設計事務所の引越し事情3 @石川 利治
「地区再開発事業」に伴う事務所移転の話が立ち上がってから、折を見て物の量を減らす努力をしていましたが、本格的に引越しの準備に入ったのは、再開発準備組合事務局との協議が始まってからでした。今回は再開発によって退去が求められているため、今まで事業所を稼働するために投資したものへの補填や移転費用や引越しに取られる時間の補償、再開発後の建物に入居を希望できる借家権についてなど、諸々のやりとりを進める中で、やるべき事のスケジュールが刻まれてゆきました。
打合せの会議室に関しては、シェアオフィスを借りて対処する事にしました。多数の候補がありましたが、住所登記を目的とした執務空間を持たないバーチャルに特化したレンタルオフィスは会議室が限定されているため、オフィス賃貸を主としながらバーチャルオフィスとしても登録できる施設を探しました。エリアに関しては自宅近くも候補として探していましたが、やはり都内中心部の方が住所取得希望の需要が多い様で、選択肢が豊富です。港区を中心に数カ所を内見しましたが、最終的には馴染みのある「赤坂」に致しました。決め手は充実している共用部で内装にも力が入っていること、全国に系列の提携オフィスが多数あり、各所の会議室を借りられることでした。もっとも、会議室を使うケースは今の所ないですが、業務を進める中で必要になる事はあるでしょう。
新たに借りたシェアオフィスの共用部
同じく会議室
退去に向けて持ち物を確認した所、改めて紙媒体の多さに気付かされました。まずはカタログ整理と過去資料の取捨選択を行い、少しずつ資源ごみの回収にまわし、タイル、クロスといったサンプル帳は、リサイクルを積極的に進めている意識の高い各メーカーさんに引き取って頂きました。とにかく物を減らしてゆく作業を続けてゆきましたが、17年間の集積物は並大抵のことでは片付かず、手前が片付いても後からあとから次々と奥から物が出てくるのには、自分がやったこととはいえ本当に閉口しました。
処分が難しいものは、他に場所を見つけて移設するしかありません。模型、サンプル、保存資料用に新たにトランクルームを借りることにしました。多数の候補がありましたが、事業所で使っていた収納家具などを移設使用するために、トランクルームのサイズと間取りを検討する必要がありました。多くがHP上で部屋の間取りを知ることができますが、正確な内法寸法は判りませんので現地採寸を行い、簡単なレイアウト図を作成。空調に関しては、安定した温度と特に湿度管理を行なっている事を重視しこれらを総合的に判断した上で小田急線高架下のトランクルームを選びました。
大物家具や重量物は引越業者に依頼することにしましたが、単身パックの様なサービスで最小限に留め、トランクルームへの移設を行いました。作業机などは事業所立ち上げの際に、スタッフと自作したものだったため、分解しリサイクルで引取が叶わなかった家具と併せて産廃として専門業者にて処分しました。
大物が無くなり、ようやく先が見えて来たと思ったのですが、実はここからが長かったです・・・。慎重な取り扱いが求められる模型達は自ら車でトランクルームに運びました。捨てられない書籍や資料は手元に置きたいものが多数を締めていたため、これはもう自宅に運ぶしかありません。カタログ整理用で空になったBOXFILEに詰め込み、車によるピストン輸送を行いました。2023年12月中旬には目処がつくと思いましたが結局年末ギリギリまで掛かり、大量に自宅に持ち込まれた荷物関係は未だ整理を続けるありさまで・・・・何とか生活と業務に支障がない程度にはなりましたが、片付けはまだまだ続きそうです。
年が明けてから、鍵の引き渡しを行い、正式に退去が完了しました。春には建物解体が始まる様ですが、名残惜しい限りです。愛着があり、大変お世話になったオフィスへの恩返しとして、できる限り綺麗な状態に戻してお返し致しました。17年間、本当にありがとうございました。
− 最新イベント情報 −
「江戸Styleの家」オープンハウスのお知らせ 2024 年11月30日(土) @小泉拓也+栗原守
「江戸Styleの家」オープンハウスを11月30日(土)に開催します。2005年7月に竣工した自邸兼モデルハウスです。約19年が経過していますので、無垢の木などの自然素材が時間の経過とともに美しく変化(経年美化)している様子を確認することもできます。自然素材の小振りな住まい、あたたかく気持ちのよい和モダンな住まいの雰囲気をご自身の目と心で体感してください。 *「江戸Styleの家」はエコの取り組みでグッドデザイン賞を受賞しました。 *2021年12月「渡辺篤史の建物探訪」、「突撃!隣...