コロナウイルス対策の間取りと手洗いスペース @古川達也

全国に新型コロナウイルス感染拡大の不安が広がり、外出自粛の生活が続いています。家に居る時間が長くなり、日々暮らしている住まいの使い勝手や居心地などが気になっている方も、増えてきているのではないかと感じます。さて、今まさに気になること。ずばり、コロナウイルス対策に相応しい住まいがあったとして、どんな間取りなのだろうか?未知なるウイルスに対処出来る方法があるとしたら、少しでも住まいに取り入れたいところです。

例えば、屋外から帰宅し誰もが最初に住まいで行っておきたい所作は「手を洗う」こと。手洗い器の場所は、間取りを考えるなかで、どこにあったら一番手を洗い易いかを少し考えてみました。100点満点といかないまでも、おそらく玄関に出来るだけ近いところにあって、素早く手が洗える状況であれば、汚れやウイルスを屋内の広範囲に持ち込まないように対応し易いのではないかと思うのです。玄関戸を開けて屋内に入るとします。靴を脱ぐ前に手を洗うなら、玄関戸の目前に手洗い器がある方がいいはず。しかし、手を洗ってから靴を脱ぐのでは、屋外環境で様々接触してきた靴に、どうしても触れることになってしまいます。やはり少なくとも靴を脱いでから手を洗うようにしたい。さて、その次はどうしましょう。


リビングの一角、階段下を有効活用した手洗い場所。

以前に設計した愛猫と住まうご家族のための木造2階建て個人住宅は、1階にリビングダイニング。2階に主寝室と子供室。玄関から廊下が無く直ぐにリビングへ入室する間取りなのですが、屋外と直結する玄関の断熱性能と、愛猫の飛び出し防止のために一枚の屋内引戸で仕切られています。リビング側と玄関で互いの気配がわかるよう光を通す軽いポリカーボネイト板を主材とした引戸。この住まいの玄関は風除室のような形式と言えます。引戸を開けるとそこはリビング、そして2階へ行ける階段が直ぐ横にあるのですが、階段下のデッドスペースを有効活用し手洗い器を設けています。つまり、この住まいでは間取り上玄関に最も近い位置、なおかつ2階へ行く起点に手洗い器がある。家族皆が必ず通る主動線上に手洗い器があるだけでなく、リビングやキッチンどこからでも見える位置に手洗い器がある間取りになっています。完ぺきといかないまでも玄関では引戸を開ける前に、上着やバッグなど対処出来る範囲で除菌し汚れをなるべく屋内に持ち込まない考え。リビングでは帰宅した子供たちに「手を洗った?」おやつを食べる前に「手を洗った?」2階で愛猫と触れ合った家族が1階に下りて食卓につく前に「手を洗った?」と互いに声を掛けやすい場所に手洗い器がある。そして手洗い器は、居室からよく見えているので清潔を保つよう小まめに掃除、比較的いつも綺麗です。


キッチンからもリビングからも見える階段下の手洗い場所。 → 住まい全体の紹介はコチラです。

実は、この方針をイメージし望まれたのは施主奥様でした。「玄関近くで階段も近く、家族みな見えるところに手洗い器をおく」という間取りのご要望。コロナウイルス問題が身近となる、ずっと以前の計画当初から目指した方針の一つでしたが、結果的にコロナウイルス対策としての間取りと手洗いを考える上で、とても参考になるのではないかと思われたのです。間取りから考えるコロナウイルス対策。さらにみつめて参りたいと思います。

古川達也
古川都市建築計画一級建築士事務所

著者情報

古川 達也古川 達也

古川 達也 ふるかわ たつや

古川都市建築計画

住まいが安心で心地いい。そして住まいに感動がある。 そういう家づくりのお手伝いをしたいと思っています。

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オープンハウス(完成見学会)回遊動線のあるつくばの家 3/20(祝) @石井正博+近藤民子

この度、設計事務所アーキプレイスで設計監理しました『回遊動線のあるつくばの家』(木造2階建)が竣工間近となり、建て主様のご厚意によりオープンハウスを開催させていただくことになりました。 つくば市の新旧入り交じる住宅街に建つ、3人家族のための住宅です。 リモートワークが広まり家で過ごす時間が長くなる中、ご夫婦それぞれの仕事場でもある住まいには、より快適に暮らしていけるよう、ゴロンとできる和室、本棚のあるヌック、子供と遊べる南の庭などの場所をちりばめています。 オープンハウス(完成見学会)...