「拠り所」をつくる@岸井 智子

今週のばとろぐを担当します、meenaxy design一級建築士事務所の岸井です。

今回は住まいの中で、人がそこに集まり、様々な行為を受け止めるような場所、いわば住まいの中の「拠り所」を考えた事例をご紹介したいと思います。

 

私たちが以前設計監理を行ったこちらの住宅は、ほぼ平屋に近いゆったりとした間取りが特徴で、南側の庭に面して日当たりのよい広々としたリビングダイニングを取ることのできるプランでした。

この広いスペースにテーブルや椅子、ソファをレイアウトすればそれなりの「居場所」はできるのですが、施主は私たちに単なるスペースだけではなく、この住宅の特徴となるような、人が集まりたくなる場所を作ってほしいという要望を持っていました。(最初は部屋の中央に柱が立っているようなイメージ写真を提示されたと記憶しています。)

 

そこで私たちが提案したのは、リビングダイニングの中心に、拠り所として「小上がり」を設けることでした。

 

小上がりには大きなローテーブルを造り付け、このテーブルを囲んで食事をしますが、食事だけではなく様々な活動がこの小上がりの周りで行われます。

小上がりは腰掛けるのにちょうどよい高さとなっているので、この空間に入ると自然とその縁に腰掛けたくなり、庭側に腰掛けて庭を眺めたり、別の縁に腰掛ければ子供部屋の様子を見たり、テレビを見たりピアノを聴いたり、それぞれが思い思いに過ごすことができます。

また小上がり床仕上げの一部は畳になっているので、赤ちゃんを寝かせたり、大人がちょっと寝転んで休憩することもできます。

 

 

冬にはローテーブルを掘りごたつとして使用でき、施主の要望でもあった和室の居心地の良さも取り入れています。

小上がりの下部は大容量の引き出し収納となっているので、子供のおもちゃや座布団、本や書類までまるごと収納でき、何の造作もない状態より、かえってリビングダイニングをすっきりと見せることができているのではないかと思います。

 

今回は広いスペースに対してプラスアルファの造作を行う「拠り所」の作り方でしたが、逆に狭いスペースの中では引き算によって「拠り所」を作ることもあるでしょう。

 

さまざまな条件や要望に合わせてその空間固有の「拠り所」を考えていくことは、設計者と施主にとって、そこでの暮らしをより具体的に思い描いていくとても楽しい時間です。

そういった時間を色々な方と共有していければと思っています。

岸井智子
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