設計事務所の引越し事情2 @石川 利治

コロナ禍でワークスタイルが変化した事は、皆様も身をもって感じていると思います。行動制限が無くなった現在は、コロナ以前の働き方に戻った業種の方も多いと聞きます。設計事務所に目を移しますと、その殆どが図面をCADで描いていると思いますが、これはPC内で作図作業が完結する事を意味しており、以前の様に大型製図板で手描き図面を作り、A1やA2サイズの紙に印刷して確認する事はほぼ無くなっています。弊社は創業時からノートPCで作業をしているため、持ち運びを苦にしなければ作業場所は何処でも良いという下地はできていたといえるでしょう。それでも、事業拠点が必要であったのは以下の様な理由からでした。

  1. 打合せを行う場所の確保(お施主様、協力事務所、営業担当者、スタッフとの内部打合せ、他)
  2. 作業スペース(作業机、椅子、個人用キャビネット、デスクライト、電源、通信、他)
  3. 印刷機置場(複合機、プロッター)
  4. 打合せ資料の保存(現在進行中の検討資料、過去案件の記録、他)
  5. 設計資料置場(建築専門書籍、雑誌、カタログ、サンプル帳)
  6. 素材置場(各種カットサンプル、試作品、過去案件の色見本)
  7. 模型関連置場(プレゼン用模型、検討用模型、保管箱、模型材料、工作道具、他)
  8. 作品パネル置場(イベント時の事例作品展示用、他)

これらの前提はコロナ禍の行動制限で見直しを行う機会となりました。

1.の打合せ場所ですが、コロナ禍を通じてリモート会議が日常的に行われる様になった事で、弊社内で打合せを行う機会は極端に減りました。どうしても面直で会議が必要な時は公共交通機関を使わず極力先方に伺う様にしておりました。行動制限が無くなってからも、それはあまり変わらず、スタッフとの打合せも会議終了後の喫茶店利用でこと足りています。


打合せスペースを見る 壁面に並ぶBOXFILEの中身は全てカタログ

2.の作業スペースは行動制限がなされた事で、自ずと自宅作業の方法を取らざるをえませんでした。

3.4.に関しては、ペーパーレス化が進み印刷物の量は減る方向にあります。出力に関しては量が少ない場合は自宅近所のコンビニで賄っていましたが、カラー印刷だとコストが嵩むため、今後はA3対応のパーソナルな複合機の導入を検討中です。また、大型図面を事務所内で印刷する事は皆無になったためプロッターは10数年使っていませんでした。一方、過去の資料などは法的に保存が必要なもの以外は殆ど開く事はなく、近年の案件ではペーパーレス化が進んで来たため、紙資料が発生する量は年々減ってきている様な状況です。


キャビネット上に鎮座するプロッター 現在は全く使っていない

5.の中で過去の名作建築などの書籍は現在では入手困難ものも多いため、手放す事はできないと思います。技術的な書籍、雑誌に関しては、時代と共に進歩しているため更新してゆく必要があります。同じくカタログに関しては製品の更新と併せて入れ替えが必要なものです。それでも最近はWEBカタログが一般的になって来ており、冊子によるカタログは殆ど使わなくなって来ましたので、手元にストックするのは最小限度に留めることができそうです。

6.7.8.に関しては、なかなか減らすのが難しいと感じます。素材に関しては先のカタログと同じ様に更新されてゆくものではありますが、特に内装のコーディネートをマテリアルシートとしてお客様にお見せする事は結構な頻度で必要になります。サンプル取り寄せにはそれなりの時間が必要になるため、どうしても手元に置いておく必要があります。模型、パネルなどは仕事の記録、成果品といった側面もありますので、こちらも保管が望まれます。

この様な価値観の変化がワークスタイルの中で起こった中で「地区再開発事業」に伴う事務所移転を考える様になり、事業所のあり方を少し変化させる事を考え始めました。とはいうものの、日常業務をこなすことが優先され(引越しの話はやらなければなぁ・・・)といったおよび腰で時間は過ぎてゆくのでした。

著者情報

石川 利治石川 利治

石川 利治 いしかわ としはる

3*D空間創考舎一級建築士事務所

お客様にとって「快適で上質な空間」をお話をしながら、 きめ細かく建築に盛り込みます。コミュニケーションを大切にし、 技術力と感性の統合を行い、最適なご提案を致します。

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