続・住まいの和室(畳のある部屋)の七変化! @石井正博+近藤民子

今週の “リレーブログ” を担当します、設計事務所アーキプレイスの石井正博+近藤民子です。

長い住文化の中で育まれてきた和室(畳の部屋)は、建具を開け閉めすることで用途や広さを変化させることができる”日本独特の空間”で、畳の心地良い素材感と相まって、その変幻自在性はこれからの住まいにも有効な部屋だと感じます。

今回のリレーブログでは前回に続き、和室(畳の部屋)の事例を場所ごとに紹介します。前回のブログと合わせてお読みいただけると嬉しいです。

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【4】客間としての和室(畳の部屋)

この住まいの和室は、ご夫婦がお二人とも地方のご出身で、ご両親が泊まりに来られることを考慮して、リビングからは距離を置いた位置で、かつ、お風呂や洗面やトイレに気兼ねなく行ける場所に設けています。
長期滞在されるご両親に、少しでも寛いでもらえるように畳と段差のない地板を使った床の間を設置。和紙を貼った吊り押入の下の地窓からは庭の緑も楽しめ、障子を通した柔らかい光に満たされた部屋です。エアコンは和室の雰囲気を壊さないよう、格子の中に入れて目立たないように設置しています。
>>猫と暮らす中庭のある家
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広島県の山間部の住まいの仏間です。お寺さんを呼んでの法事をメインに考えた約12畳の広さの和室で、北側には南に向けた仏壇が置かれ、その隣は床の間になっています。庭にある大きなしだれ桜を楽しめる季節には、大勢が集まり宴会スペースとしても使うため、外のデッキテラスと一体で使えるように、庭側の障子と木製サッシは壁の中に引き込めるようにしています。
>>しだれ桜と暮らすの家
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【5】炉のある茶室としての和室(畳の部屋)

建て主の方はお若い方ですが、長い間お茶を趣味とされていて、将来、教室も開ける水屋や茶庭のある、本格的な茶室をご要望でした。中柱と二重釣棚がある台目畳(だいめだだみ)の横に炉を切り、奥に水屋に繋がる茶道口(さどうぐち)を設けています。写真には写っていませんが、床の間の向い側に地窓を兼ねた躙り口、手前には貴人口があります。外には蹲(つくばい)や腰掛待合(こしかけまちあい)を配した、外路地と内路地の茶庭を整備しています。壁はダークブラウンに着色したシナ合板で、畳は濃紺の縁あり琉球畳(りゅうきゅうだたみ)、天井には畳に反射した光を受けて微かに光る小紋の入った唐紙を貼っています。
>>木立に佇む家
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【6】寝室としての和室(畳の部屋)

全体はモダンな住宅の中で、ご主人の寝室として使う部屋は畳を敷いた和室をしたいとのご要望でした。地窓からは緑の植わる壁で囲まれた坪庭が見え、床の間には旅の思い出の掛け軸を飾ります。左手前には布団を、右手前には仏壇をおさめた襖が見えています。玄関ホールに面した入り口は、引き込み戸だけでなく上部の欄間も壁の中に引き込めるので、欄間だけ開けておけば、自然の風を通しながら安心して休むこともできます。天井は突き板合板を正方形にカットして、木目が互い違いのなるように透かし目地を設けて貼っています。
>>風と光と暮らす家
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庭に面した和室でご夫婦の寝室として使います。大きな掃き出し窓のある縁側との間の障子を閉めれば、明るさの抑えられた落ち着いた部屋になります。手前には、坪庭に面した地窓があり、季節の良い時期には窓を開けて自然の風を通しながら休むこともできます。
>>庭と暮らす家

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畳スペースと板間に分かれた寝室です。窓の前は集成材のデスクを造付けた仕事スペースで、手前は鏡と照明のある化粧コーナー。フローリング部分(板間)には温水式の床暖房が入っていて、朝早い時間や夜中の仕事も、足元が暖かく苦になりません。二つの引き戸の向こうにはウォークインクローゼットと布団入れがあります。
>>囲んだテラスに開いた2階リビングの家
>>設計・工事経過ブログ 囲んだテラスに開いた2階リビングの家

