「窓辺 」@佐藤剛

家づくりを考える時、「友人を呼んでパーティをやりたい」「子供には伸び伸びと育って欲しい」「露天風呂に憧れる」等の要望は、その言葉を聞くだけで漠然とイメージが湧きます。これは、言い換えると生活シーンの1コマとも言えます。

私たち設計者は打合せの中で、皆さんが暮らすための空間を形づくるヒントを常に探しています。その中で、具体的な方法は分からないけれどこんな生活がしたいといった漠然とした要望の方が、理想の暮らしのかたちに近づく大事なヒントになる事が多々あります。時にはふと出た趣味の事だったり、昔の思い出話が家の大事な芯となる事もあります。もちろん、玄関は南向きが良い、キッチンは2700タイプが良い、ガス式床暖房が欲しいといった具体的な要望も生活を形づくる大事な要素です。ただ、それだけでは建主の引出しから生まれるイメージで終わってしまい、想像を超える快適性や感動を生むことは難しく
なります。私達が建主の代弁者として、建主に寄り添いながらもその一歩先の質を生むには、イメージを共有する事が大事であり、建主の引出しと設計者の引出し、両方をバランス良くブレンドして行く事が必要です。

打合せの最中、例えば「出窓が欲しい」という要望が出たとします。実はこれは手段の話であり、目的ではありません。その出窓によって何を得たいのかという目的がその先にあるはずです。目的とは、「隣地の桜を見たい」とか、「緑を感じながら本を読みたい」といった事です。
窓という言葉は床、天井等と同じく部位を表しますが、「窓辺」とうたえば部位ではなく空間を表す言葉に変わります。窓辺を想像すると、そこに生活シーンが生まれます。そこにベンチを設ければ家族が対話する場所となり、書架を設ければ静かに読書を楽しむ場となります。冬に燦々と温かく照らす光が欲しいのか、茶室のような静の空間にやわらかい満たす光が欲しいのか、窓一つ取ってみても掘り下げて考えて行くととても奥深いものです。

アメリカの建築家ルイス・カーンは、弟子達にウォーレンス・スティーヴンス
の詩をよく読んで聞かせたそうです。
「What a slice of sun do you have?
(どのような、ひとひらの日の光を、あなたは持っていますか。)」

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