スロープの家(愛犬家住宅)誕生秘話@前田敦
■建築家として生きるために特化した能力を持ちたい!
建築家という職能が少しずつですが、世の中に認知されつつあります。
大きなビルや地域開発を手がける建築家もいれば、住宅を手がける建築家もいます。そして我が国では後者である住宅を中心に設計活動を行っている建築家が最も多いようです。
そんな状況下でちっぽけな存在ではあるけれど、何かに特化した建築家として情報発信していきたいと考え始めました。つまり、施主様に対しても選択してもらいやすい存在になることを意識し始めたわけです。
そこで着目したのがペット共生(共棲)住宅です。
子供の頃の愛読書が動物図鑑、今でも息抜きに出かけるのが上野動物園というほどの動物好きの私には向いているのではないかと考えたわけです。
しかし、15年前には「ペットと暮らす家」の設計のための資料も参考書もありませんでしたから、階段の模型を作り、そこをワンちゃんに登ってもらい寸法を導き出したり、獣医さんやブリーダーさんからお話を伺ったりしながら試行錯誤を繰り返しておりました。
■誌上コンペに応募
そんな時に建築家のことを記事にしているライターさんから、雑誌の企画で「ミニチュアダックスフントと暮らす家」という誌上コンペに応募してみないかとオファーをいただきました。
誌上コンペですから実現を前提としない設計提案になるので、自分なりの理想の案を発表しようと考えました。
ミニチュアダックスフントは一般的な住宅の階段では、ヘルニアを発症し、歩けなくなったりすることがあるので、スロープで家中を自由に回遊できる立体的なドッグランで家を構成するイメージを具現化した案が「スロープの家」です。
■スロープの家は書院造を立体的に展開
中庭を挟んだスキップフロアの二つのブロックをスロープで連絡し、階段のない2階建ての空間構成を持っています。
こうすることで、ヘルニアや転落を気にすることなく愛犬たちが自由に昇降できる快適な空間が創出できます。
家の中心には中庭が配置されているので、外部への飛び出しを心配することのない屋外環境を提供することができ、さらには無駄吠えを防ぐ効果も期待できます。
審査委員からは「部屋の周囲に廊下を配置する日本の伝統的である書院造を立体的に展開した興味深い構成」とコメントをいただきました。
なるほど書院造りとは・・・自分では気づかなかった着眼点に感謝です。
この書籍が出版されたあと、実現しないだろうと思っていた「スロープの家」を建ててください!と言うオファーが舞い込みました。
つづく
WEB紹介記事
・スロープの家・卍/Houzzツアー
・スロープの家・卍/fomifyドイツ
・スロープの家・SPAIRAL COURT/RENONAVI
・スロープの家・SPAIRAL COURT/fomify日本
・愛犬・愛猫と暮らす家/建築家紹介センター
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