リフォームの断熱改修でも窓周りの性能アップが大切です。@磯村一司

今週のリレーブログを担当します「ギルド・デザイン一級建築士事務所」の磯村です。

リフォーム・リノベーションの建築家への依頼では、生活スタイルや家族の個性を活かすようなリフォームを求められることが多いと思います。
そんな場合、間仕切り壁やキッチンなどの設備を撤去して、室内をがらんどうに解体するスケルトンリフォームが多くなりますが、外壁や窓、屋根は残すことが多いものです。


*鉄骨造の現場では、こんな風に外壁や窓だけを残したスケルトンリフォームが可能です。
「中庭をつくる減築リフォーム」

 

*左は木造住宅のスケルトンリフォーム現場です。外壁も解体して構造体だけにした事例ですが、間仕切り壁はなくなっても、構造の柱は多いですね。
上の鉄骨造と違って構造体が多いのですが、木造は鉄骨造と違って、柱を抜いたりする間取り変更がしやすいです。この現場では、断熱改修だけでなく、基礎からの耐震補強もしています。
「茶の間のある家」

 

 

前回お話しした断熱改修でも、外壁は残っていて、その内側や外側から断熱補強をしています。築年数の古い建物からなら、断熱性能を表すQ値や外皮の熱貫流値をしめすUA値は、相当アップします。
しかし、室内の温熱環境を安定させ、省エネ住宅にするためには、もうひとつ、気密性<C値>を考えないといけません。
気密性を高めるということは、建物をいかに隙間なく、外気が入ってこないようにするかということです。
窓やドアからのすきま風はもってのほかで、現在の「気密性」で求められているのは、換気扇などの穴への対処もありますが、壁や天井を作っている建材同士のとても小さな隙間から入り込む外気対応です。

室内外の気圧の差から、そんな小さな隙間でも空気は出入りをしています。
古い建物では、建材が痩せて隙間ができています。そこをどう塞ぐかということが大切になります。
アルミサッシなども、古くなって少しづつ歪んで隙間ができていますが、もともと当時のものは、気密性に対しては、現在ほど繊細に考えられていません。

また、古い窓ガラスはシングルガラスで、断熱性能的には無いに等しいものです。
壁や屋根の断熱性能を上げることでQ値は高められますが、さらに、この窓の断熱気密性能を上げることが、現代の省エネ住宅の性能に近づけていくことになります。

窓の断熱性能を高めるためには、まず、窓ガラスの性能を上げることが大切です。
少なくともペアガラスで、遮熱性能・断熱性能が高いLow-Eガラスに取り替える、また、ペアガラスで中間部分が真空になっていて熱伝導のない真空ガラスもとても有効です。
最近は、Low-Eガラスや真空ガラスを使った、トリプルガラスも出てきています。

これらのガラスを使うことで、窓の大きな面の断熱性をあげますが、窓枠のアルミ部分の断熱性や、サッシ全体の気密性を高めないとまだ不十分です。
そのためには、サッシ枠を新しいもの変えたいのですが、取替えとなると、壁を一部壊さなければならず、少し大掛かりな工事となります。
そこで、壁を壊さず、既存の枠のうえから新しいサッシ枠を取り付ける「カバー工法」といわれる工法によって、気密性が高く、断熱性の高いサッシに替えることができます。
また、カバー工法とよく似た工法で、既存枠との接合部分に断熱材のウレタンフォームを使う「発砲工法」というものが最近出てきています。これはさらに断熱気密性が高くなり有効です。

 

*ショールームにあったカバー工法下枠部分の実物断面です。
元々あった枠(赤)を覆うように新しいサッシ枠を取り付けます。そのため、窓は少し小さくなります。

 

 

 

 

カバー工法によるサッシの更新は、リフォームで窓周りの断熱気密性能を高める有効な方法ですが、もう少しコストを押さえて簡単に窓周りの性能を上げる方法としては、インナーサッシをつけるという方法もあります。
既存サッシの内側にもう一つ窓をつけて二重窓にする方法です。

この方法も断熱性能を高めることができて、比較的安価ですが、窓を開けたいときに、2回窓を開けないといけないめんどくささや、内窓が少し壁から出っ張ってしまうデザイン上の問題などがあります。

*インナーサッシの実物の断面模型です。左側が室内側のインナーサッシになりますが、壁から飛び出ている感じがわかりますか。

 

 

 

 

 

 

 

断熱性能を上げるためには、まず壁・屋根・床の断熱性能を上げることなのですが、これについては、新築住宅では、ほぼ当たりまえになってきています。
実は、日本の断熱性能アップで、西洋諸国から遅れをとっていたのは、窓周りの性能でした。
壁や天井の断熱性のアップは大切ですが、UA値を上げるためのポイントは窓の性能を上げることで、極端な言い方をすれば、窓性能をアップするだけで、UA値は一気に上がり、室内の快適性も上がり、省エネ住宅になります。
ポイントは窓なのです。

ここ数年、断熱性能の高い住宅用サッシが急ピッチで開発され、普及してきています。
ぜひ、検討してみてください。

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著者情報

磯村 一司 + 政本 邦彦磯村 一司 + 政本 邦彦

磯村 一司 + 政本 邦彦 いそむらかずし まさもとくにひこ

株式会社ギルド・デザイン
一級建築士事務所

風や光、素材の扱い方、住宅としての生活のしやすさ、それらをバランスよく、シンプルでさわやかで心地よい、その上で、建主さんの考える一つ先のデザインを提案します。

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