機能的で快適な水廻り 洗面/脱衣/洗濯室をつくるポイント @石井正博+近藤民子

今週の “リレーブログ” を担当します、設計事務所アーキプレイスの石井正博+近藤民子です。

私たちは男女ペアの視点を活かして、暮らし易さと(光と風、家事動線、収納など)とデザインのバランスのとれた心地よい住まいをめざし、「敷地とライフスタイルを活かした家づくり」をテーマとして設計活動をしています。

今回“リレーブログ”では、「機能的で快適な水廻り、洗面/脱衣/洗濯室をつくるポイント」と題し、浴室を含めて水廻りと言われる洗面/脱衣/洗濯室に求められる機能を整理し、快適な洗面/脱衣/洗濯室を作るためのポイントを、設計事務所アーキプレイスで工夫した事例をご紹介しながら解説していきます。

洗面/脱衣/洗濯室はリビングや個室に比べて小さなスペースであるにもかかわらず、家族が毎日何度も出入りし、様々な機能がぎゅっと詰まっており、住まいの快適性を左右する大切な場所です。家づくりやリノベーションの機会に、快適で使いやすい洗面/脱衣/洗濯室を考える参考にしていただければ幸いです。

 

■洗面/脱衣/洗濯室の使用目的を再考してみる
洗面/脱衣/洗濯室の使用目的を再考するには、洗面、脱衣、洗濯の3つの行動に分けて考えてみると、それぞれに求められる機能を整理しやすくなります。

(1)洗面
「手を洗う」「顔を洗う」「髪を洗う」「歯磨きする」「化粧する」「髭を剃る」「手や顔を拭く」「髪を乾かす」「身だしなみを整える」ためのスペースで、洗面器や鏡、ドライヤーや化粧品などの収納、歯ブラシなどの置き場、タオル掛けなどが必要になります。また、水を使うので湿気がこもらないための換気、気持ち良さのためには明るさが大切です。また、汚れにくく清潔に保ちやすい仕上げにすることの求められます。

(2)脱衣
「衣類を脱ぐ」「衣類を一時的に置く」「体を拭く」「衣類を着る」「収納する」ためのスペースで、脱いだものを入れておくカゴ、替えの下着などの収納、タオルや入浴剤などの備品、浴室の掃除用具の収納、バスタオル掛けなどが必要になります。衣服を脱ぐため、他の部屋との温度差を少なくするなどヒートショック対策も求められます。

(3)洗濯
「衣類の洗濯」「物干しの準備」「衣類の乾燥」のスペースで、洗剤の収納や洗濯物を運ぶカゴ、物干しのためのハンガーなどの置き場が必要になります。水を使うので換気も大切です。

 

では、事例を見ていきましょう。

■洗濯機のあるサンルームを併設した洗面脱衣室の事例

↑くるりのある家では、洗面と脱衣が一体の部屋で、洗濯は物干しのできるサンルームで行います。二つの部屋は引き戸で仕切ることもでき、洗濯物はサンルームに干したまま、天候を気にせず出かけることもできます。洗面では洗面ボウルは一つですが、長いカウンターにすることで、二人同時使用を可能にしています。スツールも置けるカウンターの下はあえて造り込まず、住みながら施主自らがカスタマイズできるようにしています。
>>くるりのある家

 

■洗面と脱衣/洗濯を配置の工夫によって分けた事例

↑緑あふれるアトリエのある家では、洗面スペースと、洗濯/脱衣スペースを、回遊動線に沿った配置の工夫によって分けています。二人で同時に使える広さの洗面カウンターにベッセル型の洗面器を載せ、その下には奥行きの深い収納を、その上には鏡付き収納を設け、カウンター前には幅いっぱいの窓を設けて、採光と通風を確保しています。洗濯/脱衣スペースには、リネン類や下着を入れる収納家具を設けています。回遊動線はキッチンと寝室につながっており、引き戸で閉じることもできますが、普段は換気のために引き戸を開けて生活します。
>>緑あふれるアトリエのある家

 

■洗面室と脱衣洗濯室を分け、プライベートとパブリックの使い分けができる事例

↑蕨市のコートハウスでは、洗面室と脱衣洗濯室を分けて、引き戸で出入りできるようになっています。洗面室の横には、引き戸で出入りするトイレもあります。引き戸の開閉と配置の工夫により、洗面と脱衣/洗濯を一室にしたり、別々にしたりでき、脱衣室の引き戸を閉めておけば、お客様には遠慮なく洗面とトイレを使ってもらうこともできます。
脱衣室で注意したいことの一つに、ヒートショックがあります。衣類を脱いでお風呂に入るときの急激な温度変化がもたらす身体への負荷により、目眩や心筋梗塞などで倒れることがないように、脱衣室はできるだけ暖かくでに他の部屋と温度差のない環境にすることが大切です。そのためには2室用の浴室暖房乾燥機を設置して脱衣室も浴室と一緒に温めたり、温風暖房機を脱衣室に設置するなどの方法がありますが、この住宅では脱衣室に温水式のタオルウォーマーを設けて、パイプを流れる温水の輻射熱によって、脱衣室を温められるようにしています。
>>蕨市のコートハウス