 

狭いスペースを有効に使うために、小上がりの畳スペースを設けた寝室です。小上がりの下は造作でつくった床下収納で、普段使わない布団や物を入れておきます。天井は北側斜線をクリアするための傾斜天井で、高い天井側の壁面に造りつけたクローゼットの上部の高窓からも光や風を取り入れています。
>>高窓の家
>>設計・工事経過ブログ 高窓の家

 

この事例も小上がりの畳スペースを設けた寝室です。畳の下は一部、板間側から使う収納になっていて、腰掛けにもちょうど良い高さです。畳スペースの奥には洋服などを仕舞っておくウォークィンクローゼットがあり、板間の外には布団も干せるテラスを設けています。
>>猫と暮らす中庭のある家
>>設計・工事経過ブログ 猫と暮らす中庭のある家

【7】その他の和室(畳の部屋)

ロフトに設けた約6.8畳の広さの細長い和室です。天井は低いですが、窓の外には隣地の緑が楽しめる屋上テラスがあり、独特の落ち着きも感じられる静かなスペースで、全体に畳を敷くことで、ゴロンと寝転んで休んだり、来客時の宿泊スペースなど、多用途に利用できるようになりました。右側に引き違い襖戸の布団収納があり、正面にも目立たないように収納を設けています。
>>緑あふれるアトリエのある家
>>設計・工事経過ブログ 緑あふれるアトリエのある家

 



今までたくさんの旅館を訪れてこられた建て主の方は、その経験を元に、新居の中に旅館のテイストを取り入れることを望まれました。通常、水回りの床には水に強い材料を使いますが、ここの洗面脱衣室には畳を敷いています。畳は水に濡れても大丈夫なように開発され、洗うこともできるウォッシャブル畳で、素足で歩くと畳の感触があるものです。浴室にはバルコニーに面した窓の他に、洗面脱衣側にも大きな室内窓を設けています。
>>囲炉裏のある趣味満載の家
>>設計・工事経過ブログ 囲炉裏のある趣味満載の家

 

前回と今回のリレーブログでは、2回に分けて、リビング、客間、寝室、茶室、洗面室など、場所ごとの和室(畳の部屋)の事例をご紹介してきました。畳を敷いた和室には、フローリングやタイルを床に使った部屋と違い、そのまま座っても、ゴロンと寝転んでも、身体を柔らかく受け止めてくれる心地よさがあり、独特の見た目とテクスチャー、部屋の用途を限定しないということを含めて、日本人が長く親しんでき生活スタイルや好みのエッセンスが凝縮されているのではないでしょうか。
これからの家づくりやリノベーションを考えるときに、少しでも参考になりましたら幸いです。

設計事務所アーキプレイスでは、石井正博と近藤民子の男女ペアの視点を活かして、暮らし易さ(光と風、家事動線、収納など)、性能(安全性、断熱性、防犯性、耐久性など)、デザインバランスのとれた心地よい住まいをご提案しています。

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著者情報

石井 正博 + 近藤 民子石井 正博 + 近藤 民子

石井 正博 + 近藤 民子 いしいまさひろ こんどうたみこ

設計事務所アーキプレイス

「敷地とライフスタイルを活かした家づくり」をテーマに、暮らしやすさ(温熱環境・家事動線・収納計画など)、デザイン、コストのバランスのとれた質の高い家づくりを建て主の方と一緒にめざします。

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「江戸Styleの家」オープンハウスを11月30日(土)に開催します。2005年7月に竣工した自邸兼モデルハウスです。約19年が経過していますので、無垢の木などの自然素材が時間の経過とともに美しく変化(経年美化)している様子を確認することもできます。自然素材の小振りな住まい、あたたかく気持ちのよい和モダンな住まいの雰囲気をご自身の目と心で体感してください。 *「江戸Styleの家」はエコの取り組みでグッドデザイン賞を受賞しました。 *2021年12月「渡辺篤史の建物探訪」、「突撃!隣...