戸建リフォームの設計で考えたこと -周辺環境を再度読み込む- @岸井智子
今週のリレーブログを担当します、meenaxy designの岸井です。
今年5月に31会の展示相談会と合わせて行われたインスタライブで築26年の戸建住宅を改修した自宅+事務所についてご紹介させていただいたのですが、その時に話したことを改めてまとめてみたいと思います。
敷地は1990年代に宅地開発された住宅地の中にあります。よく見られる郊外の住宅地のように、同じような規模と仕様の建売住宅が数十戸立ち並んでいます。
住宅地の様子。一番手前が自邸。
私は10年ほどこの住宅街のすぐ近くに住んでいたのですが、高尾山へも気軽に散歩に行ける自然豊かな環境と、都心への適度な距離感が気に入っていたこともあり、このエリアで手頃な物件が見つかったら自宅兼事務所にリフォームしてみようと考えていました。
中古建物のリフォームは新築に比べ、既存建物を解体しないと分からない部分も多く、設計、施工とも実はかなり手間がかかります。それでも新築ではなくリフォームを選んだのは、予算的な部分ももちろんありますが、ゼロから新しいものを作ることより、今あるものに手を加えて(あるいは引き算をして)むしろどれだけ新しい空間を実現できるかということに興味があったからです。
今回のように既存が建売住宅の場合、どのような敷地でもある程度成立するように設計されているので、個々の細かい周辺環境は反映されず、実際の立地条件が存分に生かされていない建物である場合がほとんどです。
この住宅の場合は、既存1階に南側の庭に面したLDKがある典型的な間取りでしたが、南側は庭を挟んで隣家が迫っていることもあり、午後になると日当たりが弱くなることが気になりました。ただし前に住まわれていた方がたくさんの木や植栽を植えていたこともあり、すぐ前の道路や隣家の気配が適度に遮られ、落ち着いた緑豊かな環境となっています。
また既存2階は、これも典型的に3つの個室となっていました。しかし実際に上ってみると、2階のどの部屋も眺望と採光が非常によく、明るく「抜けた」場所で、細かく区切って個々の寝室としてのみ使うというのはもったいない環境でした。
そこで今回のリフォームでは、住宅の中心となるLDKを2階とし、落ち着いた1階を事務所スペースとする方針が決まりました。
改修後の2階住居部分。部屋を仕切っていた既存間仕切り壁を撤去し、ワンルームのLDKとしています。
改修後の1階事務所部分。緑に囲まれた落ち着いた空間です。
このように、戸建てリフォームにおいても、周辺環境を改めて読み込み、建物内のそれぞれの場所に適した空間がどのようなものかをフレッシュな視点で考えてみることは大きなポイントであるといえるでしょう。
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