住宅の外壁材の種類と特徴、メリット・デメリット @石井正博+近藤民子

今週の “リレーブログ” を担当します、設計事務所アーキプレイスの石井正博+近藤民子です。

私たちは男女ペアの視点を活かして、暮らし易さと(光と風、家事動線、収納など)とデザインのバランスのとれた心地よい住まいをめざし、「敷地とライフスタイルを活かした家づくり」をテーマとして設計活動をしています。

今回“リレーブログ”では、「住宅の外壁材の種類と特徴、メリット・デメリット」と題し、設計事務所アーキプレイス事例をご紹介しながら解説していきます。

家づくりを計画中の方で、外壁材を何にしようか悩まれている方も多いのではないでしょうか。
外壁材は住宅の外観の印象を左右するとともに、街並みにも影響を与えます。一番雨風に晒される部分でもあり、耐久性やメンテナンスのことも気になります。見た目も気に入ったもので、コスト的にも納得がいくものを採用したいところです。

住宅の代表的な外壁材の種類と特徴、メリット・デメリットについてご紹介していきますので、外壁材を検討する時に参考にしていただければ幸いです。


住宅の代表的な外壁材の種類

【1】窯業系サイディングの特徴とメリット・デメリット
【2】金属系サイディングの特徴とメリット・デメリット
【3】ガルバリウム鋼板の特徴とメリット・デメリット
【4】左官の特徴とメリット・デメリット
【5】板張りの特徴とメリット・デメリット
【6】タイルの特徴とメリット・デメリット
【7】まとめ 外装材の選び方など


【1】窯業系サイディングの特徴とメリット・デメリット
窯業系サイディングとは、セメントに繊維質を混ぜ板状に成形した外壁材です。サイディングボードとも言われ、色やデザインのバリエーションも豊富で、施工がしやすく費用もリーズナブルなこともあり、7割程度の住宅の外壁で使われています。



<メリット>
・デザインのバリエーションが豊富
・工期が短く施工性が良い
・価格帯が幅広い
・防火性が高い
・ヒビが入りにくい

<デメリット>
・本物感に欠ける
・将来壊れた時に同じものが手に入らない可能性がある
・目地部のシーリングのメンテナンスが必要

<使うときのポイント>
デザインのバリエーションが豊富で、高性能で高価格なものも増えてきています。一方で「板張り風」「タイル風」など本物感に欠けるものも多いので、安易な選択は避けたいものです。フラットで無地なものを工夫して使うことで、費用を抑えつつシンプルな外観を作ることもできる外壁材でもあります。シーリングを除くと、防水機能は表面の塗装の品質で決まり、表面塗装の劣化具合がメンテナンスの目安になります。

>>ミカンの木の育つ二世帯住宅
三角形の開口のあるユニークな形をそのまま表現するために、白く塗装された模様の入っていないフラットな窯業系サイディングを外壁に用い、黒い板塀と玄関ポーチの庇で引き締めています。窯業系サイディングのコーナーは、役物という既製品をつかうと水平ラインが途切れて野暮ったくなるので、メーカー仕様にのっとった、役物を使わない「留め」納めにしてすっきりした外観にしています。
>>住宅紹介動画 Houses_Movie02 ミカンの木が育つ二世帯住宅


【2】金属系サイディングの特徴とメリット・デメリット
金属系サイディングとは、金属板に断熱材を裏打ちした板状の外壁材のことです。 表面の金属板には、塗装したガルバリウム鋼板などが使用されています。とても軽量で施工しやすく、経年劣化も少なく、遮熱性もあることから近年人気が高くなっている外壁材で、街で見かけることが多くなりました。メンテナンス時期は、シーリングを除くと表面塗装の劣化具合が目安になります。



<メリット>

・とても軽い
・耐久性が高い
・止水性が高い
・破れたり欠けたりしない

<デメリット>
・釘などの先の尖ったものでの引っかくと傷がつく
・費用(イニシャルコスト)は窯業系サイディングよりも高い
・窯業系サイディングに比べて種類は少ない

