飛び級でリフォームを学ぶ_空間にアジャストする照明計画 @石川 利治

各部の仕上げが完成してゆくのと並行して天井の設備関係の取り付けが進みます。今回は照明関係に加えて映像関係のプロジェクター、スクリーン、サラウンドスピーカーなどが配置されます。音響的には床がタイルで壁面の多くはガラスであるため吸音面を天井で稼ぐことになり、工事の途中段階で吸音材を追加することになりました。


仕上げの割付や各部設備機器配置と系統を表した天井伏図

照明計画は器具の形はできるだけ見せない方向で進めることになりました。全体の照度確保はDLで行い、ダイニングテーブル上部など特に明るさが必要なところは天井面を掘り込み、製作したスリットボックス埋込み、ラインダクト+小型の首振りスポットライトを中に仕込みました。その他に壁や天井を照らし空間の明るさ感とグラデーションを生むための間接照明を各所に仕込みました。空間の見せ場である左官壁は超小型のアッパースポットライトで照らす計画としました。選定した照明器具の反射板はミラーコーンとして、眩しさはできるだけカットするグレアレスな空間を目指し、どちらかというと店舗の照明の感じに近づけました。お客様も最初は器具が光っていないようにお感じになり、少し戸惑っておられたようですが、店舗のような照明というご説明でご理解頂けたのではないかと思います。


お引き渡し後に追加照明の件で協議中

大変短い期間でしたが、最後の工事追い込みで何とか年末にお引き渡しを完了しました。後日、諸々の手直し工事の折に、左官壁を照らす照明を少し増やしたい旨のご相談をいただきました。左官壁は足元のアッパーライトで照らすと先程ご紹介しましたが、足元部分は照らしてくれるのですが、視線が多くあつまる目線の高さあたりまでは届かず、夜間は金属調の表情があまり感じられない状態でした。これを改善するためにどのような照明の当て方がベストかを現地で協議しました。


光の回り方や照射方向を実験中

左官の面を明るくするためには壁面の垂直方向に照射するのが良いのですが、今回の左官壁の凹凸などの表情はのっぺりとして消えてしまい、折角の職人技が感じられなくなってしまいます。ある程度の明るさを与えながら、できるだけ凹凸感が無くならないような角度を探り、概ね斜め20~30度くらいの角度から照射するのが落とし所という結論になりました。照射の焦点は天井から60センチあたりを狙うこととし、それが可能な首振りDLを探し、ご提案することになりました。


照射高さを決め高さを実測中

首振りが行える器具はユニバーサルDLというものになりますが、今回の室内でベースDLとして選定している器具と同じでした。当初はこちらの器具をおすすめしていたのですが、直径が小さめではありますが80ミリほどあり、壁の曲面に沿って配灯すると結構な数が並び、うるさい印象が残ることが懸念されました。また、今回は天井裏で吸音性能を上げるためにグラスウールを敷いていることから、断熱対応仕様の器具を選ぶ必要があり、なかなかベストな回答が得られませんでした。最終的には、超小型アッパースポットライトのトキスターから、こちらも超小型の首振り器具を見つけ、ご提案しました。こちらは直径40ミリにも関わらず首振りが35度まで可能という優れものでした。断熱対応ではなかったため、器具周辺に空間を持たせるために小型の植木鉢状のものを天井上でかぶせるような細工を施工者さんにお願いました。


超小型首振りスポットライト

後日、器具が実装された状態を拝見させて頂きました。器具はとても小型で天井と同化するくらい目立ちません。左官の金属調や手仕事感も上手く浮かび上がり、お客様もご満足頂けたようです。


照明器具を追加後の左官壁の照射状態

著者情報

石川 利治石川 利治

石川 利治 いしかわ としはる

3*D空間創考舎一級建築士事務所

お客様にとって「快適で上質な空間」をお話をしながら、 きめ細かく建築に盛り込みます。コミュニケーションを大切にし、 技術力と感性の統合を行い、最適なご提案を致します。

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この度、設計事務所アーキプレイスで設計監理しました『回遊動線のあるつくばの家』(木造2階建)が竣工間近となり、建て主様のご厚意によりオープンハウスを開催させていただくことになりました。 つくば市の新旧入り交じる住宅街に建つ、3人家族のための住宅です。 リモートワークが広まり家で過ごす時間が長くなる中、ご夫婦それぞれの仕事場でもある住まいには、より快適に暮らしていけるよう、ゴロンとできる和室、本棚のあるヌック、子供と遊べる南の庭などの場所をちりばめています。 オープンハウス(完成見学会)...