リノベーションで実現した快適な住まい 地域の景観に溶け込み、自然と共生する 夫婦ふたりの終の住処
1階のLDK。南北に気持ちのいい風が通り抜ける。 [ⓒ photo by Tomohiro Sakashita]
35年前に4人家族のために新築した 家は木造 2階建て。1階に応接間とDK、和室が2室、2階に個室が2室という5DKの間取りだった。子供たちが巣だっていき、夫婦ふたりの生活になると、この間取りは使いづらい。老朽化も目立ってきたことから、夫婦の終の住処としてリノベーションをすることになった。
実は当初、建て替えるかリフォームするかについてはまだ迷いがあった。そこで掘りごたつから床下にもぐって基礎の状態を調べたところ、ひび割れなど致命的な損傷は見られなかった。かつての甲府城の愛宕山石切場に隣接する場所で、地盤はかなり頑丈なところ。エコの面でも解体することには積極的でなかった施主の意向を汲んで、既存の土台を生かしたリノベーションという選択をすることにした。
ベタ基礎を打ち直し、内部に補強壁をプラスして耐震壁とするなど、耐震性を強化。
設計にあたっては、老夫婦の終の住処とすること、将来のために1階だけでも生活が完結する間取りであること、バリアフリーにすることに配慮した。その結果、1階には廊下を設けず、広いLDKと水回りを配したひと続きのフロアに。2階は、廊下をあえて南側に配して空間的に部屋の一部に採り入れながら、広がりのある書斎と寝室を配置した。
長年住み慣れた場所だったので、風の向きや日差しの具合など自然の環境を知り尽くしていた施主は、自然の力を最大限活用することを希望。その経験は窓の位置や向き、開口の大きさなどに生かされている。さらに太陽熱温水器、太陽光発電、LED照明、雨水利用といった、エコに配慮した設備を積極的に導入した。
地域の景観に溶け込むように配慮された外観デザインにも注目したい。建物の北側が、愛宕山へ向けて石畳の歩道「古の道」に面していたため、木のルーバーをデザインとして採り入れた。この木のルーバーは風の流れを確保しつつ外からの視線を遮る機能としても有効な要素となっている。
[初出:31会マガジン Vol.1 2013 Autumn THE DOORS くらしを楽しむつくり方]
DATA
場所/山梨県甲府市
家族構成/夫婦
設計/滝川 淳+標 由理(コネクト 一級建築士事務所)
施工/株式会社 中村工務所(大石幹夫)
竣工/2011年6月
構造/木造2階建 敷地面積/206.41㎡
建築面積/86.61㎡ 延床面積/124.11㎡
1:アプローチを長くとり木のルーバーで和モダンの雰囲気に。2:光を透過するワーロン紙を建具に採用して明るさを確保した玄関。3:ウッドデッキが外とのつながりをスムーズにする。4:畳敷きの書斎は、廊下も部屋の一部に採り入れて。5:対面式キッチンは吊り棚を設けずすっきりと。6:空き地になった北側にも窓を設けて、緑の借景が楽しめるように。[ⓒ photo by Tomohiro Sakashita]
東京都中野区新井4-15-5-403
TEL 03-5942-7367
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