<使うときのポイント>
縦や横にラインが入るデザインのものが多く、金属質な質感は好みの分かれる材料でもあります。どちらかというと四角くモダンな外観にあう素材なので、屋根や軒の出た和風の建物では他の外装材を検討すべきでしょう。

>>猫と暮らす中庭のある家
建て主の方のこだわりに色であったダークグリーンの縦ラインの金属系サイディングを外壁に用い、玄関周りと中庭の凹み部分の外壁は白い窯業系サイディングや板張りにしています。ダークグリーンの金属系サイディングは、数社から実物サンプルを取り寄せ、ダークグリーン色の具合や、溝の幅や深さによる見え方の違いを確認しながら、建て主の方と一緒に現場で最終決定しました。

>>細長変形地の二世帯コートハウス
3方向を囲まれた細長い敷地のため、あまり見えない外壁には白い塗装品の窯業系サイディングを使って費用を抑えつつ、道路側には横ラインが強調された新商品のシルバーの金属系サイディングを貼った事例です。光が当たると段差部分に影ができて、横ラインが浮き出てきて表情が変化します。通常サイズの製品だと、横ラインの途中に継ぎ目が生じてしまうため、セミオーダーの長さのものを使い建物幅いっぱいに継ぎ目なく張っています。
>>住宅紹介動画 Houses_Movie01 細長変形地の二世帯コートハウス


【3】ガルバリウム鋼板張りの特徴とメリット・デメリット
ガルバリウム鋼板とは、アルミニウム55%、亜鉛43.4%、シリコン1.6%から成る、アルミ亜鉛合金めっき鋼板で、耐久性に優れています。外壁材として成形された金属系サイディングと区別して、加工場で縦ハゼ葺きや平葺き用に加工したものを、現場で折り曲げながら張っていくものを、ここではガルバリウム鋼板張りとしています。住宅の外壁では、0.35〜0.4mmの厚さで、表面にポリエステルやフッ素樹脂などの塗装が施されたものが使われ、合板などの下地に吊り子などを用いて一枚ずつ張っていきます。



<メリット>

・耐久性が高い(塗装の種類によっても異なる)
・止水性が高い
・軽量でヒビなどの心配がない
・デザイン性が高い

<デメリット>
・一枚ずつ張っていくので施工に時間がかかる
・施工・加工に技術が必要
・釘などの先の尖ったものでの引っかくと傷がつく
・費用(イニシャルコスト)は高い

<使うときのポイント>
ガルバリウム鋼板は屋根材としても使われている材料なので、屋根のない四角い建物の仕上げに使っても、防水性、防汚性、耐水性、メンテナンス性の面で安心して使える材料です。一枚一枚現場で折り曲げながら細かな加工は現場合わせで張っていくため、職人さんの技術力と時間が必要ですが、出来上がったものには手作業の痕跡と独特の味が生まれます。

>>室内化したテラスをもつ家
この住宅は2つの長方体を組み合わせた形をしており、道路側の3階建はガルバリウム鋼板のダークグレーのボリュームで、奥の2階建は白い塗装の窯業系サイディングのボリュームで、2つの外装材を組み合わせた外観にしています。
ガルバリウム鋼板は一文字葺きという張り方で、見た目の印象が固くなりすぎず、見る角度や光によって柔らかみも感じることができる表情をもった壁面になっています。
>>住宅紹介動画 Houses_Movie05 室内化したテラスを持つ家

>>桜並木と暮らす家
この住宅の一番外側にある外壁はガルバリウム鋼板の縦ハゼ葺きです。色は空の色や光の当たり方で様々に表情が楽しめるシルバーを使い、サッシの色も外壁に合わせたシルバーを使うことですっきりした外観にして、有機的な形状の桜並木に対峙させています。ガルバリウム鋼板はハゼと言われるリブ状のラインが縦方向に通る縦ハゼ葺きで、縦方向の継ぎ目はなくして、一枚で張ってもらいました。
>>住宅紹介動画 Houses_Movie04 桜並木と暮らす家


