「キッチン」を僕は好きだ。 @松永 基
「キッチン」を僕は好きだ。
キッチンに立つのも、キッチンを設計するのも、キッチンを見るのも、主婦(主夫)とキッチンの話をするのも、システムキッチンのショールームに行くのも、キッチン小物を見るのも、僕は好きだ。何度設計してもキッチンは難しい。僕は造作キッチンが好きだ。システムキッチンは使いやすく、便利で、綺麗だけど、工夫と、創意が感じられない(メーカーの人、失礼)。
造作キッチンを設計していて細かい工夫を凝らす。使い勝手はもちろん、ゴミの置場や、タオルを掛ける場所、家電製品置場、等々…。不特定多数をターゲットにしたシステムキッチンが選択であるのに対し、パーソナルユースの造作キッチンは創造である。無限の可能性を秘めている。キッチンを設計していて、壁にぶつかる時がある、「ウーン、もう少し、ここが広いといいなぁ…」物理と思想の争いである。
そんな時、僕は趣味のヨットのギャレー(小さな船のキッチンのこと)に立つ。大体、僕等が乗れるヨットは30ftから40ft(10mから15m)のものが多い、大きめのキャンピングカーの大きさである。当然、ギャレーも普通の住宅の1/4以下で狭い、しかし、そこには様々な工夫がされている。オ−ナーの手によるものや、シップビルダーの手によるもの多種多様である。ヨットは通常、ヒール(傾き)して走る、波を越えると結構揺れる。鍋がひっくり返る不安があるし、包丁が空を飛んで大怪我になるかもしれない。《コンロはジンバル(揺れに合わせて水平になる台)に乗っているし、カウンターはエッジが盛り上がっているから、ご安心を。》そして、狭い。ところがそのギャレーが僕は特に好きなのである。様々な工夫と創意に囲まれたギャレーが好きなのだ。 荒れている海で、ホールドライン(背中を支えるロープ)に体を預け両足を踏ん張ってカレーを作る。キャビンの小さな窓には厚いアクリルが入っている。ポート(左舷)からは荒れた海面ごし遠く島が見え、ヒールに合わせて見え隠れしている。そして、スターボート(右舷)からは沈みかけた陽光が射し込む。一足早く、ステンレスのカップにラムを注ぐ、僕の至福の時間だ。
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