二世帯住宅の上下左右前後分離の間取り設計図の工夫

x家族が多い住まいの建替えやリフォームでは、

  • 間取りの考えが定まらない
  • 費用の区分方法がわからない

などのお悩みを抱えながら実現できないご意見をよく聞きます。

31会の建築家メンバーが設計させていただいた実例を見ながら解決のヒントを探してください。建築家本人も会場に居りますので、直接説明もさせていただけます。

多世帯家族の関係を吹抜けを設けて距離感を離した二世帯住宅「オウチノカタチ」(小林武)

群馬県高崎市の住宅です。計画地は関越自動車道脇に位置していても、緑地帯による緩衝空間により騒音はそれほど感じられません。それよりも緑地帯の桜が将来、借景となって季節を感じ春を楽しめることがが想定出来る敷地です。 その様な敷地に I ターンで群馬に移住する親子3代、2世帯6人の暮らしを考えた住宅です。 

お客様のご要望は、車は6台、家庭菜園もしたい、とのこと。 

都心から移住してきたので敷地は広く感じられます。 しかし、ご要望を全て考慮すると建物を建てるスペースが無くなる心配がありました。いくつかのプランと模型を作成しお客様と相談していると、総2階の間取りプランが良いことが分かってきました。 

週末は友達を呼んでパーティーをする事も多く、まだ小さな子供達が走り遊べる回遊動線も各フロアーに計画しています。 

そして、外観はアイコンにもなるような家型デザイン。 

多くの人に「家を書いてください」と言えば、この「切り妻」の形の家を書かれるのではないでしょうか。それほど、この外観形状は普遍的なものであると言えます。シンプルですが「家を」想像させて安心する形としてはこの上ない形状です。しかもローコストの条件にもピッタリ合います。 

総2階にする事により世帯別の各ゾーンがより接し合い、結びつきも強くなりました。しかし、結びつきが強くなると、2世帯住宅の心配な状況が生まれることを想像してしまいます。血縁である者同士は許容出来ても、やはり個の間合いは確立させたいものもあるのです。

そこで「吹き抜け」を挿入することで、相手の気配は感じられても、プライベートな感覚は残せるような機能にするように2階にリビングを配置して、それぞれは少し距離感を持たせるようにしました。つかず離れずの状況になってくれるには、いつもそうなるとは難しいことです。家族の形に決まりありません。建築家が考え提案した使い方を永続的にしてくれるとも限りません。敷地にたっぷり空地を残し、適度なラフ空間に仕立てる事により、あらゆるシーンに対応可能な住まいになるように考えた住宅です。 

中庭から光が差し込み視線は隠す二世帯住宅(清水禎士+清水梨保子)

周囲の建物からの視線をコントロールしやすく、かつ、光を取り入れやすい中庭を採用しました。 この中庭は上下階の視線を交錯させ、ゆるやかな関係をたもつ「ツカズハナレズ」の2世帯住宅とすることができました。

独立した二世帯が上下で集う家(石井正博+近藤民子)

玄関を共有した二世帯住宅で、各世帯がプライバシーを尊重しつつ、落ち着いて暮らせる住まいです。

ホームエレベータを設けて、家に長く居る親世帯を3階に、共働きで平日の昼間は家にいない子世帯は1、2階に計画されました。1年を通して陽当たりがよく視界が開けた南角に各世帯の LDKを配置しました。2階の子世帯のリビングには、アイランドキッチンとベンチを造りつけた大人数が集まれるダイニングスペースがあります。

各世帯はお互いのプライバシーを尊重しながら、物干しテラスの外部吹抜けを通してお互いの気配を感じることもできるほどよい距離感を作っています。

また、長くこの街に暮らしてこられたご両親が、3階に生活スペースが移っても、近隣の方と今まで通り交流がもてるように、玄関横のポ ーチには庭いじりのできる小庭を設け、ゆっくり話もできるようにベンチを造りつけています。

二世帯住宅の間取り上下左右位置の検討(北島俊嗣)

二世帯住宅のご希望を反映する間取りプランのまとめは、ご家族との話し合いで定まるのではなく、間取りプランを作成して、比較検討して、ご家族の皆様にとってどちらが合っているかを考えていただかなくてはなりません。

  • 位置は左右か、上下か
  • 玄関や水回り室は、共有か、部分共有か、完全分離か
  • 玄関の位置をどこにするか

などです。

二世帯住宅間取り左右案

二世帯住宅間取り上下案

家づくりの設計時には、仮定プランを作り、皆様に各間取りプランの良い点と悪い点を指摘して頂いて、皆さんの具体的な希望を絞っていきます。最終的に

  • 位置:上下に分離
  • 玄関:分離して各独立させる
  • 水廻り設備室:分離して独立させる

に、定まりました。

上記の方針になったのは、それぞれの世帯の生活習慣や生活のリズムが合わないので、一緒にすると多分お互いにストレスを感じると思われたので、影響させないための配慮や、将来の家族構成の変化に容易に対応できることを前提に考慮した結果でした。

和風二世帯住宅の親子世帯左右分離配置(北島俊嗣)

本会の展示相談会でお会いした 横浜の和風二世帯住宅は、ご相談の当初は、二世帯のうちの親世帯と子世帯の住まいの場所を

・上下にするか
・左右にするか

と言う検討でした。

皆様のご意見をまとめると、元の住まいが平屋だったので、出来るなら建て替える家も平屋が良いという意見で、上下配置プランよりも、敷地の広さやかたちからも、左右配置プランになりました。

次に、左右配置の間取りプランを左右を逆にした2通りの間取りプラン案を作り、親世帯、子世帯のご家族皆様に間取りプランの場合の生活動線を思い描いて頂き、良い点と不満な点を考えて頂きました。

 ▷関連解説記事 →「二世帯住宅の位置上下左右配置検討」
 ▷関連解説記事 →「二世帯住宅の水廻り設備共有?分離独立?」

2つの案を見て、お考え頂いた結果、道路側を子世帯、敷地奥側を親世帯の配置に定められました。そして子世帯は家族の人数から2階建て、親世帯は平屋とされ、中央に共通利用の玄関を配置して、左右に延びる二世帯住宅の間取りプランとなりました。

著者情報

北島 俊嗣北島 俊嗣

北島 俊嗣 きたじま としつぐ

株式会社北島建築設計事務所

お客様の貴重な財産である土地や建物を第一に守り、 より美しくデザイン性の高い豊かな建築環境を実現しています。

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