【4】左官の特徴とメリット・デメリット
ここでいう左官壁は、モルタルで下地を作り、その上に仕上げ材を吹き付けたり、ローラーで塗ったり、コテで模様をつけながら塗ったものです。仕上げに使う材料の種類や厚み、仕上げ方など、種類は様々で価格帯にも幅があります。



<メリット>
・意匠性に優れる・継ぎ目がない
・質感が良く味わい深い仕上がりになる
・窯業系サイディングのように目地がなくシーリングの補修が不要

<デメリット>
・ひび割れが発生しやすい
・仕上がりに凹凸をつけた場合、汚れが溜まりやすい
・セメントが主成分のためモルタル壁自体の防水性は低い
・施工に時間がかる
・風通しが悪く日の当たらない場所ではカビが生える場合あり

<使うときのポイント>
左官壁は、意匠性に優れ、様々な仕上げ方があるため味わい深いデザインにすることができます。
窯業系サイディングや金属サイディングと比較して、職人の手によって施工するため、手作り感のある好みの風合いに仕上げることが可能です。
左官壁で最も注意したい点は、ひび割れが発生しやすいということです。モルタルの下地作り、仕上げ塗りの厚さ、仕上げ材の種類や弾性の程度のほか、構造体の変形度合いにも、ひび割れの入りやすさは影響されます。また、汚れがつきやすい材料でもあるので、屋根を出すとか、窓周りに雨だれの汚れが出ない工夫や、汚れが目立ちにくい色を選択するなど注意も必要です。

>>みんな集まる家
汚れが目立ちにくい色を使って、コテの風合いがでる左官仕上げとしています。構造は揺れの少ないSE構法で、外壁通気構法の下地には、揺れや変形にも追従して、ひびが入りにくい工夫がされたメッシュ入りのモルタル下地にしています。サッシは黒にして外壁に溶け込ませ、スチールの玄関扉は目立つように白くしています。

>>くるりのある家
左官の場合はサイディング張りのような継ぎ目のないすっきりとした壁面を作れることが大きな特徴ですが、この住宅では、建て主の方の希望された四角い形を「雑音」なく実現させるために左官の外壁を採用しました。
通気胴縁の上に揺れや変形にも追従して、ひびが入りにくいメッシュ入りのモルタル下地を作り、白いフラットな吹付け仕上げとしています。フラットルーフや手すり壁の笠木に溜まる汚れが、雨水とともに流れて白い壁を汚さないように、ガルバリウム鋼板の笠木の形状に工夫を加えています。

>>それぞれの時間を大切に犬猫と暮らすコートハウス
白色の外壁を維持するため、モルタルの左官下地の上には、光が当たると汚れが分解されて雨水とともに流される、光触媒機能をもった塗料を吹き付けています。


【5】板張りの特徴とメリット・デメリット
木材を製材して幅100〜200mm程度の板状に加工したものを、縦や横に張っていくものです。横板を重ねながら張っていく下見板張りや、小口に実加工を施したものを縦に張っていく張り方などがあり、ヒノキやスギ、レッドシダーなど加工しやすく水に強い木が使われます。多くは木材の保護塗料を塗って仕上げます。



<メリット>

・工業製品には出せない風合いの良さがある
・経年美化(素材の変化が楽しめる)
・加工が容易

<デメリット>
・メンテナンスがとても大事
・反ったり破れたり腐ったりすることがある

<使うときのポイント>
耐久性と色を保つには定期的なメンテナンスが必要な外装材です。年月とともに木部の色は徐々にシルバーグレー色に近づきます。弊所では、屋根があり雨がかかりを避けた、湿気もこもりにくい場所、足場をかけなくてもメンテナンスしやすい高さで使う方が、長い目で見るとよいと考えています。外壁に防火性が求められる地域でも使えるように、燃えにくい処理をした製品もでています。

>>木立に佇む家
木立に囲まれた環境に調和した住まいにするため、年月とともに変化していく、自然素材である木の板を外壁に張った事例です。樹種はこの地域の気候風土に対応し、節が少なく木目が通ったロシア産のカラマツ採用。実加工した厚さ15mmの板を縦に張り、ダークブラウンの浸透性の木材保護塗料を塗って仕上げています。茶庭を囲む板塀や扉、電気メーターなどを隠すBOXなども、同じ板を使って仕上げています。

