テレワーク・在宅勤務がもたらす住宅の作り方や暮らし方の変化 @石井正博+近藤民子

今週の “リレーブログ” を担当ししている設計事務所アーキプレイスの石井正博+近藤民子です。

5月のコロナ禍の中、テレワークや在宅勤務のことが盛んにニュースで取り上げられていた時に、コロナ禍が住宅の作り方や暮らし方に与える影響について考え、「テレワーク・在宅勤務がもたらす住宅の作り方や暮らし方の変化」と題し弊所のブログに書いたものですが、31会のリレーブログにも再度アップします。

現在、新型コロナウィルスの感染の波は第三波をむかえ、まだまだ先の見えない状況が続いていますが、住まい作りの参考になれば幸いです。


【テレワーク・在宅勤務がもたらす住宅の作り方や暮らし方の変化】

新型コロナウィルス感染拡大防止のため、急速にテレワーク・在宅勤務が広まりました。この状況は新型コロナウィルスの収束後も続き、住宅の作り方・設計にも大きな変化をもたらしそうです。もちろん在宅でのテレワークに完全に移行できる人の割合は少ないかもしれません。しかし、今まで通りの通勤を主としつつも時々テレワークを取り入れて働く人、メインをテレワークに切り替えて出社するのは週に1、2回程度にする人など、テレワークの取り入れ方は様々であったとしても、テレワークを取り入れて働く人の割合はこれからも確実に増えていくと思われます。
今回はテレワークを組み入れた働き方の変化が、住宅の作り方や暮らし方にどのような変化をもたらしていくのかについて、次の7項目に分けて考えてみました。


↑明大前の賃貸併用二世帯住宅

 

■家族の適度な距離感が選べるプラン
■外部空間(屋外テラスや庭など)が今まで以上に大切になる
■仕事に集中できるスペースが必要になる
■ながら仕事と場所の多様性
■ダイニングキッチン周りの充実
■育児・介護と仕事の両立の可能性
■住環境重視の土地選び
■まとめ



■家族の適度な距離感が選べるプラン ↑くるりのある家
テレワークを取り入れると、自宅から職場への通勤の必要がなくなり家で過ごす時間、家族みんなが一緒にいる時間が格段に多くなります。それは自体は好ましいことだとおもいますが、四六時中ずっと家族と顔をつきあわせていると、それをストレスと感じることもありそうです。人間は一人で居続けることも辛いですが、誰かとずっといる居続けることも辛いからです。家族それぞれが一人の時間を大切にできる場所、こもれる個室、気分転換できる仕掛けなど、家族の距離を調整できて適度に気分転換も図れるような、プランが求められるようになってくると思います。
家の中に気持ちのいい場所がいくつかあり、家族の気配は感じつつも、それぞれのお気に入り場所で好きなことができるようなプランです。


■外部空間(屋外テラスや庭など)が今まで以上に大切になる ↑蕨市のコートハウス
テレワークによって家から出ることが少なくなると、太陽の光を浴びたい、外の空気に触れたい、四季の変化を感じたいなどの欲求が生じてきそうです。さらに植物を育てたり、土に触れたいという欲求が高まるようにも感じます。家にいながら自然と触れ合うことができる、開放感があって気持ちいい、そんな屋外テラスや庭などの外部空間が今まで以上に求められるようになると思います。
また、今回のコロナ禍での在宅時間が増えた体験により、健康的な生活を送るためには適度な運動が欠かせないことを改めて認識した方も多かったのではないでしょうか。家から会社までの通勤の必要がなくなっことによる運動不足の解消や気分転換のために、ストレッチやトレーニングなどができる内外のスペースや部屋が、住宅の中にあると運動不足を日常的に補えそうです。


■仕事に集中できるスペースが必要になる ↑風と光と暮らす家
テレワークでは、多くの人にとっていかにして仕事に集中する体制や時間を確保するかということが課題になりそうです。
仕事モード入るときは、家族と距離を置け、落ち着いて仕事に集中できる場所が必要になるかも知れません。デスクや本棚のある書斎や、廊下やロフトの一部にデスクを造つけたコーナー的な場所などです。プライベートな生活モードから仕事モードにスムーズに切り替えるが行える、いわゆるオンとオフの切り替えの仕掛けが住宅の中に必要になりそうです。また、ZOOMミーテイングをやって気づいたことですが、家の中には意外に生活音があり、それをパソコンのマイクが拾ってしまわないように、仕事スペースに不要な音を入れない工夫も必要です。

