古民家建替え既存建物を解体壊しても家族思い出を引き継ぐ設計デザイン
今週のこのコーナーを担当させていただく、田辺計画工房の田邉です。
私たちの仕事は、多くの方々に「快適な住まいつくり」をお手伝いする事ですので、このコーナーでも「作る事」について多く書かれています。
しかし、新しく「住まい」を建て替える場合、今迄家族と暮らしていた住まいを必ず「取り壊す」事が伴います。
日本の住まいは、昔から取り壊しては新たに作ることが前提なので、容易に壊せる木造であったりするのですが、でも取り壊す事は簡単な事ではありません。
「住まい」というのはただの建物ではなく、そこで繰り広げられた数多くの喜怒哀楽の時間であったり、思い出であったり、家族の雰囲気を映し出す象徴のようなものです。永年家族を守り、支えてきた住まいにはこどもの成長と共の暮らした数々の思いでなどでも一杯で、取り壊しと共にその姿は無くなります。
私も自宅を建て直すときに、古家を取り壊しましたが、壊されていく無惨な姿を目した時は、何とも切ない気持ちになった事が思い出され、写真を記念に撮りました。
今年の3月、やはり100年以上たった瓦屋根の古民家と、隣接して40年ほど前に建てられたた住まいを、理由あって新しく建て直すお手伝いをしました。
古民家の客間はよく手入れさたお庭に面しており、その「和室」は親族が集まる思いでの場所でした。
また40年程暮らした住まいには、使い続けた「ストーブ」がある大きなリビングがありましたので、新たに計画した住まいもこの思い出を壊さないように、もちろんお庭は全て残して同じ場所に和室をつくり、暖炉がある開放的な居間を住まいの中心に計画、施主の思い出を引き継げる建築としました。
民家に使われていた欄間や木材も、新たに製材して随所に使っています。
写真は建設前の状況と、新しく住まいが完成し、お引っ越しされたあと、まさに住まいを撮り壊している最中の風景です。
目の前で壊される「住まい」を見ていると、切ない気持ちになると言われていましたが、古い住まいの思いでを残した事で、新しい住まいでの生活を楽しんで頂いています。
新しく住まいを作るときは、壊される「住まい」の事も考えてみましょう。
そして、私たち設計者は、新しい住まいでは今まで以上に幸せで豊かな暮らしが出来るように、デザインしていかなくてはいけないのだと考えています。
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「江戸Styleの家」オープンハウスを11月30日(土)に開催します。2005年7月に竣工した自邸兼モデルハウスです。約19年が経過していますので、無垢の木などの自然素材が時間の経過とともに美しく変化(経年美化)している様子を確認することもできます。自然素材の小振りな住まい、あたたかく気持ちのよい和モダンな住まいの雰囲気をご自身の目と心で体感してください。 *「江戸Styleの家」はエコの取り組みでグッドデザイン賞を受賞しました。 *2021年12月「渡辺篤史の建物探訪」、「突撃!隣...