世の中に無いものをつくる_オーダーメイドの世界1「階段」@石川 利治

今週のリレーブログを担当する石川利治です。今回は建築の内装におけるオーダーメイドに関して綴ってゆこうと思います。1週間、宜しくお願い致します。

昨年春から今年の初めまで、沖縄のプライベートヴィラの監理サポートで頻繁に通わせて頂きました。コロナで移動が制限されている現在の状況を考えると世の中が一変してしまったことを改めて感じます。1日も早く、感染が収束してゆくことを願います。

建物はRC造の2階建で、レストラン棟と宿泊棟に分棟されています。今回はレストラン棟の階段を掘り下げてまいりましょう。

RC造の階段は、建物の柱、壁、床といった建物を構成する部位と一体で作られる場合と、階段のみ別の構造を組合せる場合(例えば鉄骨階段を組み込むなど)があります。前者の場合、階段もRC構造体の一部として、他の構造体と同時に施工し一体化させる必要があります。特に階段部分は他の部位よりも構成しているパーツが多いため手間がかかり、難易度があがります。コンクリートは壁の上部から流し込んでゆくのですが、下層の階段部分では重力により圧力が高くなり段板上部の型枠が持ち上げられるため、それを抑え込む必要があります。それと同時に段板根元は内部の鉄筋も多くネックになりがちで、コンクリートの流し込み不良も起こりやすく施工時に絶妙な塩梅が求められます。

今回の階段はこの前者にあたり、特徴は各段板が壁から持ち出されている片持ち方式になります。階段の中央部にはササラにあたる繋ぎ材がなく、落下防止のための鋼材による手摺が組み合わさった構成になります。

コンクリートは工業規格により製造されている材料ですが、流動体のため形状は比較的自由度が高く、よりオーダーメイドな感覚をそなえた素材といえます。段板は今回の階段室に合わせた割付で形か決まり、概ねコンクリート形状そのままにモルタル仕上げと塗装によるミニマムな仕上げになるため、設計図通りに型枠、鉄筋、コンクリート打設を行う施工精度が求められました。

また、手摺の取り合いや照明器具の仕込みは、躯体形状がそのまま仕上げに直結するため、事前の設計が重要になります。手摺はフラットバーと呼ばれる長方形断面の鋼材で構成され、段板とはボルトで緊結されています。フラットバーの断面形状は工業規格で決まっており、流通している材料を組み合わせて使う事が多くなりますが、規格材をどのような組み合わせにするかはオーダメイドの領域になるため、設計の意向が強く反映されるといえます。

今回は独立した段板の形状の木口側に手摺を取り付ける仕組みを作りながら、各段に対して2本ずつの手摺子が立ち上がり、平行四辺形の四周にもフラットバーを回す構成としました。以下は現場でRC階段に鋼材の手摺が取り付けられらた際の写真です。手摺には赤い錆止め塗装が施されていますが、この後、黒に塗装されました。

照明計画に関してはUCLDさんにご協力を頂きました。壁の埋込照明で足元を照らすため、コンクリート打設時に先行の埋込ボックスを壁に仕込む必要がありました。位置に関しては構造計画上の制限から壁面の裏側に走る2階の床梁の位置を避ける必要があり、担当の柳田さんには何度も位置検討をやり直して頂くなど、多大なるご尽力を頂きました。

段鼻には階段を降りる時にモルタル色の階板では視認がしにくいため、床に埋め込んだ木材と同じものを取り付けて貰いました。

こうして出来あがった階段はロビーに置かれた家具や床材と一体となって空間を演出します。強くオーダーメイドを主張することはないですが、周囲に馴染みながらアクセントを加える要素になったのではないかと感じております。

石川利治[3*D空間創考舎一級建築士事務所]

著者情報

石川 利治石川 利治

石川 利治 いしかわ としはる

3*D空間創考舎一級建築士事務所

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