毎日居心地よく生活をするためには、すっきりと片付いたリビング・ダイニングにしたいもの。時間を取って片付けをしなくても、物があるべき場所に自然に収納されるのが理想的です。

リビング・ダイニング収納の1番のポイントは、使う場所の近くに収納を設けるということ。ソファで本や雑誌を読むなら、ソファの近くに造り付け本棚を設置する、などつい置きっ放しにしてしまいがちな物をサッと片付けられるようにしておけば散らかりません。

大きな壁がある部屋なら、壁面収納がおすすめ。壁面収納を活用すれば、リビング・ダイニングで使うものを一気にまとめて収納することができ、部屋を広々と使うことができます。

<見せる収納と隠す収納を分けて考える>

旧宅のリビングは、ゲーム機やソフト類や小物が多くTV周りが散らかりやすかった『風と光と暮らす家』では、収納量と使い方を見直し隠す収納にしてスッキリさせましました。DVDは大きさに合わせた引出しに収納、ブルーレイレコーダーやゲーム類は扉内に収納し、TV周りの配線類も隠しています。その他の小物も扉内に収納でき、すっきりしたリビングになりました。
その一方で、お客様も招く場でもあるLDKには、飾り棚を設けてお気に入りのものを美しく飾れるようにしています。



>>風と光と暮らす家

<ワークデスク周りをスッキリさせる収納の工夫>

ダイニングテーブルの横にワークデスクを造り付けた『囲んだテラスに開いた2階リビングの家』。「ワークデスク周りはスッキリさせておきたいけど、プリンターは近くに置いておきたい」とうご要望を解決するために、プリンターを引き出しの中に収納できるようにしました。コンセントは奥に設けているので、プリンターは引き出しの中に入れたまま使うことができ、使わない時は引き出しを閉じれば簡単に隠しておけます。

>>囲んだテラスに開いた2階リビングの家

■(3)キッチン周りの収納
キッチンは、収納したいものの種類が多いのが特徴です。食器、鍋やフライパン、買い置きの食料品、ラップやクッキングペーパーなどの日用品、キッチン周りの掃除用具など、その種類は多岐にわたっています。毎日使うものとあまり使わないもの、ストック類を整理し、実際に使うシーンをイメージしながら収納場所や収納方法を整理していくことが大切になります。

ストック類が多い場合は、キッチンの隣にパントリーといわれる食品庫があると便利です。
常温で保存可能な食品や調味料、嵩張る水やビール、あまり使わない調理器具などを収納しておくスペースになります。
パントリー設けることで、キッチン側に収納するものが少なく片付けやすくなり、キッチン側は調理をメインに考えた収納にできるので、料理も効率化できるメリットがあります。
パントリーがサービスバルコニーに繋がっていれば、ゴミの仮置きスペースとして利用でき、勝手口に繋がっていれば重い買い物を持ってわざわざ玄関を通ることなく、直接収納場所となるパントリーに入れることができるのでとても便利です。

<勝手口につながるパントリーをキッチンの横に設ける>
『それぞれの時間を大切に犬猫と暮らすコートハウス』
は、食品の買い置きが多いご家族のため、アイランドキッチンの横に約2.5畳のパントリーを設けています。パントリーには勝手口があり、買ってきたものはショッピングカートに載せたまま、ここに運び込んで収納します。外にはゴミの仮置き場もあるので、LDKの中心に据えたアイランドキッチンの周りの収納量は抑えられ、整理整頓しやすくなっています。




>>それぞれの時間を大切に犬猫と暮らすコートハウス

 

■(4)洗面室の収納
洗面室には、脱衣としての機能や、洗濯室としての機能もあるため、狭い場所にも関わらず細々した物が多く、じっくりと収納を考えなければいけない場所です。
歯ブラシや整髪剤のほか、シャンプーなどの買い置き、化粧品、洗濯干しに使うハンガー、タオルなどリネン類、掃除道具、洗濯洗剤など。奥行きの深い収納と浅い収納を使い分け、毎日使う物とストック類を区別し、洗濯機上部のスペースや、鏡裏のスペースなどを有効活用しながら、効率良くスッキリと収納できるようにしたいところです。

<洗面室の隣に室内物干し用のサンルームや着替え室を設ける>
共働きの子育て世代の住宅『くるりのある家』は、洗面室の隣に室内物干し用のサンルームや着替え室を設けた事例です。サンルームで乾いた洗濯物は、畳んだりアイロンをかけたりした後は、近くに設けた着替え室まで一直線の動線で収納できるプランです。この家事動線に沿って、掃除機などの掃除道具、タイルなどのリネン類、化粧品や洗面用具などは全て収納できるので、無駄がなく整理整頓しやすい水廻りになっています。


>>くるりのある家

 

■(5)トイレの収納
トイレに収納するものは、トイレットペーパーや掃除用品などで、他の場所と比べるとそれほど大きな収納は必要ありません。サイズも決まっているので、収納の大きさもそれに合わせて決めると無駄がなくなります。

トイレは清潔に保ちたい場所なので、不要な物はなるべく置かないようにするのが一般的ですが、独立性が高い場所なので、他の場所ではできない遊び心をもって収納を考えてみるのも面白い場所です。


>>ミカンの木の育つ二世帯住宅
>>ひかりを組み込む家

■(6)子供室の収納
子供室の収納が他と違うのは、子供の成長に合わせて、収納する物が変化していくということです。小さなお子さんの場合は、絵本や洋服やおもちゃを収納しておくスペースが必要です。特におもちゃは一時的なものですが、形や大きさがまばらで嵩張るものもあります。
小学生、中学生と年齢があがるにしたがって、学校で使う教材や部活動の道具やバックなど、だんだん物が増えてきます。さらに、大きくなると洋服や物が増えていくので、将来を見据えて、余裕を持って収納スペースを確保しておくと安心です。
あるいは、新築時には造り込まずにフリースペースにしておいて、将来、必要に応じて収納を整備するやり方もあります。

