リフォームとリノベーションのちがい@中西ヒロツグ

今でこそ一般的になった「リノベーション」ですが、その意味をちゃんと理解して使っている人はどれだけいるでしょうか?最近は不動産広告でも「リノベーション済み」などと書かれているのをよく見かけますが、実態は内装や水廻りを更新しただけのリフォームがほとんどで、少しイメージが先行している感があります。

そもそもリフォームとリノベーションの違いは工事規模の大きさだけではなく、リフォームが当初の性能や機能の回復を目的としているのに対し、リノベーションは既存の建物に新しい価値を生み出すことを目的としています。そのためリノベーションでは、既存建物のポテンシャルを分析し、活かすアイデアが求められます。ただ古いものを利用するだけでなく、その魅力を高めて新たな価値を生み出すリノベーションだからこそ、建築家の能力が必要とされているのです。

このようなリノベーションでは、既存建物へのリスペクトが不可欠です。どのような建物でも、建築に携わった人々の努力が少なからず詰まっています。その思いを感じられなければ、建て替えたほうが良いでしょう。つまりリノベーションとは造り手たちの思いを継承し、彼らとコラボレーションする気持ちが求められます。

しかもリノベーションは、プランやデザインの変更にとどまりません。その最たる例が「コンバージョン(用途変更)」です。従来の使い方が時代に合わなくなったものを、その地域に求められる用途や性能に合わせてリノベーションする行為です。

土地にしがみついて用途を限定すれば、バージニア・リー・バートンの「ちいさいおうち」のように、劣悪な環境で我慢を強いられることになります。都市の変化や技術革新が激しい昨今、時代や環境に合わせて建築をカスタマイズするアイデアも求められています。

つまり「リノベーション」とは、「建物の価値を最大化する」ということです。ぜひ建築家のアイデアを活用し、建築のレガシーを受け継いでいただきたいと思います。

>>中西 ヒロツグ/イン・ハウス建築計画 建築家31会のページ
>>イン・ハウス建築計画のHP

著者情報

中西 ヒロツグ中西 ヒロツグ

中西 ヒロツグ なかにし ひろつぐ

イン・ハウス建築計画

「空間のリノベーション」をポリシーに設計活動を行なっています。改修に限らず新築においても、そこに暮らす人の思いと環境や街並みを読み解き、そのポテンシャルを最大限に引き出す空間づくりを目指します。

− 最新イベント情報 −

「江戸Styleの家」オープンハウスのお知らせ 2024 年11月30日(土) @小泉拓也+栗原守

「江戸Styleの家」オープンハウスを11月30日(土)に開催します。2005年7月に竣工した自邸兼モデルハウスです。約19年が経過していますので、無垢の木などの自然素材が時間の経過とともに美しく変化(経年美化)している様子を確認することもできます。自然素材の小振りな住まい、あたたかく気持ちのよい和モダンな住まいの雰囲気をご自身の目と心で体感してください。 *「江戸Styleの家」はエコの取り組みでグッドデザイン賞を受賞しました。 *2021年12月「渡辺篤史の建物探訪」、「突撃!隣...