都市住宅で、内部空間を開放する(2) 「照明で奥行感を演出」 @田中功一+佐藤美欧
とにかく部屋を明るくしたい。電球色は薄暗くて嫌だ。こういったお話を受けることがあります。
(健康に問題を抱える方は例外です)
人間は、明るさに対して、優れた適応力があります。
太陽光は、照明の約200倍の明るさがあり (太陽光は約100.000ルクス、照明は約500ルクス)
人間の眼はその差に対応できる適応力があります。
その能力もあって、物理的な明るさよりも、心理的な明るさの方が、影響が大きいと考えます。
照明器具の優れたデザイナー、メーカーが多い北欧では、決して明るくない照明で、
落ち着いた、温かいあかりで、空間を豊かに演出しています。
また、ほとんどの家では、夜はカーテンが開けられたままで、
窓辺に置かれた照明は、外へと魅せるあかりとなり、町中が家の照明に照らされているようです。
北欧の夜の街が、どこか温かく感じるのは、窓から各家の団らんが町中に漏れているからかもしれません。
近年、国連の世界幸福度ランキングで1位となっている、北欧フィンランドの冬では、
9時頃に日が出て、夕日のように薄暗いまま (太陽高度は約7度) 15時頃に日が沈んでしまいまいます。
さらに、冬はほとんどの日が曇りとなります。
冬は、ビタミンDが必須と言われるくらい精神疾患に罹る人が多く、暗さは大きな問題です。
なお、比較的近い緯度の、ロンドン、モスクワでも、同じ様な状況です。
彼らにとって照明は、日本とは比べ物にならないほど重要です。
そういった環境で、決して明るいとは言えない電球色の照明で、
壁や天井など、部屋の一部を照らしたり、照明を置いたりして、雰囲気を楽しんでいます。
まるで、暗さを楽しんでいるかのようです。キャンドルもほとんどの家庭で灯され、年中クリスマスのような雰囲気となります。
そう、ひたすらに明るいことが、豊かさではないと思います。
さて、家づくりでの実践です。
・建築編
明るい光源を、天井の中心に設置して床面を照らす照明は、近代日本の慣習と言っても良いかもしれません。
部屋の中心に明るい照明を灯すと、照明を背にした物、人は影となります。また、天井の端、壁の上部が暗くなりますので、
部屋全体が薄暗く、狭く感じることになります。
明るさを落としてでも、数か所に分散して光源を置く方が、影を見ることが少なくなりますので、暗く感じません。
壁の上部や、天井の端は、部屋で最も遠い部分になりますので、その部分を照らしたり、そこに光源を置くと、
明るく目立ちますので、奥行き感が得られ、広く、明るい空間となります。
特に、間接照明は秀でた方法です。
近年のLEDの普及により、電気代は電球に比べると1/10程度、蛍光灯に比べると1/2程度と安くなりますので、
間接照明などのゆとりを演出する機器を選択できる機会が増えました。
・照明器具編
現在、住んでいらっしゃる住宅で、いつものペンダント照明を、別のものに変えてみては如何でしょうか。
また、コードの長さの調整、照らす方向を天井に、壁に向けてみては如何でしょうか。
引掛けシーリングであれば、「小型ペンダント」や「スポットライト」を自由にレイアウトできる、
取付簡易型の「ライティングダクトレール」があります。取付簡易型なので特別な工事なしで手軽に設置できます。
また、アジャスタブルタイプですので、梁や障害物をよけることもテーブルに合わせた微調整も可能です。
また、置き型照明を、部屋の隅、ソファ、家具の後ろに置いてみるのも効果的です。
・追記
フィンランドを含む北欧4か国は、国連の世界幸福度ランキングで上位を占めています。
日本は62位となっています。また、国別のGDPは3位ですが、人口1人当たりのGDPは28位まで下がってきました。
それでは、1日も早いコロナ禍の終息とともに、皆様のご健康を心よりお祈り申し上げます。
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