今まで寝室は面積を抑えて機能重視になりがちでしたが、テレワークもできる場所として書斎を兼ねた少しゆとりのある広さになる可能性があります。寝室を在宅勤務で使うには、寝るだけだった寝室の、日中の快適性が見直されてくるかも知れません。ただ、注意しなければいけないのは、夜中の音や明かりの問題があるので、家族と一緒の寝室の場合は家族の睡眠を妨げることになるので、テレワークを行う場所とするには時間の制約を受けるということです。


■ながら仕事と場所の多様性 ↑カフェのある家
テレワークが増えると、通勤に使っていた行き帰りの時間を他のことにまわせるため、自由に使える時間が増えます。家族とのコミュニケーションの時間が増えるだけでなく、趣味に打ち込む時間を増やすことも、新しい趣味にチェレンジしてみることもできそうです。また、楽器の練習をしながら、読書しながら、裁縫をやりながら、家事をやりながら、庭をいじりながら、という「・・・しながら」とういう働き方もできるかもしれません。
天気の良い日には外のテラスにテーブルを出してパソコンに向かう、ゴロゴロしたい日には掘り炬燵ある和室で、調べものをしたい時は本棚のある書斎でと、その日の気分や状況によって仕事をする場所を選べる、そんな住まいも楽しそうです。


■ダイニングキッチン周りの充実 ↑ときどき電車の見える家
テレワークでは自宅での食事の回数が増えることになります。キッチン周りの収納の充実、動きに無駄のない調理動線、キッチンとダイニングの関係が重要になり、家族での家事の分担も進みます。今まで以上に気持ちのいいダイニングキッチン空間が求められてくると思います。


■育児・介護と仕事の両立の可能性 ↑5層なのに3階建ての家
テレワークが進むと自由に使える時間が増えて、育児や介護と仕事を両立できる可能性が広がります。子供の世話をしながら仕事ができる間取りや、親の介護が必要となった時に、同居できることを視野に入れたプランの要望も高まりそうです。当然、建築のプランや間取りだけで解決できることばかりではなく、精神的な不安や身体的な負担を誰かに強いることがあっては本末転倒になるため、家族や親戚を含めた十分な話し合いと相互理解のもとに、慎重に可能性を探っていく必要を感じます。


■住環境重視の土地選び ↑くるりのある家
今までの土地選びでは通勤の利便性が大きなファクターでした。都心にあるオフィスに毎日通うために、より都心部に近い住宅地に人気が集まり、駅から近いことが土地選びの重要項目でした。その反面、土地の広さや近隣の周辺環境については、我慢しがちでした。また、通勤は住まいの場所(住居系地域)と仕事の場所(商業・工業系地域)を分けるという、近代的な都市計画の前提である「職住分離」の考えにより生まれたものでもありました。

テレワークが広まっていくと、通勤の必要が無くなったり、回数が減ったり、時差通勤により座って通勤できたりするため、都心部にこだわる必要性が少なくなります。自由に使える時間も増えるため、海や山の近くに住宅をもうけ、ライフスタイルや趣味と仕事を両立させる暮らし方も夢ではなくなります。

テレワークによって通勤の重要度が低下していくことで、選択可能エリアが拡がり、ライフスタイル重視の土地探しに変わっていく可能性があります。少し大げさに言うと、郊外の分譲宅地と鉄道による都心への通勤という、20世紀型の「職住分離」から「職住融合・職住近接」へと変化し、将来的には都市計画の理論やまちづくりの考え方を変えることになるかも知れません。



■まとめ
 
↑スキップする家
テレワーク・在宅勤務は、単にパソコンの通信環境などを整えて在宅で仕事ができる場所を確保することではなく、私たちの暮らし方や家族の関係について再考することを私たちに求め、家づくりそのものにも大きな影響を与えます。
テレワーク(在宅勤務・在宅ワーク)には、テレビなどで盛んに宣伝されているような良い面ばかりではなく、当然ながらデメリットもあると思います。
これからどういう影響を私たちの社会や生活に及ぼすことになるのか、現時点で正確に予測することは困難です。しかしながら、土地の選び方や住宅の環境はもう一度見直されようとしています。自宅で過ごす時間が長くなり、住まいの快適性や重要性が再認識されようとしています。住まいには今まで以上に “心地よい空間“  ”多様性のある空間“ が求められるようになってくるのではないでしょうか。

 

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著者情報

石井 正博 + 近藤 民子石井 正博 + 近藤 民子

石井 正博 + 近藤 民子 いしいまさひろ こんどうたみこ

設計事務所アーキプレイス

「敷地とライフスタイルを活かした家づくり」をテーマに、暮らしやすさ(温熱環境・家事動線・収納計画など)、デザイン、コストのバランスのとれた質の高い家づくりを建て主の方と一緒にめざします。

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