原風景に想うこと2 @石川利治
道路、河川、濠、遺構等の土木的な要素が作り出すスケール感は、街の様相が変わったとしても、大きな骨格として残るという話を前回しました。実際には、土木そのものも不変という訳ではなく、時代と共に変化しているもの事実です。
我々が暮らす都市の多くは、城下町や港町として以前から栄え、人が多く集まっていた地域といえます。これは交通の要所であったり、商業の中心地であったりと、人々の交流が盛んに行われている場所でもありました。現在の様な自動車が輸送の多くを担っている現代と違い、近代以前は水運が重要な位置を締めていたため、城下町の水路は大切な都市インフラであったといえます。
以前の職場(池原義郎・建築設計事務所)で富山市内の仕事(富山県総合福祉会館新築工事)に携わったことがあります。富山市街は富山城下を基に発展を遂げた街です。立山連峰によってもたらされる豊かな雪解け水は、神通川となり富山城下を蛇行していました。富山城はその神通川のほとりにあり、濠としての役割も担っており、水運にも利用されていたと思われます。この神通川は雪解けの頃に水量が増し、しばしば暴れ河として氾濫し、水害をもたらしたといわれます。現在は市内の西側を真直ぐ通る様に河川のかけかえが行われ、市内の神通川は松川として水辺の名残を感じさせます。当時の古地図と現在の地図を重ね合わせてみると、かつて神通川が流れていた流域は、県庁舎、市庁舎、県警本部などの官庁施設が多く造られたことが判り、それぞれの時代で、河川の存在が街の骨格を形づくったとも考えられます。
富山県総合福祉会館もこの神通川の流域内にあり、市内中心から進む建物の高層化と住宅地の境界上に敷地がありました。前面道路はかつての街道であり、神通川を渡るために小型の船を連結させてその上に板を渡していた「船橋」があったとされ、現在も地名として残っています。
計画した建物は福祉会館という性格上、誰もが使うことができる様に、街にひらかれた施設を目指して計画がされました。それと同時に都市化が進み、ある意味ではヒューマンスケールから逸脱する都市化と住宅地との境にあることから、建物ボリュームをある程度砕き、内部空間は開口部や緩やかな大階段など街との連続感を生み出す様な作り込みをなされております。
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