>>独立した二世帯が集う家
窯業系サイディングと金属系サイディングの無機質な外壁材の中で、玄関ポーチ部分に自然素材である板張りを対比的に使った事例です。板にはあえて荒々しい木目の米杉材を使い、自然の木の色を生かした透明の保護塗料を塗っています。板は天然木に防火性能を加えたウィルウォール(チャネルオリジナル)です。庇の下にベンチを設けた玄関脇の小庭スペースは、3階にお住まいになる親世帯の方が、時々エレベーターで降りてきて、ご近所の方とゆっくり話ができる場所でもあります。
>>住宅紹介動画 Houses_Movie03 独立した二世帯が集う家


【6】タイル貼りの特徴とメリット・デメリット
タイル貼りとは、磁器質や陶器質のタイルを壁に接着剤などで貼ったものをいいます。施工方法は、モルタルやセメントペーストで張りつける湿式工法から、セメント系のボード下地にタイルを引っ掛けて固定したり、接着剤で貼る乾式工法に変わってきています。



<メリット>
・耐久性が非常に高い
・高級感
・耐候性に優れ美観が保ちやすい

<デメリット>
・重い
・適切な施工が必要
・初期費用が高い

<使うときのポイント>
タイル外壁は耐久性が高く、汚れなどに強いことから、メンテナンスフリーといわれることがあります。しかし、タイル外壁でもサッシ周りなどのシーリングのメンテナンスは10年に1度を目安に行う必要があります。
また、大きなタイルになると、重量も重くなるため施工にも慎重さが求められ、デザイン的には窓の位置とタイルの割付の調整など検討事項も多くなります。

>>東京タワーと桜の見える家
鉄筋コンクリートの外断熱工法の上に、専用のセメント板をアンカーでコンクリートに固定し、その上に300角のタイルを貼っています。大きなタイルを使い目地の通ったすっきりとした外観にするためには、タイルの割付と窓の大きさや位置を調整するだけでなく、プランニングや断面計画を含めて総合的に検討することが必要となります。この住まいでは、カラーガラスを使った2層にまたがる大窓をタイル割の中にはめ込み、外から見た時に、室内の間取りが想像できないようにしています。

>>太陽の光を感じる家

下の細割ボーダータイルは下地の専用の下地サイディングに接着剤貼り
上のタイルは専用の下地サイディングに引っ掛けて固定


【7】まとめ 外装材の選び方など
外壁材選びには、各人の好みが反映され、面積も大きいため35坪程度の住宅では150〜200万程度の費用がかかります。外壁材の種類を絞ることは費用を抑えることになりますが、2種類以上の材料を組み合わせて使われることも多いようです。
弊所でも、室内の延長として扱う壁は白くして、その他の外壁は違う色や素材にして空間のつながりを壁材の違いで表現したり、1、2階で外壁材を変えることで建物の構成を表現したりするなど、振り返ると2種類以上の外壁材を組み合わせた事例がほとんどでした。
外壁材選びは、単に外壁の色や素材を決めるだけではなく、建物の構成を表現したり、素材に意味をもたせたり、住宅のトータルなデザインの中で考えていくことが重要です。


建築家31会には、さまざまな知識と経験を備えた建築家(一級建築士)がいて、外壁選びやデザインについて一緒に考えてくれますので、必要な時はぜひご相談いただければ幸いです。

下に外壁材の、費用、耐久性、メンテナンス頻度をまとめた外壁比較表(あくまで目安)を載せておきます。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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著者情報

石井 正博 + 近藤 民子石井 正博 + 近藤 民子

石井 正博 + 近藤 民子 いしいまさひろ こんどうたみこ

設計事務所アーキプレイス

「敷地とライフスタイルを活かした家づくり」をテーマに、暮らしやすさ(温熱環境・家事動線・収納計画など)、デザイン、コストのバランスのとれた質の高い家づくりを建て主の方と一緒にめざします。

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