これからのSMILE HOME展「住まいの模型づくりワークショップ」レポート@古川達也
今回のイベント会場、代官山ヒルサイドテラス、アネックスA棟。設計:元倉眞琴
5月25日と26日に代官山ヒルサイドテラス、アネックスA棟で行った展示相談会「これからのSMILE HOME展〜家づくりを建築家に相談してみよう〜」。会場内で、ご来場下さった一般の皆さまを対象に、住まいの模型づくりワークショップを開催しました。※建築家31会としてSDGsを見据えた会活動の一環と位置付けています。
今回は参加者皆さまに縮尺1/50で「人」の模型を作って頂き、会場内で気に入った建築模型の玄関先や庭やテラスなどに置いて写真を撮って楽しんで頂くというワークショップです。実は、そのために今回の会場で展示している模型は、建築家メンバー全員が概ね縮尺1/50に統一して準備し協力し合っています。
会場内の長テーブルが模型づくりの作業場。教材づくり含む模型づくり指導全般を古川が担当。
開催一日目は、ワークショップ参加を希望し事前に予約をされてご来場頂いたご家族。二日目は、家づくりに関心がありご来場頂き、会場で偶然ワークショップの企画を知り参加して下さったご家族などが、参加者となりました。両日とも小学生のお子様を中心に、とても楽しんで集中して取り組んで頂けたように思います。想定した以上の学びと発展性を感じ、関係者間で是非次回イベントでも継続していきたい企画であると話しています。以下ワークショップ進行の様子を一部ご紹介します。
①縮尺1/50の人間はどんな大きさかを知る。
実物大は1/1。1/2は実際の半分の大きさ。1/10はさらに小さく1/50はもっと小さい。同じ大きさの人間でも、表現する縮尺の違いで大きさが変わることを順番にご説明していくと、詳しく分からなくても考えようとしていることは子供たちにも伝わったように思います。
同じ大きさの人間でも、表現する縮尺の違いで大きさが変わることを図で見える化しご説明しました。三角スケール(複数の縮尺で大きさを測ることが出来る三角状の物差し)の使い方もレクチャーさせて頂きました。
②予め縮尺1/50の人間を描いてある色紙を選ぶ。
自分の好きな色を選んで頂きました。一方で、自分が作った「人」の模型を置いてみたいと考えている住まいの模型の色と同化しない、はえる色の紙を選ぶと綺麗ですとアドバイスし、どの参加者も直ぐ理解し喜んで頂けました。
好きな色を一人一枚選んで頂き、型紙(古川作成の31会オリジナル教材)を切り出すように作業を進めます。余力がある方には、余白に自身の身体を鉛筆で描きそれを切り抜くことで、自分自身の模型を作ることに挑戦して頂きました。建築模型に置けば、まるで自分が佇んでいるかのような空気感を味わえます。
事前に古川が作成した見本。日ごろの実務では、空間や間取りの方針を検討している段階で作る簡単な模型で、空間の雰囲気やスケール感などを検討したり共有したりするために活用している作り方と言えます。普段は早く細かく加工するため、ハサミで無くカッターを使っています。今回は安全性を考慮しハサミを使っています。
③ハサミで紙を人型に切り折曲げ表情を付ける。
始めは細かい作業に戸惑う場面もありましたが、一人目より二人目、三人目と進めるごとに腕をあげ、どの参加者もどんどん慣れてスムーズに作っていくようになります。見本をみながら、歩いたり座ったりしているポーズを再現。男女の違いや子供と大人の大きさの違いを理解し、途中から自分の家族全員を作って表現したいと気が付いたお子様も。粘り強く製作に取り組む姿をみて応援したくなりました。取り組んで良かったと思います。
参加者作成の「人」模型。右からお父さん、お姉さん、自分(小学生)、お母さん、座って休んでいるのはお祖母さん。良く出来ていて、このまま充分実戦で活用出来ます。
参加の皆さま全員が、どんどん上手になり手が動くようになっていきます。
④出来た人模型を好きな住まい模型に置く。
自分の作った「人」の模型を、住まいの模型に置くと、まるで自分がその住空間に身を置いているような気持ちになります。これはまさに我々が常に取り組んでいることであり、実践的で実務作業と全く変わらないことを参加者に伝えました。
置いてみたい場所へ興味が広がり、模型作りで疲れた表情の子供たちの顔がどんどん明るくなり、活き活きとしてきます。庭やテラスにとどまらず、リビングのソファやベッドに座らせたり「お母さん模型」をキッチンに立たせたいなど。お父さんお母さんも積極的に子供をサポート。住まいの模型を設計した建築家自らも、屋根を外して人模型の置き方をアドバイスしたり、空間の特徴を話したり素晴らしい対話が生まれました。最後はスマートホンで記念撮影。今はお子様も撮影が上手ですね。
古川の設計しました個人住宅「図書館のある家」
この写真はワークショップ参加者自身による撮影で、写真データを提供して下さいました。ありがとうございました。古川の設計しました個人住宅「図書館のある家」模型に人模型が置かれています。屋根の上に座る人は、乗せたご本人も古川も笑顔になるユーモアがある。「ちょっと危険に見えるけど、手摺を上手く設計出来ると、この気持ち良さは実現できるね!」という話が出来ました。
リビングに佇んだり、キッチンに立たせたりしながら、想定した以上にどんどん住空間の各部特徴を理解していくお子様を目の当たりにして驚きました。
夢中になる娘さんを見守っていたお母さんは、途中から模型をのぞくよう目線を下げ娘さんをサポート。より良い佇まいを娘さんと相談している様子です。ピクニックをするように庭で寛ぐ人も置いてみたり、間取りだけでなく屋内外全体の居心地に気が付く機会。これはつまり設計・計画者の視点そのものだと思いました。
北島さん設計の個人住宅。お子様が屋根の重なりの中に、眺めの良いバルコニーと、心地良い濡れ縁を発見し、身を乗り出す人と腰掛ける人を上手く表現していました。スマホ撮影も大変上手でした。
石川さん設計の個人住宅。是非ソファに座らせたい(座ってみたい)というお子様の気持ちを石川さんが察し、屋根を取ってサポートして下さいました。人模型がソファに座り完全に馴染んでいます。どんな住まいなのか、この場所に座るとどういう感じなのか等、お子様とご両親と設計者である建築家とのスムーズな対話に繋がっている様子でした。
1969年、最初に建設されたヒルサイドテラス(1期)正面入口に、本会の案内ポスターを掲示頂きましたこと、関係者の皆さまへこの場をお借りして感謝申し上げます。
※ヒルサイドテラスを設計した、建築家 槇文彦氏が6月6日に永眠されました。謹んで哀悼の意を表します。 建築家31会協同組合
− 最新イベント情報 −
「江戸Styleの家」オープンハウスのお知らせ 2024 年11月30日(土) @小泉拓也+栗原守
「江戸Styleの家」オープンハウスを11月30日(土)に開催します。2005年7月に竣工した自邸兼モデルハウスです。約19年が経過していますので、無垢の木などの自然素材が時間の経過とともに美しく変化(経年美化)している様子を確認することもできます。自然素材の小振りな住まい、あたたかく気持ちのよい和モダンな住まいの雰囲気をご自身の目と心で体感してください。 *「江戸Styleの家」はエコの取り組みでグッドデザイン賞を受賞しました。 *2021年12月「渡辺篤史の建物探訪」、「突撃!隣...