世の中に無いものをつくる_オーダーメイドの世界2「無垢板のカウンター」@石川 利治
前回に続き沖縄のプライベートヴィラでのオーダーメイド、今回はレストランのメインカウンター製作についてです。
都内で数店のレストランを経営するオーナーシェフが初めて手がけたプライベートヴィラは、美食と居心地の良さを追求したラグジュアリーな空間です。選りすぐりの素材をフルコースに昇華させたお料理を提供する空間は、洗練されながらも重厚感と暖かみのあるしつらえが求められました。オープンキッチンで提供されるお料理には、ライブ感溢れる鉄板焼きスタイルが愉しめる様に、キッチンを取囲む大きなL字型のメインカウンターが設けられています。全長は長手が6.2m、短手が1.5m、奥行きが70㎝の木製カウンターで、無垢板の重厚感をそのままに、お客様側が着座する側のエッジは無骨な木の表情を残した、厚み80㎜という迫力満点の天板になります。
カウンターの長さは6.2mのL字型ですので、そのままの大きさで輸送することはできません。また、そこまで巨大な無垢材も入手が難しいため分割製作し、工場で全体形を完成させた後に、再び分解して運びます。今回はこれ以外にも造作家具が多数あったため、まとめてコンテナに積込み船便で運びました。ジョイント部には鉄の板で補強がなされています。お客様が着座した時にジョイント部が目の前に来ない様、座席の間に設ける様に位置調整しています。
施設全体には各所で木材が使われていますが、材種はオークに揃えられています。厚みが80㎜のオーク無垢材は、なかなか市場に流通しておらず(オークそのものが大木になる樹木ではないため)材木問屋に伺いながら材料を選んでゆく中で、最終的には60㎜厚で耳付き(樹木の表皮に近い部分を残した無垢材)の材を選定する事になりました。今回は、この60㎜厚の材を貼り合わせて80㎜に見せています。耳の部分も絶妙に一体感が出る様に木肌が合わさっていました。造作家具製作は神奈川の秋山木工さんによりますが、精緻で実直な仕事ぶりにとても感動を覚えました。
木の表情はより野趣を感じさせる様に板目を多く使い、塗装色も使い込まれて少しダメージを受けた様なビンテージ調を目指して行う事にになりました。木の表面は一度ワイヤーブラシをかけて木目が出る様な一手間を掛けてくれています。塗装色の色合わせと並行して、鉄鋲が着く家具の色合いも確認しました。
天板を支える腰壁部分は木軸で組んでいます。天板と腰壁の取合い部には、間接照明を組込んでいます。
腰壁の白い塗装面が照らされる事で天板の存在感が増すと共に、重厚な無垢板に浮遊感を与える事となり、重すぎず軽すぎずといった絶妙なラインが演出できたのではないかと思います。
石川利治[3*D空間創考舎一級建築士事務所]
− 最新イベント情報 −
「江戸Styleの家」オープンハウスのお知らせ 2024 年11月30日(土) @小泉拓也+栗原守
「江戸Styleの家」オープンハウスを11月30日(土)に開催します。2005年7月に竣工した自邸兼モデルハウスです。約19年が経過していますので、無垢の木などの自然素材が時間の経過とともに美しく変化(経年美化)している様子を確認することもできます。自然素材の小振りな住まい、あたたかく気持ちのよい和モダンな住まいの雰囲気をご自身の目と心で体感してください。 *「江戸Styleの家」はエコの取り組みでグッドデザイン賞を受賞しました。 *2021年12月「渡辺篤史の建物探訪」、「突撃!隣...