地震に備える(設計コンペの落選案に思うこと)@前田敦
本日2024年1月17日は、阪神淡路大震災から29年になります。
そして、今年は新年早々、能登半島を中心としたエリアで大地震がありました。
その都度思うことは、
住宅設計を中心に手掛けている建築士としてできることは小さなことだけど、
その手がけている住宅においては、「被災時でも安全に避難できる家」を大前提に設計を進めていくことを主眼に置く!
家自体が地震の揺れに対応できずに崩壊して事例、崖が崩落することで家が押しつぶされた事例・・・
悲惨な映像が見に入ってきます。
そんな時、昨年、体験した設計コンペのことが思い出されました。
設計コンペでの体験
昨年、実現には至らなかった住宅計画の話になります。
隣地が高さ3メートルの古い石積みの擁壁があり、しかも孕んでいるという状況でした。
そんな崖下に建築する場合には、安全のためにいろんな基準を満たさなければなりません。
いろいろ調べていると、数十メートル先には同時期に築造した擁壁が崩落したという事故もあったようです。
敷地に余裕があれば、離隔距離を確保すれば良いのですが、都市部ではなかなかそうはいきません。
建築基準法や条例では、上図のような条件を満たした高基礎を設けると建築は可能です。
とはいえ、建築基準法や条例は最低基準なので、孕んでいる既存擁壁や近くでの崩落事故の事実を勘案すると
より安全な対策が必要だと考えました。
当該敷地は道路が2m程度の階段状なので入れる重機が限られているという条件下で
構造設計者と打ち合わせをしながら、決めた方針は下記のとおりです。
1)土木的なスケールの新設擁壁や高基礎の築造は全面道路の条件が悪いために採用しない。
2)3mの高さの高基礎では、隣地の石積み擁壁が崩落した際に耐えられないので、1階・地下はRC造とする。
3)隣地石積み擁壁崩落時には、横に少しスライドして膨大な土圧に備える。
以上の方針を満たしたプランは、前面道路の悪条件も加わり、どうしてもコストアップしてしまいます。
懇意にしている工務店に相談して頑張ってもらっても、予算に収まりません
しかし、命の重さはプライスレスなので、ダメもとで安全性重視のプランでの提案をすることにしました。
営業的視点では、法規制を満足する高基礎案で予算内に納める提案が採用されやすいことは分かっています。
でも、建築主さんにコストはかかるけど安全性を重視した案も選択肢に加えてもらうための行動も
一級建築士としてのスタンスであると考えたからです。
結果は、案の定、他社の提案した高基礎案でした。
予想はしていたとはいえ、残念な結果になりました。
もちろん、高きそのプランでもある程度は安全性は確保できるのですが、
より高い安全性とコストのバランスをどこの設定するか? その視点が欠けていたことが敗因です。
お客様からは安全性を重視した提案についても感謝の言葉をいただいたことが嬉しかったです。
詳しくは覚えていませんが、昔、聞いた言葉で、
「時には建築家は建てないことを提案することも必要だ!」
そこまでは行かないまでも、この方針は間違っていなかったと思いました。
賛否両論あると思いますが、今回の能登エリアの被害状況を目すると
建築の安全性は最優先するテーマであることを改めて、認識させられました。
以下に、崖下の住宅を建築する際に注意すべき点を列挙します。
崖下に住宅を建築する際に注意すべき点
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