音楽室のある家をつくる-3@菰田真志+菰田晶
今週のリレーブログ担当の菰田(こもだ)建築設計事務所の菰田真志です。
昨日に引き続き音楽室に関して書こうと思います。
今日は窓、開口部の仕様についてです。
前回の記事では壁や屋根などの遮音に関して書きましたが、音楽室と言っても専門のホールでないかぎり窓があったり、当然出入口の扉があるものです。
遮音の基本は重い材料を使うことと「隙間をなくすこと」が重要なので、窓やドアなどの開口部は遮音的には弱くなる部分です。この部分も全体の遮音をあげてゆくなかで重要になります。
まずは光や換気のために窓を開ける場合には、二重窓(二重サッシ)にすると性能があがります。最近のサッシは気密性が優れているので二重にすることで内外の隙間を小さくすることができます。
更にガラスの厚みを変えることも重要です。通常使われるペアガラスの場合、ガラスの空気層を挟んで同じ厚さのガラスの場合場ありますが、音の振動でガラス同士が共振することがあります。共振すると入った音よりでてゆく音のほうが大きくなったりビリビリといった音がしたりすることもあります。こういったことを避けるにはガラス厚を変えたペアガラスにすることが有効です。二重サッシにした場合のサッシとサッシの間の空間は平行なガラスとガラスに挟まれているので、この場所でも音が響くことがあります(フラッターエコー)。こういったことの対処のために、音の反射しにくいフェルトなどを周囲に貼ることも効果があります。
出入口の扉も既製品の遮音扉がありますが、大きさやデザインを考えて製作する場合には、4方をエアタイトの入った二重戸当りにしたり、戸厚を厚めにして内部に密度の高いGWなどを充填することが必要になります。重いほうが遮音に効くので、木製扉よりスチールドアのほうが効果は高いですが、枠の中が中空なのでその中にGWをつめたり扉の鉄板が振動で響かないようにしたりと、木製もスチール製も遮音扉の設計には様々なテクニックが詰まっています。ひとつひとつは小さなことですがおろそかにするとすぐに性能が下がるのが怖いところです。
ほかにも換気扇や給気口、電源関係の壁の貫通孔、エアコンのダクトなどの「穴=開口部」が建物には実はたくさんあります。こういったすべての穴を通り抜ける音をどう処理するのかといったことすべてがひとつになって「遮音性能をあげる」設計や施工ということになります。
最後に遮音の基本を簡単にまとめておきます。
・使う材料は重いもの厚いもの。
→軽いもの、薄いものは音の振動で響く
・隙間は極力つくらない
→隙間から空気が漏れる=音漏れ
・同じ材料が向き合っていると共振する可能性がある。
→厚みを変える
・並行なものに囲まれた隙間があるとフラッターエコーが起こる可能性がある。
→並行にしない。響かない材料にする。詰められるならGW等を詰める。
・開口部は塞ぐ。塞げない場合には音を減衰させて出すようにする。
・地道にひとつひとつ積み上げてゆく。設計も施工も。
※フラッターエコーとは、平行面の間で音が延々と反射を繰り返す現象です。お風呂場やトンネルなどで長く音が響くのがこれです。
明日は音響にテーマを変えて、部屋形状による音の調整/縦横高さの黄金比について書いてみたいと思います。
よろしくおねがいいたします。
(有)菰田建築設計事務所 菰田真志
http://www.archi-komo.co.jp/
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