見直しの住居学10 小さなエネルギーで暮らそう @栗原守+小泉拓也

昔の住まいに学ぶ設備に頼りすぎない暮らし方

住まいの設計に携わって以来、快適な環境のために過剰になりがちな機械設備を少しでも抑えることをいつも考えてきました。エアコン、床暖房、熱交換型換気扇、サーキュレーター、加湿機、除湿機、イオン空気清浄機。室内環境を調整する機械設備は様々にスタイルを変え、私たちの暮らしに入り込んでいます。

福島原子力発電所の事故では3年を経過した現在も不安な状況が続いています。原子力発電は一度事故を起こしてしまうと人間の力では簡単に制御できなくなり、暮らしや環境に甚大な影響を与えてしまいます。

これからの発電を原子力に依存しない社会を築くためにも、なるべく設備に頼らないで快適さを生む家づくりがいっそう求められているといえるでしょう。

ヒントは昔の暮らしの中にあります。私たちの祖先は自然環境に対抗することなく自然を愛でながら自然と共に暮らすことが上手でした。冬には綿入れを羽織って、囲炉裏や火鉢の回りに集まり、夏には打ち水をし、風鈴や浴衣で涼しさを演出していました。快適さに慣れ過ぎてしまった現代の私たちは、このような「寒ければ寒いなりに、暑ければ暑いなりに」という暮らし方はできないかも知れませんが、その考え方を取り入れた暮らしで、多少とも設備に頼らない快適さを生み出すことはできるはずです。

昔の暮らしの知恵を現代の暮らしに生かす方法は色々あります。換気を例にとると、地面に近い部分の地窓や建具上部の欄間、引き戸やがらり戸を通風に利用する、また床の小さな開口などによる通風は驚くほど効果的です。これらはみな、昔からの住まいに風を取り入れる手法です。こうした家づくりの知恵を現代の住まいづくりにできるだけ活かすことはとても大切なことのように思います。

私の設計でも床暖房は欠かせませんが、家のつくりや暮らしの知恵で設備の稼働時間を少なくして節電をしながら小さなエネルギーで暮らすことは可能です。昔の住まいに学びながら、機械設備に頼る比率を少なくしていくことは、福島原発の事故のあとますます大切なことになると思います。

下の写真は子供室にはいる扉のうえに欄間をつけています。ホイトコという金物を使うと、開け閉めの角度を自由に止められますので、通風の量を加減することができます。子供室や寝室などプライバシーを確保しながら家全体に風を通すことができます。rannma

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著者情報

栗原 守 + 小泉 拓也栗原 守 + 小泉 拓也

栗原 守 + 小泉 拓也 くりはらまもる こいずみたくや

一級建築士事務所 光設計

「呼吸する住まい」をテーマに自然素材と自然エネルギーを有効に利用するエコロジーな住まいを建築主さんと2人3脚で設計しています。

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この度、設計事務所アーキプレイスで設計監理しました『大きな窓の緑道沿いの家』(木造2階建、神奈川県相模原市)が竣工間近となり、建て主様のご厚意によりオープンハウスを開催させていただくことになりました。 南側の緑道に面した旗竿変形敷地に建つ木造2階建ては、お隣の母屋と呼応するデザイン(チューダー様式)で踏襲されています。2階リビングの緑道に大きく開いた木製窓と傾斜屋根の垂木現しの天井が特徴の住まいです。 日時    :2025年3月8日(土) 10:00~17:00 場所    :神...