 

■浴室と洗面室をガラス仕切りで一体化させ、生活感のでる洗濯機を隠した事例

↑東京タワーと桜の見える家では、二人同時に使える2ボウルの洗面化粧台と鏡付き収納を造作で作り、前面の壁には浴室との一体感を高めるように建て主の好きな色のモザイクタイルを貼っています。洗濯機は洗面化粧台の反対面にあり、カーテンで簡易に隠せるようにしています。
床はシャワーの水が隙間から飛び散っても痛むことのないタイル仕上げです。洗面/脱衣/洗濯室は衣服を脱ぎ素足になるので、普通のタイルだと冷たく不快に感じてしまいますが、ここでは熱を通しにくく冬場でも冷やっとしないサーモタイルを使っています。
>>東京タワーと桜の見える家

 

■ホテルのパウダールームのような洗面スペースを設けた事例

↑それぞれの時間を大切に犬猫と暮らすコートハウスでは、浴室に併設した洗面/脱衣/洗濯室を設けた上で、それとは別の洗面スペースを中庭の見えるコーナーに設けています。どうしても生活感の出やすい洗面/脱衣/洗濯室を、引き戸で閉じられるように設けることで、奥様とお嬢様の使う洗面スペースはいつもキレイに保ちやすく、ホテルのパウダールームのような気持ちのよい場所になっています。
>>それぞれの時間を大切に犬猫と暮らすコートハウス

 

■洗面/脱衣/洗濯を一体にし、さらにトイレも中に設けた狭小住宅の事例

↑十字路に建つスキップハウスでは、洗面/脱衣/洗濯は一体の部屋で、さらに家族用のトイレも組み入れています。トイレとの仕切りはあえてカーテンにすることで、便器の前面に設けた下着やリネン類の収納家具を使いやすくし、2つの窓を開けた時の換気効率も高めています。また、衣類の仮干しができるように、室内物干しパイプを造作で天井に設置しています。(写真はありませんが、ご主人の使う洗面室はお客用トイレの中にあります。)
>>十字路に建つスキップハウス

 

■洗面、脱衣、洗濯を一体にし、浴室や物干しとの仕切りをガラスにした事例

↑太陽の光を感じる家では、洗面/脱衣/洗濯室は、浴室や物干しとも一体となった広々した空間です。幅の広い洗面化粧台には、長い一つ洗面器を置き二人同時に使えるように水栓を二つ設けています。水撥ねにより汚れやすい洗面器前の壁には、お気に入りのガラスモザイクタイルを貼っているので、気持ちよく身支度ができます。洗濯機置き場に隣接して物干しがあるので、重い洗濯物を持っての移動の必要がありません。窓サッシには断熱性能の高い樹脂サッシを使い、洗面/脱衣/洗濯室の床には温水式床暖房を入れて、冬の寒さ対策としています。
>>太陽の光を感じる家

 

■浴室と一体的なスペースの中に洗面、脱衣、洗濯をすっきり納めた事例

↑木立に佇む家では、洗面化粧台から続く長いカウンターの下にビルトイン洗濯機を納めることで、ガラスで仕切られた浴室や外の坪庭との一体的な空間にし、さらに間接照明によっても一体感を強めています。洗濯機の上のカウンターは脱衣棚や作業台になり、洗面器前の鏡付き収納は三面鏡にもなっています。天井には昇降機能のついた電動物干し金物を埋め込み、天気の悪い日には室内物干しもできるようになっています。
>>木立に佇む家

 

■快適な水廻り 洗面/脱衣/洗濯室のまとめ

洗面/脱衣/洗濯室には日常生活を支える機能が詰まっているため、ここが使いにくく快適でないとストレスが溜まってきます。他の部屋との関係、部屋の広さ、部屋の仕切り方、家事動線、収納、明るさや風通し、換気設備、照明計画、寒さ対策、仕上げ材の選定など、考えるべきことが山ほどあります。
事例でもご覧頂ただいたように、快適で使いやすい洗面/脱衣/洗濯室は、それぞれの家族で違ってきます。時に矛盾する要望や機能を、優先順位をつけて十人十色の建て主にぴったりなプランにまとめていくには、専門家の力が必要です。
建築家31会には、さまざまな知識と経験を備えた建築家(一級建築士)がいて、親身になって応えてくれますので、必要な時はぜひご相談ください。

 

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著者情報

石井 正博 + 近藤 民子石井 正博 + 近藤 民子

石井 正博 + 近藤 民子 いしいまさひろ こんどうたみこ

設計事務所アーキプレイス

「敷地とライフスタイルを活かした家づくり」をテーマに、暮らしやすさ(温熱環境・家事動線・収納計画など)、デザイン、コストのバランスのとれた質の高い家づくりを建て主の方と一緒にめざします。

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