今どきの住宅の玄関廻りで考えたいアレコレ @石井正博+近藤民子
今週の “リレーブログ” を担当します、設計事務所アーキプレイスの石井正博+近藤民子です。
住宅の玄関には、住まいの第一印象を良くするための工夫にはじまり、靴やコートだけでなくアウトドア用品などの大容量の収納スペース、靴ぬぎスペースの幅や床段差の処理方法、仕上げ材の清掃性や入り口の防犯性など、考えるべきポイントが詰まっています。
今回と次回のリレーブログでは、玄関廻り間取りがわかる図面と写真で、弊所の事例をご紹介いたします。家づくりやリノベーションにおいて、玄関廻りのプランニングやデザイン、機能を考えるときのご参考になりましたら幸いです。
【1】街並みに寄与する小庭とベンチを外に設けた二世帯の共用玄関
玄関を考えるときは少し視野を広げて、まわりの部屋とのつなげ方、アプローチの使い方など一緒に考えることが大切です。
この住宅は親世帯が3階、子世帯が1階と2階を使う、玄関共有の二世帯住宅です。親世帯は長い間この地にお住まいで、ご近所付き合いも多いことから、行き止まり道路に面した玄関のアプローチ横に、庭いじりのできるちょっとした小庭を設けています。庭いじりの合間に腰掛けてお茶を飲んだり、ご近所の方たちと木陰で話もできるように、木製の長いベンチを造り付けました。ベンチの周りの外壁には温かみも感じられるレッドシダーの無垢板を張り、それと同じ無垢板をスチールの玄関ドアにも張って、他の外壁材の素材感と対比させています。
玄関には靴やコート、傘などがを仕舞える収納と、金魚の水槽も置ける飾り棚を造り付け。二世帯分のアウトドア用品や庭いじりの道具も仕舞えるシューズインクロークには、収納物の大きさに合わせて高さを変えられる可動棚を設置、出入り口は、姿見(鏡)を兼ねた引き戸としています。
【2】内外の一体感を高めたタイル貼りの玄関
玄関廻りは住まいの第一印象に影響を与えるため、素材選びや開口の設け方などトータルなデザインが機能性とともに求められます。
この住宅では、玄関ドアと横のパネルを一体のスチールで製作し、溶融亜鉛メッキのリン酸処理で仕上げています。パネルにはインターホンとポスト口を目立たないように組み入れたシンプルなデザインです。床は内外ともにタイル貼りで、靴ぬぎ部分の段差は50mm。室内からは、玄関ドア横の床から天井までのFIXガラスを通して道路際のシンボルツリーまで見通せ、内外の境界が消えたような広がりが生まれています。
玄関扉を開けて正面に見える階段はスチールで踏み板を吊った軽やかなデザインで、横の下足入れはウォールナットの突き板合板で造作し、階段の踏み板と色を揃えています。吊り階段は大切なお客様を迎え、2階へと誘う玄関のアクセントにもなっています。
【3】車イスにも対応できるバリアフリーの玄関
道路から1階の上履きゾーンまでの床の高さをどのように設定するか、玄関を考えるときに欠かせない検討の重要ポイントになります。
ホームエレベーターを設けたこの住宅では、道路から車椅子で1階床までアプローチできるバリアフリーが求められました。玄関へのアプローチは、駐車スペースと一体に、道路から緩やかなスロープとし、勾配は車椅子で自力走行できる1/12に設定。玄関入り口はスマートキーの引戸とし、この部分と靴ぬぎ部分の床の段差は20mm以内として、車椅子のタイヤが無理なく乗り越えられるようにしました。
玄関には下足入れと腰掛けて靴の脱ぎ履きができるベンチを造り付け、間接照明で足元と天井を明るく照らします。ホームエレベーター側面の壁には鏡を貼って、実際以上の広がりを生み出すとともに、出かける前に全身をチェックできる姿見にしています。玄関横のシューズインクロークはゴルフバックや冬用のタイヤも置けるる大容量で、一部に宅配ボックスと郵便ポストを組込み、アプローチへの出っ張りを無くしています。
【4】お客様を迎える坪庭の見える吹抜けの玄関ホール
玄関は家族の出入りだけでなくお客様を迎える場所でもあるため、その空間やインテリアは住まいの印象を大きく左右し、同時に住まい手の個性や好みが感じられる場所にもなります。この住宅の玄関では、好みの絵やオブジェを飾ったりでき、緑も見える明るいギャラリーのような空間が求められました。
床は土足ゾーンから上履きゾーンまで同じタイル貼りで、上からの光を反射し、正面い見える坪庭の緑が写り込むように少し光沢のある仕上げにしています。階段はスチールと木を組み合わせたスケルトン階段で、坪庭や2階のテラスへ視線が伸びていきます。玄関の土足ゾーンの両側には家族4人分の靴や傘を入れる収納を造作。片側は花を飾ったりできるカウンター収納で、鍵や印鑑を入れておける小物用の引出し付き。反対側は床から天井までの収納で、扉は姿見を兼ねた鏡貼りです。ホールの中ほどの壁にもコートの掛けられる収納を目立たないように組み込んでいます。
【5】道路からのスロープは玄関とともに勝手口にも繋がる
住宅の人の出入りや物の出し入れを、玄関と勝手口の二ヶ所で行うと、玄関に求められる機能が少なくなり、玄関をすっきりさせることができます。
この住宅では、食料品などの買い物はショッピングカートを使われるため、道路から玄関までは段差なくアプローチできることが求められました。そこで、道路からはスロープを使って屋根のかかる玄関ポーチと勝手口にアプローチできるようにし、買い物時の動線はパントリーにつながる勝手口側としました。
普段の出入りやお客様が使う玄関は、両サイドのスリット窓から光を取り入れたスチールドアで、ガラスはLow-E複層合わせガラス(防犯タイプ)を使用して防犯に配慮。玄関を常にキレイに保つことができるように、家族4人分の靴やコートをゆとりを持って片付けられる壁面収納を造り付けました。
キッチンにつながるパントリーの勝手口には、ショッピングカートを置きっぱなしにでき、買ってきたものは直ぐに棚や冷蔵庫に仕舞うことができます。役割の違う二つの出入り口は、この住まいの利便性と快適性を高める重要なポイントになっています。
【小休止】玄関では何をしているか・何ができるか便利か考えてみよう
家の外と内をつなぐ出入り口である玄関で、何をしてるか考えてみる・思い出してみることで、新しい玄関では何をしたいか・どのようにしたいかがイメージでき、自分にとってに玄関の姿が見えてきます。
1)毎日の家族の出入り
2)靴の脱ぎ履き、カバンをちょっと置く
3)コートを脱いで掛ける
4)雨の日に傘を出す。渇いた傘をかたずける
5)荷物を受け取る。ダンボールをかたずける
6)花や季節もの、コレクションを飾る。
7)ベビーカーやショッピングカートを置いておく
8)子供の外遊び道具や外の掃除道具をしまっておく
9)キャンプ道具やゴルフバッグを収納
10)靴を履くときに椅子に腰掛けたいときがある
11)できるだけ広々した玄関にしたい
12)姿見がほしい
13)郵便や新聞はパジャマのまま室内から受け取りたい
14)ゴミのの仮置きもしたい
15)鍵をバックから出さずにドアを開けたい
などなど
次回のリレーブログ「続・今どきの住宅の玄関廻りで考えたいアレコレ」でも、自転車整備のできる土間玄関、子供の多い家の玄関、小さな家のたっぷり収納玄関などの事例をご紹介する予定です。
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