住まい建設予定の土地でおすすめしたい地盤調査の立会い。


スクリューウェイト貫入試験の機器

SWS試験(スクリューウェイト貫入試験)について

建物建設で地盤がしっかりしているか否かは大変重要です。建物本体が、どんなに気に入った間取りや快適な空間であっても、建物を支える地盤に不安があっては安心が得られないからです。住まいの建設において、建てる土地の地盤の状態を知るために、必ず地盤調査が必要になります。

木造住宅では、最も一般的な地盤調査方法としてSWS試験(スクリューウェイト貫入試験)が行われています。SWS試験はスウェーデン発祥の技術であったことなどから、以前はスウェーデン式サウンディング試験と呼ばれていましたが、2020年のJIS改正から、試験名称がスクリューウェイト貫入試験へ変更になりました。手動式と機械式など違いがありますが、基本的には先端がスクリュー状になった鉄製のロッドを垂直に地盤へ沈め、その時にかかる負荷をデータとする、とてもシンプル明快な調査です。作業を横で見ているとロッドの沈み具合の様子で、地盤の硬さや柔らかさなどが、専門家でなくても何となく実感できる良い機会となります。

地盤が柔らかめだとロッドがすうっと沈んでいき、硬めになると沈みにくいことが良く分かります。一般的には建設予定建物の4隅と中央の5ヶ所(費用5万円前後)でデータを取りますので、土地のどこでも良いということでなく、ある程度設計が進み、建物の外形と配置の概ねが決まってから、その図面を元に5ヶ所の位置を決めることが多いです。


建設予定地の梅畑でスクリューウェイト貫入試験を行う様子。

地盤調査の立ち会いがおすすめです。

エイチ・ジー・サービス株式会社さん(本会協賛)に依頼し、相模原市緑区で設計を進めている新築住宅建設予定地でSWS試験を行いました。年明けに降った雪が残っていましたが運良くお天気に恵まれ、施主ご主人と一緒にSWS試験に立ち会うことが出来ました。梅畑である農地を知り合いから譲り受け購入。建物を建てるための宅地へ転用する予定の敷地です。今回は手動でなく自動で行う機械式の機器を用いた調査のため、その機器が調査場所まで搬入できることが必須で、それについては事前に分かっていたので円滑に進行。本件も計画中の住まい本体4隅と中央の5ヶ所を調べたのですが、場所によって既存の梅の木がぶつかる場所がありました。そのような場合は出来るだけ近い位置で調査機器を据え、計測して頂くことで対応しています。

登記簿や公図など、施主ご主人が知る限り建物が建っていた記録がない農地で、住まい建設としては不安のある土地でした。当初から柔らかな土の層が分厚いイメージで、建物を支える固い地盤が全く想像出来ませんでした。調査が進行し3か所目ぐらいから少し地盤の傾向が感じられ、調査担当の方が作業をしながら感じている印象をリアルタイムでお話して下さいました。地表から1mぐらいのところで硬い層が感じられるとのことです。それを聞いていた施主ご主人が、梅干を作るための梅畑として活用する前は、水田として米を作っていたことを聞いたことがる。水田だったので水があまり染み込まず深さ1mぐらいの所で水平に硬い層があってもおかしくない、という気付きに繋がりました。別の畑で同様に梅の木を育てている施主ご主人によると、梅の木はそれほど深く根を張らなくても水平に根を伸ばして育つようなので、合点がいくと話されました。

調査後、直ぐにエイチ・ジー・サービス株式会社さんによる地盤調査報告書を頂けます。本件は木造平屋建てで比較的地盤への負担が少ない建物であるということもあり、梅の木を抜根してほぐれてしまう深さ90センチほどの土壌に砕石を混ぜ転圧する程度の対応で、地下深く杭を設けるなどの地盤補強は全く必要無いことが分かりました。工事費全体の概算を住まい計画の途中で把握したい段階。地盤に対して多大な予算が必要か否かを知ることが出来ましたので、施主ご家族にとてもご安心頂けました。

そして何より、地盤の客観的データを得られたこと以上に、施主ご主人と一緒に地盤調査そのものへ立会えたことが、土地環境への理解を深め気付きに繋がりました。地盤調査の立会いでは、報告書の数字データで現れる以上の情報を、共有出来ることが多いです。住まいづくりをされる皆さまは、ぜひ地盤調査に立会うことを、おすすめしたいと思います。調査の担当者に確認し、安全に注意した上で可能であれば立会いましょう。また設計者(建築家)は一緒に同行して頂けるはずですから、相談してみましょう。 古川達也


相模原市緑区の新築住宅計画「屋外と屋内とその間がある平屋(仮称)」案の検討模型。年内竣工に向け設計中です。

古川達也
古川都市建築計画一級建築士事務所

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著者情報

古川 達也古川 達也

古川 達也 ふるかわ たつや

古川都市建築計画

住まいが安心で心地いい。そして住まいに感動がある。 そういう家づくりのお手伝いをしたいと思っています。

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