大地震に耐えて倒れない家住宅建物にするために
地震が少ないと思われていた九州熊本地方で、平成28年4月14日から相次いで震度7を観測する大地震が起きました。地震でお亡くなりになられた方々のご冥福をお祈りするとともに、被災されて不自由な生活をされている方々の一日も早い復興を願って止みません。
大地震で崩壊した建築
活断層による直下型地震は震源が地表面から近いので、非常に強力な揺れに見舞われたと思われ、地震後に報道された映像を見ると、多くの住宅や建物が倒壊し、公共建築物も損傷する映像を目の当たりにしました。
倒壊したり崩落した建物には、ある共通点が見受けられました。
それは、
- 昭和50年代以前に建てられているもの
- 地上1階が駐車場で開放されているもの
- 瓦で屋根が葺かれている木造住宅
- トタンで屋根や外壁が覆われているもの
- 擁壁やガケが古い石積みで出来ているもの
でした。
ご自宅や周囲の建物は心配ないですか?
今住むご自宅やご親戚の建物、または周囲の建物で上記のことは当てはまりませんか?今までの強い地震に耐えても、直下型地震が来ると、上記のような建物は人の命を奪う凶器になってしまうのです。
「ここは地盤が固いから大丈夫」
「311の地震に耐えたのだから心配ない」
「頑丈な太い柱があるから地震に強い」
地震の種類が違うのです。誤解は禁物です。
是非とも備えを万全にして下さい。
直下型地震で倒れた理由
—地震の強さが違う—
地震は震源地からの距離と震動の強さ等によって、被る地震動が異なります。強力で震源地から近いことが甚大な地震動を受けることになります。「東日本大震災の地震動を受けても大丈夫だった」という印象は、これから来るだろう直下型の地震に対する備えにはなりませんので注意して下さい。
熊本地方の地震は正に「直下型」地震で、震源地に近い場所では震動周期の短い地震動だったため甚大な被害となりました。それに較べ東日本大震災の震源は本州より遠く離れた場所だったため、震動周期が長い周期震動だったので揺れは激しくとも強力な地震力を受けるものではなかったのです。
—建築基準法の耐震強度—
所謂「耐震強度」は建築基準法に定められているものです。建築基準法に定められている「耐震」とは平たく言うと「震度7の地震に建物が見舞われても安全に人が避難出来ること」です。この場合建物が健全であることは求められておらず、損壊しても構わないとしています。
巷の理解を恐れずに言うと「震度7の地震が来てもビクともしない」という理解があるかもしれませんが、そうではありません。現在の「耐震強度」は「建物はどこか損傷するかも知れないけれど、人命は安全に確保出来る」というのが指針なのです。
「震度7の地震が来てもビクともしない」建物を実現しようとすると、
- 間取りに支障を来す様な耐震構造部材の出現(窓が無くなる)
- 過剰な工事費の高騰
が伴い、実質的な日常生活に不便を強いたり、建設コストについて過剰な金額を必要とするので、建築基準法も今回の地震を受けても改正の予定はありません。
—既存建物の耐震強度—
現在の建築基準法おける「耐震強度」は昭和56年に大きく改正されました。今回の熊本地震で倒壊してしまった建物は、「昭和56年以前に建てられた建物」がほとんどです。逆に、昭和56年以降に建築基準法に沿って建てられた建物には、一部を除いて大きな損傷は見られなかったと言って過言ではありません。
つまり昭和56年以前に建てられた建物は「耐震強度」において問題があると考えていただいたほうが良いと思います。
今回の地震で震度7を2度受けた益城町では、昭和56年以降に建てられた建物でも崩壊や部分的倒壊があったことが報告されています。
—地上1階が駐車場で開放的なピロティ—
建物自体が地上から浮かされて、地上階が開放されている部分を建築用語で「ピロティ」と呼んでいます。開放されているピロティは人々の往来を自由にしたり自動車の駐車スペースとして便利に利用されています。
しかしながら今回の地震では、鉄筋コンクリート造のピロティの柱が押し潰され、上階の建物がそのまま1階に崩れ落ちている映像を幾つも見ました。地震動で上部構造が揺れ、その揺れに地上1階の柱が耐え切れず折れたり潰れたりして、上部の建物が崩れ落ちているものです。
鉄筋コンクリート構造で、1階が柱だけで駐車場に利用されて開放的な建物や、物販店舗等で広く開放的に利用されている建物は、要注意建物です。
—瓦の重さが危険—
木造の建物で横揺れに対する耐震性が弱く、さらに屋根に瓦が葺かれた建物では、屋根がそのまま地上に崩れ落ちている画像を目にしました。瓦の重量が重く、地震に揺れが加速されて、下部の柱が倒れてしまったものです。
自分の身体でも重い物を頭の上に載せながら歩くと、バランスが崩れて歩きにくくなる経験があると思います。それと同様に、耐震性向上のためには、建物の上部は重量のある材料を避けて、軽い構造にすることが肝要です。
—トタン板—
建物の屋根や外壁にトタン板が貼られている建物は、法令に沿っていない建物が多く非常に危険です。構造的にも施工的にも防火性能も含めて、その場限りの方法で建てられている場合が多く「安全性」は全く担保されていません。増築や改変を繰り返したものは、便利で安価なものでその時の都合は良くとも、後に災いを起こすことも多いにあり得るので、是非とも見直しをお勧めします。
—石積み擁壁や土のままのガケ—
地面の高低差がある地域では、地面の高さに差がある土地の際は、ガケや擁壁になる部分があります。自然石を積んだだけの石塁や、土塁で覆われたものもあります。これまでずっと動かずに居たものであるかもしれませんが、一度強い揺れを受けると、脆くも崩れてしまう可能性があります。
熊本城の城石が地震で崩れてしまったのを、映像でご覧になった方も多いことでしょう。
付近周囲の状況で昔からある石垣や直角に近い土がむき出しのガケや壁があったら要注意です。それはプロである方々のご意見を拾って改修することをお勧めします。
耐震対策の種類
まず、現状の建物や土地の状況に心配な点が有る場合は、最寄りの役所の建築指導課に相談して下さい。耐震診断を受け付けたり、診断をしてくれる方を紹介してくれます。もしくはお近くの設計事務所に相談して下さい。工務店様ではありません。
そして、今ある建物やガケなどが大地震の揺れで崩壊する危険があると判ったとき、対策は様々です。
- 建て替える
- 耐震強化補強改修(リフォーム)
- 強固な寝室シェルターにする
- 耐震ベッドにする
建物の建て替えが一番安心ですが、金額予算の関係で困難な場合があるでしょう。大地震が起こっても命を守ることが第一なので、寝ている時に家屋の下敷きにならないように、寝室や寝床ベッドだけは家屋が倒壊しても頑丈に守られるシェルターを用いる方法もあります。
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