原風景に想うこと4 @石川利治
人々が集まって住み、人工物を作り、市街化する事は、多かれ少なかれ何かしらの歴史(時間経過の痕跡)が折り重なっている事が想像されます。時間をかけて未開拓の地を開墾し、時代に合わせて築造と解体を繰り返して来たからです。土木構造物、建造物などが多くひしめき合うに連れ、都市へと変わって行く訳ですが、これらの人工物があまり無い場所は、地形そのものの姿が見えやすい状態にあるといえましょう。
以前に房総半島で計画した住宅は、映像作家のSOHOでした。小高い丘の頂きに位置する計画地は、すり鉢状に広がる深い緑に覆われた山肌と谷底の池を臨む優れた景観をそなえていました。緩やかな傾斜は東方向の平野に開け、遠くには街並も点在し夜景を彩ります。敷地西側の接続道路の向かいは奇麗に植樹された平坦な果樹園が広がり、アプローチ部分の雰囲気を高めてくれていました。
敷地内には10M前後の高木も茂り、深い緑を形作るとともに、山肌の裾野には竹林が広がり風景にアクセントを与えます。敷地北側の隣地は低木に覆われ、視界を遮るものがなく雄大な景観を臨む事ができます。接続道路から北東の眼下に広がる風景はアイスポットとなる谷底の池などの特徴的な景観を有し、背景、あるいは借景として建築空間に取り込む事が、今回の計画を行う上でも重要な要素と捉えました。
室内からは、この北東方向の景観を臨む事のできる大きなパノラマウィンドウを設けました。吹抜けに面したこの開口は4M×4Mのサイズになり、建物外観にも印象的な形態をもたらします。接続道路を北側からアプローチして来た時には、深い緑を背景に建物の全容を見る事ができ、その存在感を感じる事ができるでしょう。また、殆どが傾斜地となる今回の敷地は、屋外のまとまった平場がありません。自然に囲まれた生活をする上で、屋外作業を行える場所として、あるいは、来客も含めた充分な広さの駐車スペースとして、そして何より、この景観を満喫する事ができる展望テラスとして、屋上を利用した新たな大地を道路レベルに生み出します。
建物の全体構成は、道路と同じ高さの屋外テラス、駐車場の屋上階レベル、オフィス、カフェ等の土足ゾーンとなる2階レベル、リビング、ダイニング、ベットルーム、水廻り等、生活の中心となる1階レベルの3層になります。敷地の傾斜に沿った形で段状に箱を積み上げる事により、合理的且つ強固な構造体とする事ができます。室内は吹抜けを含んだ一体の空間としてつながっており、通風、換気にも効果的です。各階には小さな段差を絡めながら使う用途による場所性の変化を緩やかに与えます。仕事に関係する来客は2階レベルのカフェを中心に利用します。吹抜けを介して1階のリビングと面する事により、北側の大開口から眼下の池を臨む事が可能です。また東側の大きな壁面はプロジェクターを使った投影を行う事もでき、さながらシアターの様な使い勝手も望めるでしょう。よりプライベート性の高い寝室、水廻りはカフェの下部へと配置する事により、来客の視線が直接届かない奥まった空間になります。
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「江戸Styleの家」オープンハウスを11月30日(土)に開催します。2005年7月に竣工した自邸兼モデルハウスです。約19年が経過していますので、無垢の木などの自然素材が時間の経過とともに美しく変化(経年美化)している様子を確認することもできます。自然素材の小振りな住まい、あたたかく気持ちのよい和モダンな住まいの雰囲気をご自身の目と心で体感してください。 *「江戸Styleの家」はエコの取り組みでグッドデザイン賞を受賞しました。 *2021年12月「渡辺篤史の建物探訪」、「突撃!隣...