住宅の開口部 『ガラス』 その2 @小林眞人

実は、ガラスの割れはそう珍しい事ではありません。

熱割れといって、一枚のガラスの中に極端な高温部と低温部が混在すると歪が生じますが

四周をサッシで拘束されているのでその歪みを逃す事ができずに割れるというものです。

例えばとても寒い日に室内も冷え切った状態で、一枚のガラスにものすごく強い西陽と庇の影の境が

歪やすいところに重なった あるいは 外が寒い中でガラスの近くにあるストーブの熱直接あたってしまっていた とか

 

普通のガラスでも熱割れの危険性がある訳ですから

網入りガラスについてはガラスと鉄線という膨張率の違うものが組み合わされているのでより一層の注意が必要です。

ガラスに目隠しのため、あるいは飾りのためにフィルムを貼るケースがありますが、

網入りガラスではこのフィルムを使用する場合、その種類によってはガラスを通り抜けるはずの日射熱を中空層

あるいはガラス内にためてしまい熱割れをひき起こす事がとても多いのですが、

プロでも以外にこの認識を持っていないのでよく問題になっています。

フィルムメーカーには熱割れの参考データが記載されていたり、具体的な場所・方位から

熱割れの危険性の有無を計算・検証をしてくれるサービスもありますので、

この点しっかりと事前に検討する必要があるでしょう。


↑   オフィスビルの足元に貼るフィルム選定の光景です

写真でわかる通り、網入りガラスのペアガラスですが

メーカーの熱割れ計算の検証済みのフィルムから選びます

 

二重サッシ

二重サッシはペアガラス・複層ガラスと混同される事がありますが

二重サッシはサッシそのものを2セット 内外二重に設ける事を言い、高速道路ぎわや音楽室を設ける場合など、

高い防音性やより高い断熱性を求められる場合などに採用されます。

また、リフォームで既存窓はそのままで、その内側に内窓専用サッシを設け、

断熱効果を高めるといった使い方もあります。

↑ 樹脂製の内窓を設けた二重サッシの事例です

 

 

合わせガラス

合わせガラスはガラス2枚を使いますが、ペアガラスとは違ってガラスの間の空間は

無く、ピッタリと樹脂の膜をはさみこんでいます。

効果としては防犯性・割れたときの飛散防止・防音・目隠しの4つが一般的で

はさみこむ樹脂膜の種類や厚みを変える事で、その目的効果を満たす様にします。

住宅でよくあるのは 防犯目的で玄関周りや1階部分に使用する場合と

音楽室など防音・遮音性を求められる時に使用する場合でしょう。

この合わせガラスをペアガラスに使用し、断熱や防火の機能を付加する事も多いと

思います。

 

 

 

Low-e ガラス

省エネが社会的テーマとなってからは『Low-e ガラス』のペアガラスの使用率が高くなりました。

ペアガラスは熱の伝導・対流を抑えてくれますが、Low-eガラスは片面(ペアガラスの中空側)に

特殊金属膜をコーティング処理をする事でさらに熱の放射を抑えるもので、より断熱性に優れています。

省エネ基準をクリアーするには、このLow-eガラスを採用した上で開口部の面積を抑えた計画にしないと

難しいというのが近年の実感です。

ガラスの進歩

ガラスは建物にとって無くてはならないものですが、技術の進歩とともに

さまざまな機能が付加され、今後も新しい製品がたえず出てくるものと思います。

それぞれの特長(場合によってはデメリット)を良く理解した上で

適材適所、使い分けをきちんとして行く必要があるでしょう。

今回の記事が少しでもその理解の入口としてお役にたてる事を願っています。

 

ガラスについては 加えるべき事項がまだまだ多くあり、今回語りきれておりませんので、

さらに説明が必要な事項がありましたら是非遠慮なくリクエストくださいませ。

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>>小林真人建築アトリエ

著者情報

小林 眞人小林 眞人

小林 眞人 こばやし まひと

株式会社 小林真人建築アトリエ

『バランス感』と『素材感』を大切にした建築を心がけています。 全体とディテール、都市との関係、実用と芸術・・・ シチュエーションに応じて取るべきバランス点を見極めたいという思いです。

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