地盤補強(地盤改良)は必要か?「地盤から考える家づくり」@古川達也

例えば住まいの足元、大事な地盤に着目します。足元がゆらぎ頼りないものであっては、どんなに素敵な住まいでも心配が絶えません。足元を見直そう!足元をみつめる、そういう心構えも必要だと感じます。さて、土地に家を建てることになり地盤調査をしたところ、地盤が柔らかく建物の重さに耐えられないと分かっても諦めてはいけません。しっかりした地盤にする「地盤補強」という選択があります。

◆地盤補強(地盤改良)とは

建物などの構造物を建てる場合に、安定性を保つため地盤に人工的な改良を加え、地盤を補強することを地盤補強と言います。土地が違えば地質が違い、建てる家の重さや形が違えば、その足元に求める地盤のあり方も変わります。つまり家づくりを例に考えると、意外にも全ての家づくりにおいて地盤づくりはオーダーメイドと言えるのです。弱い地盤に対応する技術として様々な「地盤補強」の方法があります。


地盤補強例:鋼管杭工法を採用した施工の様子。

 

◆地盤補強(地盤改良)の例

【表層改良工法】
軟弱地盤の層が2m以内の場合に行う地盤改良。表層部の軟弱土壌にセメント系の固化材を流し込みかく拌、比較的短期かつ低コストで所定の地盤強度を確保する工法です。施工中の粉塵や振動などがあるため、近隣への配慮が必要となります。
・適用:戸建て住宅など。

【柱状改良工法】
軟弱地盤の層が2~8m以内の場合に行う地盤改良。セメント系の固化材と水を現地の土と混合かく拌。柱状に固化させた状態を、複数箇所設けることで全体として支持できる地盤を確保する工法です。
・適用:戸建て住宅、擁壁など。

【鋼管杭工法】
先端に螺旋状の小さい羽の付いた鋼管杭を、地盤下の硬い支持層まで貫入することで建物を支持する工法です。周辺地盤を乱さずに無排土・無振動で比較的速やかに進められます。
・適用:多種多様な用途の建物や構造物に対応。中低層建築物、鉄塔、擁壁、集合住宅や戸建て住宅など。

【RES-P工法】
弱い地盤に細い鋼管パイプをたくさん貫入し、地盤に対するパイプの摩擦力など複合的な作用で建物を支持する工法です。周辺地盤を乱さずに無排土・無振動で速やかに進められる特徴があります。また、施工した鋼管パイプが機器を使って比較的容易に抜けるため、将来建物を解体する場合、異物を残さず、土地を元の地盤に戻し易い工法と言えます。
・適用:小規模建築物、戸建て住宅など。

【プレコンサンドパイル工法】(HGサービス特許工法)
特殊なロッドで地盤に孔を確保しつつ、地表面から圧密用の砂を圧入。土壌の柔らかい部分に隙間を埋めるように砂が行き渡り締め固める工法です。残土処分がなく経済的かつ高めた地盤の効力が半永久的に持続します。また、圧密用の砂は粒が粗く粒間に地下水をおくるドレイン(排水)効果があるため、地盤の液状化現象※への対策として期待されています。
・適用:戸建て住宅だけでなく、多様なケースへの対応が期待できます。
※液状化現象とは、地下水位の高い砂質地盤が地震の振動で液体状になる現象です。

参考:エイチ・ジー・サービス株式会社ホームページ

 

◆地盤補強(地盤改良)は必要か?

地盤補強には前述を例に、様々な方法がありますが、一般的な木造住宅において、軟弱な地盤が2m以内では、主に表層改良工法を採用します。2~8m以内では柱状改良工法を考えるケースが多いですが、セメント系固化材を周囲の土とかく拌する手法であるため、土質が腐葉土であったりすると弱点になる場合があります。地盤調査で分かる地面下の硬い支持層をとらえる鋼管杭工法を採用するケースも多いです。

地盤補強(地盤改良)は必要か?

答え→地盤補強は、地盤調査の結果と建物設計の内容から、要不要を判断します。地盤の安心は、建物への安心・安全・愛着に繋がりますから、建物本体と同じくらいに大切な検討項目として、考えて参りましょう。次回は、地盤補強を施した地盤を、あえて元の地盤に戻すことを考えてみます。

古川達也
古川都市建築計画一級建築士事務所

 

著者情報

古川 達也古川 達也

古川 達也 ふるかわ たつや

古川都市建築計画

住まいが安心で心地いい。そして住まいに感動がある。 そういう家づくりのお手伝いをしたいと思っています。

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