コンクリートブロック塀の危険な使い方と正しい造り方

平成30年6月18日(月)に大阪府北部を震源として発生した地震により命を亡くされた皆様のご冥福をお祈りするとともに、被災されて避難をされている皆様の1日も早い復興をお祈りしております。

高槻市の小学校にあったコンクリートブロック塀が倒れ、倒れた塀の下敷きになって小学校4年生の9歳児童が死亡しました。このようなことが2度と起きないよう、皆が協力して安全な環境を整備して参ります。

宮城県沖地震の教訓(昭和53年)

これを遡ること40年前の昭和53年6月12日、宮城県仙台市の東方沖約100kmを震源とする地震が起こり、死者28名 負傷者1325人を出す災害となりました。建物が崩壊して被災された方が多く、特に死者28名のうち18名は、地震で倒れたコンクリートブロック塀の下敷きとなって亡くなりました。

これを受けて建築基準法は昭和56年に建築物の耐震基準が強化された改正が行われ、耐震の強弱を判断する技術的基準の境界線になり、これ以前の基準で建てられた建物を「旧耐震建物」、以降を「新耐震建物」と分類して呼ぶようになりました。さらにコンクリートブロック塀の取り扱いも改正され、コンクリートブロック塀の取り扱い基準が強化されました。

コンクリートブロック塀の整備基準

単独で自立する塀の基準は下の基準の通りです。(段差や崖となっている土を留めるものは全く違います)

(川西市ホームページより)

  1. 高さは2.2メートル以下とし、壁の厚さは15センチメートル(高さ2メートル以下の塀にあっては10センチメートル)以上とします。
  2. 縦筋は直径9ミリメートル以上のものを80センチメートル以下の間隔で入れます。この鉄筋は基礎のコンクリートを打ち込む前に建て並べておき、基礎のコンクリートに十分定着させなければなりません。
  3. 壁頂では、横筋にかぎがけして固定させます。
  4. 壁頂の横筋は直径13ミリメートル(塀の高さが1.2メートル以下の場合は、9ミリメートル)以上とします。
  5. 横筋は両端にかぎをつけ控壁位置の縦筋にかぎかけとします。
  6. 控壁は壁の長さ3.4メートル以内ごとに、塀の高さの5分の1以上突出したもの設け、9ミリメートル以上の鉄筋を入れて壁体とつなげます。(実際はもっと間隔を詰めた方が良い)なお、控壁や壁頂はコンクリートブロックを積むよりも、現場打ちコンクリートにした方がより堅固になります。
  7. 基礎の丈は、35センチメートル以上とし、根入れの深さは30センチメートル以上とします。
  8. 高さ1.2メートル以下の塀は、6、7の基準は準用されません。

しかし、コンクリートブロックは以下の理由により危険な状況にあったり、基準に従って設置されていなかったりして、改善取替撤去が必要な場合があります。私も気付いたら持ち主様に申し上げて、一刻も早い対処をお願いしています。

  • ブロック自体は安価で容易に入手できる材料で、広範囲に利用されている。
  • 工事作業自体は一見すると簡単なので、基礎を作らず、補強鉄筋などを正しく設けずに塀をブロックで作ってしまっている。たとえ鉄筋の間隔は守っていても、端部のカギかけをした引き抜け防止がなかったり、ブロックの空洞部分に充填するモルタルが確実でない場合がほとんどで安全に作られていない。
  • 土留めのブロック塀は土の重さや圧力に対して全く弱いもの。
  • ブロック塀の基準は足りないからもっと補強(控壁、鉄筋)があった方が良い。

というのが、私の見解です。

(横浜市ホームページより)

ではどうするか?命はお金には代えられません。尊い命を犠牲にしてやっと気付いて法制度や仕組み、作り方を変えていく方法は避けたいです。

危険かどうかの診断

今あるコンクリートブロック塀が安全かどうかは、ブロックの段数に注目してください。6段を超える塀であれば、基準に従った補強が必要です。もちろん6段以下でもブロックとブロックをつなぐ鉄筋が密に入っていないと、単に積み重ねた軽い石です。揺れたり押されたりすれば倒れて凶器になります。

もし5段以上の塀があったら、お近くの設計事務所に相談してください。設計事務所は利害に関係なく調査をして、構造的に工事内容を見て判断してくれるので、工務店さんや工事会社さんではなく設計事務所に診断してもらってください。

なお日本建築学会が今回の地震の被害を受けて、緊急に発行したチェック内容がありますので、該当する塀がある場合はすぐに設計事務所に対処方法を相談してください。

日本建築学会より

特に「あの大地震に耐えたから問題ない」という判断が間違った結果をもたらしますので、この発言をする方の意見は判断基準に絶対に入れないでください。

対処方法ー塀の場合

5段以上の塀で、基準に沿った補強がなされていない場合は、金属製の金網や木製の軽量な目隠しの塀に取り替えるのはいかがでしょうか?

所有者として、あなた個人だけでなく、共有者が居られる場合でも、危険なものの除去には反対はしないでしょう。コンクリートブロック塀の5段以上の部分だけでも直ぐに撤去するのはいかがでしょうか?

そのあとに塀を設ける意味を改めて見直して、目隠しなのか、風除けなのかを考慮して、軽量な材料で施すことをお勧めします。

対処方法2ー土留め擁壁の場合

コンクリートブロックが自立した塀でなく、土や崖の崩壊を止めている場合は、これはコンクリートブロック塀の基準ではありません。これも5段以上の場合は、コンクリート造の土留め擁壁に取り替えなくてはなりません。塀ではなく擁壁です。力の加わり方が全く違います。(4段以下の場合でも、構造的な補強ができていないと、盛り土と同じです)

北島俊嗣
北島建築設計事務所

 

著者情報

北島 俊嗣北島 俊嗣

北島 俊嗣 きたじま としつぐ

株式会社北島建築設計事務所

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