世の中に無いものをつくる_オーダーメイドの世界5「モルタルソファ」@石川 利治
内装のオーダーメイドに関して綴って来た今週のリレーブログの最後は、沖縄プライベートヴィラ客室のモルタル細工です。ビーチから至近の本施設はどうしても浜の砂が室内も持ち込まれやすくなります。そのため、床は砂のはらいやすく、ある程度の水洗いにも耐えられるモルタル、タイルといった素材が選定されました。
室内にはソファ、ベットマットといったファブリック類が置かれますが、その台座となる部分を今回は床と同じくモルタルで作る事になりました。ソファは背もたれにあたる部分は床からモルタルの塊が隆起した様なデザインが採用されています。この部分の下地を当初はコンクリートブロックなどで想定していましたが、背もたれ部に斜めの角度がつくこともあり手間がかかるため他の素材で作る事が検討され、最終的には木下地にモルタル左官仕上げで進めることになりました。
木下地は例によって、造作家具を担当してくれた秋山木工さんの製作になります。工場でのモックアップでは仮にクッションをセットして座り心地を確認し、奥行きや高さ関係に微調整を加えました。座面のクッションが置かれる部分は、湿気によるカビの発生などを考慮してモルタルは塗らずに、木フレームの上の直接置かれる構成になっています。フレーム内は空気の出入りを促す様に通気孔が設けられていますが、躯体への取付け用の作業開口としても考慮されています。とても精巧な作りとなっており、モルタルが塗り込められてしまうのが勿体無い様な造作でした。
現場に運び込まれた木下地は大工さんによって取り付けられてゆきます。写真に写っている二人は、前回の化粧梁を手作りしてくださった大工さんで、この現場のあらゆる手間が掛かりそうな箇所を次々に作っていった手練れです(笑)。
木下地がセットされた後に、モルタルから1段下がったエリアに木調タイルが敷かれてゆきます。
先程の木下地にモルタル用の下地(ラスカット)が張られた状態です。
板の出隅部分の処理をした後、基準の糸を張ってモルタル左官が始まります。今回は厚さ30ミリの盛り付けなり、特に出隅部は丸められた形状に仕上げられ、柔らかな印象を生んでいます。
最後に床全体のモルタルの作業を行い、硬化後にトップコートを塗って完成しました。
室内の置き家具やアメニティの数々が散りばめられ、建築側の様々な作り込みと一体となって空間の雰囲気作りがなされました。多くの方の力が合わさって形になった空間です。
石川利治[3*D空間創考舎一級建築士事務所]
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