音楽室のある家をつくる-6@菰田真志+菰田晶

今週のリレーブログ担当の菰田(こもだ)建築設計事務所の菰田真志です。

昨日に引き続き音楽室に関して書こうと思います。
今日は使残響時間/体積・表面積についてです。
設備関係の話も最後に付け加えておきます。

残響時間とは音が響いている時間のことです。風呂で歌うと残響時間が長いので気持ちがよく歌えるといった経験は皆さんあると思いますが、部屋の大きさや用途によって程よい残響時間があります。もちろん演奏者の好みもあります。

今回の提案では、音楽室の体積が220m3程度でしたので最適とされる残響時間は0.8~1.2秒程度としました。実際に提案した時点での概算で0.8秒程度になっていました。

なぜ部屋の体積と表面積が重要になるのかと言うと、残響時間の計算式が下記のようになるからです。(簡単に表現します)

残響時間T=0.162x体積/(表面積x吸音率)

これを見て解るのは
※体積が大きくなると残響時間が長くなる
※吸音率の高い仕上材が多く貼っていると残響時間は短くなる。
二番目の吸音率の高い材料を使うと響かなくなるのは直感でも解りやすいですし調整もしやすいのですが、部屋の体積に関しては簡単に大きくできるものではありませんので、最初からある程度あたりを付けておく必要があるのが判るとおもいます。

次に設備関係の話。

遮音のところでも設備関係の穴=開口部として、遮音性能に影響が出るという話もしました。それ以外にも換気扇のファンの音やエアコンの唸る音などが気になることがあります。また、ピアノ室などで夏場のピアノの管理(除湿)のためにエアコンが必須というお話を聞くこともあります。

暖房に関しては空気の流れを考えた上で、収納内を吸音材で囲った上で床下エアコンを提案しました。これであればエアコンの動作音が気にならず、ホール全体を温めることができます。冷房に関しては、ホールの客席上の一番高いところで、低温で非常にゆっくりとした運転にするか、エアコンと輻射冷房を兼ねる機器の仕様を考えていました。どちらも最低限の運転にすることで動作音を減らすことが重要になります。冷暖房をすべて輻射で行うという案もありますが、設備投資が結構掛かるのと立ち上がりに時間がかかるので、常時使用するのであれば最適ですが、時々使うという場合には不向きな面もあります。その部屋の使用頻度と使い勝手を考えた提案をしてはエアコン使用が最適ではないかと考えていました。

換気扇に関しては専門のホールなどでは換気のダクトをグラスウールダクトにするなど対策をして給気換気しますが、個人ではコスト的になかなか難しい部分があります。直に外に抜くと音が直接漏れてしまい、ダクトにするとダクトが鳴ったりとなかなかに厄介です。どこかにチャンバー的なところを作ってそこから給気排気を行う等の計画が必要になります。今回の提案も収納内をチャンバーにする提案でした。

まとめ

今日までいろいろと遮音・音響と書いてきましたが、使う用途や音源、規模、頻度などでもいろいろなバリエーションがあります。
話のきっかけになった提案は、個人向けとしてはかなり本格的な提案をした計画です。今回書いたような検討が必ず必要とは言えませんが、基本的な検討内容を簡単にまとめた形になっています。

明日は最終回として、提案した計画案の紹介をしたいと思います。
・・・どなたかこの建物気に入っていただけたら、どこかに建てませんか?

よろしくおねがいいたします

(有)菰田建築設計事務所 菰田真志
http://www.archi-komo.co.jp/

著者情報

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菰田 真志 + 菰田 晶 こもだまさし こもだあき

有限会社 菰田建築設計事務所

毎日を心地よく機能的に暮らせる建物。 街に調和しながら趣のある建物。 思わずニンマリ微笑んでしまう建物。 わくわくする建物。 そんな建物を生活スタイルや価値観を伺いながらひとつひとつ創ってゆきます。

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