<ライフステージに合わせて変化できる個室の可動収納>
白山の家』の建主の方からは、ライフステージによって変化していく住宅が求められました。個室のある3階では、子供が小さい間はみんなで広いスペースで寝て、個室が必要になったら分けられるようになっています。自分たちで可動式のクローゼットや間仕切り建具を動かせるようにしているので、工事を行う必要はなく、子供が巣立った後は元に戻すことも簡単にできるようになっています。

>>白山の家

 

■(7)寝室の収納
寝室は小さくてもすっきりさせて、疲れを癒せる安らぎの場所にしたいものです。収納する主なものは洋服になりますが、小物やカバンなどもあり、壁面の収納とする場合は扉をつけたクローゼットにし、中にハンガーパイプや棚を設けます。壁面だけでは足りない場合や、扉のあるクローゼットでは使いにくいという場合は、中に入れるウォークインクローゼットがおすすめです。衣類をたっぷり収納できるほか、スーツケースのような大きなものや、雛人形などの季節の飾りの収納場所と兼用させることもできます。
クローゼットの奥行きは、衣類をハンガーにかけた時の幅が基本となるため、50〜60cm程度のものが一般的で、丈の短いものはハンガーを2段にして収納することもできるので、丈の長いコート類とは分けて考えます。衣類はハンガーにかけるだけでなく、畳んで納めたほうが良いもののあるため、既製品の衣類ケースなどを用いて、建築で作りすぎないようにすることも、工事費を抑える上ではポイントになります。
畳床の寝室の場合は、布団の入る奥行きの深い収納(押入的なもの)の場所を設けることが必要です。板の間と畳スペースを分け、畳側を小上がりにすると畳ベッドのようになり、その下を収納として使うことも収納量を増やすには有効です。

<小上がりの畳下収納とクローゼットを設けた寝室>
『高窓の家』の寝室は、限られたスペースの中でたくさんの収納量を確保するために、4畳ほどの小上がりの畳スペースの下は全て、開閉式の収納ボックスにして、板の間側には壁面いっぱいのクローゼットを設けた事例です。

>>高窓の家

■(8)ファミリークローゼット(家族共用の着替え室)

家族それぞれの衣類を各個室に全て収納すると、その分部屋は狭くなり、各個室まで何度も往復して洗濯物を片付けることになります。
近年、ファミリークローゼット(家族共用の着替え室)を設けて衣類の収納を一ケ所にまとめるプランが増えています。衣類の収納をファミリークローゼットに集約することで、洗濯物を取り込んで片付ける時間と労力を減らすことができます。

<ファミリークローゼットを水回りに隣接して設ける>
ファミリークローゼットは玄関に隣接して設ける方法と、水回りに隣接して設ける方法がありますが、『ときどき電車の見える家』では、ファミリークローゼットを水回りとともにキッチンにも隣接させています。入浴時には脱衣室で着替える衣類を用意してから浴室に向かえるので、各個室に着替えを取りに行く必要がないため効率的でとても便利です。朝の支度もスピーディーに行えます。

>>ときどき電車の見える家

 

■(9)その他の収納
その他の収納場所としては納戸、廊下、階段下、ロフト、小屋裏、床下、外部物入れなどが考えられます。いずれの場所も、荷物の大きさ、ものの出し入れのし易さ、出し入れの頻度などをよく検討した上で、しまう場所を検討することが大切です。クリスマスツリーや雛人形など季節のイベントに使う物や、シーズンオフの布団、衣類などを季節ごとにまとめるなど、場所やルールを決めてしまっておけるように、収納の場所、広さ、棚の奥行きや段数を決めて、整理整頓しやすいようにします。掃除機など毎日使う物は、誰でも取り出せて、使ったら直ぐ片付けやすい廊下などの物入れに収納し、納戸に収納する場合でも、奥にある物を取り出すための通路を塞がないように、必ずスペースを確保しておきます。

<廊下をウォークインクローゼットと考え長〜いクローゼットを設ける>
阿佐ヶ谷の家』の建主の方は、持ち物の中で洋服や靴がとても多かったため、寝室内のクローゼットに加えて、玄関の下足入れの並びに約4.2mのクローゼットを設置。玄関から続く廊下をウォークインクローゼットのように考えて収納量を確保しました。


>>阿佐ヶ谷の家

■まとめ

部屋ごとの収納について書いてきましたが、大切なことは「収納」は単に収納計画にとどまらず、家づくり全体にかかわるということです。
生活スタイルや家事動線とリンクした適所適量の収納計画は、ストレスの原因となる無駄をなくし、心地いい暮しを実現するためには欠かすことができません。収納計画は家全体の広さ・床面積に関わり、ひいては工事費にまで影響を及ぼします。

限られた広さや予算を有効に使うためには、プランニング、動線計画、収納計画をトータルに考え、要望を整理しつつ、建て主のパートナーとして一緒に家づくりをしてくれる設計事務所(建築家)に相談されることをお勧めします。
建築家31会には、さまざまな知識と経験を備えた建築家(一級建築士)がいます。小さなことでも親身になって応えてくれますので、ぜひ一度ご相談ください。

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著者情報

石井 正博 + 近藤 民子石井 正博 + 近藤 民子

石井 正博 + 近藤 民子 いしいまさひろ こんどうたみこ

設計事務所アーキプレイス

「敷地とライフスタイルを活かした家づくり」をテーマに、暮らしやすさ(温熱環境・家事動線・収納計画など)、デザイン、コストのバランスのとれた質の高い家づくりを建て主の方と一緒にめざします。

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